悪夢到来!!!  落下騒動3


コナン
「なんか凄い所に落ちちゃったね」
「そうだな。これは・・・地下室と言うには部屋が綺麗すぎるな。もしやここがカジノ場なのか?」
きっとパーティーの後か最中にでも紹介しようと思ったのだろう。
この部屋はどうやら休憩室のようだった。
カウンターの近くにワインの瓶が割れている事から小さなバーの様なものだったのだろう。
「ワインって消毒に使えるんだよね?」
無事なボトルを何本か拾い上げ近くでけが人の手当をしていた男性に手渡しに行った。


「はい。これ使える?」
「ああ。ありがとう」
と背後から突然突き出されたボトルに目を落としたその男は礼を述べると背後を振り返った。
そして双方固まる。

「・・・・」
「・・・・」

ゲ・・と言うのがコナンの正直な気分だろうか?
相手の目も驚いていた。

「お・・・お医者さん?」
『確かコナンくん・・』

指を差し合ってしまった。
「珍しい場所で会うね。日本語でなんて言ったかな・・Strange and romantic is the affinity that binds two persons in love.・・・面白いものだ」
縁は異なもの味なものってかーー
そのことわざは男女に使うもんだぞ・・
なんてくだらないつっこみはする気はないが確かにこの偶然はかなり凄い。
「お医者さんも呼ばれてたの?」
「ん。私の患者さんがね。私はただのつきそいだよ。その患者とはぐれてしまって探さなきゃいけないのだけどこの通り沢山の重傷者を無視していけるはずがなくここにとどまっているんだよ」
まあ医者にこれを見捨てて行けというのは探偵に暗号を解くなというのと同じことなのかもしれない。

「僕シンイチ兄ちゃん探しに行くからついでに探してきてあげようか?」
「うーん。お願いしたいところだけどいいよ。あらかた重症患者の手当は終わったからもう少ししたら自分でいけるから」
「そっか。じゃあ頑張ってね」
「そちらこそ。気を付けて」
「うん。ありがとう」
「ああ。コナン君ちょっと待ってくれるかな」
「はい?」
背を向けた瞬間突然呼び止められキョトンと振り返ったコナン。それにロバートが小さく笑い小さな紙切れをよこした。
「さっき出逢った美女から預かったものだよ。君か新一君に渡してくれって言われたのを今思い出したんだ」
「え?」
美女?
誰のことだ?
とりあえず紙をうけとり広げても大人の手のひら分ほどの大きさしかない紙片の中身に目を落とす。
「・・・・・」
(ナイトメアのことか)
「とても美人だったね」
「あー・・・そう・・かな?」
「そうだよ。あれを美人と言わなくて誰を美人と言うのかい?一度眼科へ行くことをお勧めするよ」
そこまで力んで言われるとコナンも笑うしかない。確かに美人かもしれない。美人かもしれないがぁぁ
どことなく肯定したくないのはあの性格のせいだろうか。

「あはは・・えっとあーこれありがとうございました。じゃあ」
「うん。またね」
「はあ」
もう会いたくないけどな。

手を振って和やかに別れた。
(うーん快斗がいなかったらまあまあ、まともな人だな〜)
以前あった時に見た熱い瞳を思い出しコナンは肩をすくめた。
紙をポケットにしまいこむ。

「行こうお祖父様」
しわしわの左手を小さな右手で握りしめるとコナンは年の割に背筋のピンとしている老人を見上げた。
「そうだな。モリス達が心配しているだろうしな」
「うん。」





ピエロ

ボールの後姿をひたすら追いかけていたピエロはふと気付いた時には開けた部屋へと出ていた。
多分野生の感だろうボールのよどみない歩みは合っていたのか間違っていたのか解らないがとりあえず今までの狭い通路よりマシな状況になった気がする。
『ボールさん。ここ電気通ってないんでしょうか?』
『さーな。気になるなら電源でも探してこい』
『嫌ですーー』
一人じゃ怖いじゃないですかーー!
ピエロの心の叫びが聞こえたのか聞こえてないのかボールはシレっと答えた。
『じゃあ知るか。それよりこう明かりになるもんねーのか?しまったなーうっかりジッポ忘れちまったんだよな』
『ああ。どうりでタバコ吸って無いはずですね。』
ヘビースモーカーのボールがタダでさえいつもと違う顔なのにそれを、差し引いても余分にクリーンな感じがしたのはそのせいかもしれない。
『い・・家だとパイプとか吸いますか?』
なんとはなしに恐る恐る尋ねてみた。
『は?パイプねーあのお上品な嗜好はいまいちわかんねーけどタバコ切れたときはそれだな』
『・・・そうですか。』
やっぱりお金持ちなんだなと改めて納得しピエロは少しだけ暗闇になれてきた目で辺りを見回した。
『広いホールですね』
『ん?ああ。そうだな。っとあれ?もしかしてあれ懐中電灯じゃねーか?』
目を細め遠くにある豪奢に飾り立てられた腰までの高さのテーブルを指さした。
立食パーティーの時に飲み物を置いたりできるようになっている小さなテーブルだろうか。
傍に当然のようにイスはなく、壁際にズラリと同じ形のテーブル達が並んでいた。
その丁度真ん中あたりにそいつはちょこんと置いてあったのだ。
まるでこんな事態を予想していたかのごとく。

『本当だ懐中電灯です。丁度よかったですね。』
ピエロが嬉しそうにそれに駆け寄った。
途中何かに蹴躓いて転びそうになったがなんとか転ぶのを免れボールに失笑をかったりというおまけ付きだったが。
『なんでこんな所に・・?』
ボールが小さくつぶやいたのとピエロが緑色の大きめな懐中電灯を手に取ったのはほぼ同時。
そして明かりを付けようとした瞬間その声が聞こえてきた。


「ピエロさんっっそれ付ける前に僕に貸して」


コナン

なんというか祖父と二人で延々歩いていたら開けた所にでた。
中は真っ暗闇でさっきまで上の階から振ってきた光になれていた二人の目は闇に飲み込まれた。
そこでボールとピエロの会話が聞こえてきたのだ。
(懐中電灯だって?)
なんだってこんな所に。一番最初にそんな考えが浮かぶ。
そしてそう言えば自分もそんな物を持っていたなと腕時計を探った。
チカリと明かりがついたがいつもより威力が弱かった。
(あ。しまった。こっちの充電し忘れた。)
眼鏡の方は使うだろうと思っていたので旅行前にしっかり充電してもらってきたが腕時計のほうはキレイさっぱり記憶の中から抜け落ちていた。
そしてピエロに声をかけたのだ。
「ピエロさんっっそれ付ける前に僕に貸して」

『え?コナン君?』
声の主に反応したようにピエロは振り返った。
すでに闇になれた目ではコナンの無事な姿が捉えられホッとした表情を見せた。
コナンも腕時計から現れる薄い柔らかな光のおかげでそんなピエロの顔を見ることができた。
「その懐中電灯だと、きっとすぐに電池切れちゃうから中の電池くれない?僕の腕時計に接続するから」
「そんな事できるの?」
「うん。やったことないけど多分。これ省エネらしいから電池一個で結構持つと思うんだよね」
確かに大きな懐中電灯というのはひどく電池をくう。
しかもいつからここに置いてあったか解らないのだ下手をすれば電池切れって事もありうる。
残り少ない電池ならばコナンの言うとおりに使ったほうが効率的かもと思うピエロは一度ボールに目を向けた。
日本語は分からないものの、コナンの無事と先代の無事、それにコナンの腕時計を見てなんとなくは事情を察したらしい敏感な彼は即座にピエロに頷いた。

「はい」
そのまま懐中電灯ごと渡す。
「ありがとー」
コナンは後から電池を抜き取り靴に仕込んであった小型のプラスドライバーを取りだしかちゃかちゃと腕時計をいじり始めた。
「凄いねーその時計、ライトにもなるんだ?」
「うん。こんな時に役立つよね。それよりピエロさん達は二人だけ?」
「そう。他の人たちにはまだ出逢ってないよ。コナン君達も?」
「他にも人はいたけどマリアさん達とは会わなかったんだ。今探してるところ」
「そっかーやっぱりはぐれちゃったか。でも二人とも無事でよかったよ」
「そうだね。結構けが人いたから心配してたんだ」
「まああんな上から落ちたら怪我するよね。そう言えば」
とピエロは言葉を区切りボールに向かって話だした
『ボールさんは怪我は?』
『んあ?ああ、ちょっと左腕ぐきっとやったくれーだな。折れちゃいねーよー単にひねっただけだろ』
『そうですか。マーシェリーさんはどうですか?』
『右足をくじいた程度で後は五体満足だな』
『なによりです。』
見るからに元気そうなマーシェリー氏。それにコナンは無傷のようだし本当になによりだ。

「出来たーーー!!!」
ジャジャンっと電池付きの腕時計を掲げあげたコナンはカチッとスイッチを押した。
パアっと明るい光が照らし出された。
『お。おもちゃみてーなくせして結構威力あんな。』
『そうですね。これなら安心です』
ボールとピエロは感心した声をあげその隣りでマーシェリー氏も「おお」と感嘆の声をあげた。

『んじゃまサクサク行きますかねー』








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まだまだ地下での騒動は続きます。
さてはて、またもや登場お医者さん。
お気に入りキャラなのかっっそこはまだ謎です。
長くてすみません本当に。まだまだお話は続きます。