悪夢到来!!!  無血の闘い方1



カイト


「なんかあちらから声がすると思いませんか?」
モリスが言った
残念ながらモリスの耳が尋常じゃないせいで他のだれも同意は示さなかったが、行き先のきまっていない今の状態なのでその小さな可能性を信じる事にした。
「じゃあそっちに向かおうか」
カバがまとめ役をかって述べた。
それに次々と人が頷く。

そして、モリスの言葉通り数分進んだその先にこれまた沢山の人がいた。
多分さっきの部屋の隣りの部屋に当たるのだろう。扉が通れないほど歪んでいた為遠回りをしてしまったが地理的に間違いないとモリス・・快斗は思った。
(じゃあコナンもこっちの部屋にいるのか?)
そう思い必至で探す。
だがあの少年がじっと助けを待っているわけがないのだ。自分たちを捜す為に行動していたとしてもまったくおかしくない。むしろその方がありえる。
どこかですれ違った可能性とかもあるよな。
自分にそう言い聞かせ快斗はそっと息をついた。
冷静に。冷静に・・・

それぞれ探していた人物に出会えて喜びの声をあげていたが、あいにく快斗やカバ達が探している人物は一人としていなかった。


『失礼。』
ポンポンとモリスのふくよかな肩がゆすられた。
『はい?』
『これを貴方にプレゼントフォーユウです』
どこかで聞いたような声が聞こえた。
男性の落ち着いた柔らかな声。耳障りが良いのだが何故か快斗の危険信号がチカチカと光った。
『え?』
差し出された紙をみて次に手の主をみる。
ロバートだった。
(変態医者・・)
目を見開き、今はモリスの格好をしているから変な目で見られることはないとホッとする。
そして紙をとりあえず受け取り訝しげに開いた。
「・・・・え?」
(コレハドウイウコトダ?)
快斗の頭はちょびっと混乱した。
そしてみあげたそこには不思議な瞳を覗かせたロバートが微笑んで立っていた。



コナン

「えーー。ここから出れないのーーー?」
「ううん。出れはするよ。元の道に戻ってずっと歩けば」
「でも上の階への道がないんでしょ?」
「それは・・・もしかすると瓦礫をなんとかすればあるかもしれない・・し・・・」
コナンの言葉にピエロは口ごもった。
なんとかってなんとか出来るようなものならピエロだって自慢の馬鹿力(注※飲酒時に爆発する)でなんとかする。だがしかし掘ったら上から瓦礫が更に崩れ落ちる可能性だってあり得るのだ、下手な事はできない。
ここの建物自体あまり電波はよくなく、さらに地下なもので携帯は使用不可能。
このままでは助けも呼べない。
運良く落下を免れた人でもいればいいのだが、あの大きさの爆発ではそれも期待できない。

「困ったなあ。お祖父様こんな時にも使える携帯とか持ってきてないの?」
「いや、持って来はしたのだが落下時にどこかへいってしまったみたいだ」
「そっかーそれじゃ仕方ないよね」
コナンに責められると思ったのか申し訳なさげな顔のマーシェリー氏にコナンは笑顔をみせた。

(あんまり地下で対決とかはしたくないんだけどな・・・)
このままで済むとは思わない。
仕掛けるなら今だろう。
もし今この4人を殺してしまえば落下時に瓦礫の下敷きになり事故死という手が使える。
もちろん偽KIDに罪をなすりつけるつもりならKIDのカードでも置いていけばバッチリだ。
兎に角敵が複数だと考えている今、状況は極めてこちらが不利。せめて快斗がいればいろいろと打開策はあるのだが、コナン一人ではなんともしがたい。
(あーあ。頼ってるよな俺・・)
前ならばどんな状況でも一人でやってしまおうと思っていたのに今では快斗がいれば快斗を使うプランを即座に考えてしまう。
協力といえば聞こえはいいが、快斗の方が負担が大きいのは間違いない。こんな時に自分の小さな体が悔しくなる。例え元に戻ったとしても快斗ほどの馬鹿力も運動能力もないけれど、それでも今よりはずっと快斗の負担を減らせる。
(ま、仕方ねーよな。今はちっこいんだしこれでなんとかしていくしか。)

どのみち上の階まではかなりの高さがある。
快斗ですら上れるか解らない。
コナンも持っている道具で上まで届けばなんとかなるのだがと手持ちの品を頭の中で一つ一つ思い浮かべていた。
(キック力増強シューズだろ。伸縮型サスペンダー。麻酔銃。追跡眼鏡。後はイヤリング型の電話機は使わないだろうと思って置いてきたしなー。)
快斗にもらった携帯も今は使えない。探偵団バッチを快斗が持っていれば連絡が取れたのにと唇をかむ。

「コナン君?怖い?」
「あ、ううん。違うよ。大丈夫」
考え込むコナンにピエロは心配そうに声をかけたがコナンは慌てて首をふる。
怖くはない。まだ希望を見失っていないから。
そう、まだナイトメアという使える人材がいるのだから。
連絡は取れないけどな←大問題


『みーつっけたーー』
『その声は』
それから数十分としないうちに彼らは出逢う。
なにせ一本道。
やってきたのは女性三人のみ。
メアリ、マリア姉妹とアリスちゃんである。
『お前ら無事だったんだな。』
『ああっっご無事でしたのね』
コナンの持つ腕時計のみで位置を把握しアリスは駆け寄ってきた。
だが彼女はとうぜんのように腕を広げて待っていた父の胸ではなくピエロへと一直線に向かった。
『ピエロちゃんっっ怪我はありませんの?瓦礫に埋もれたりしちゃいませんでしたか?』
『大丈夫だよ。アリスこそ無事そうでよかった。』
『ピエロちゃんのおかげですわ。よかった無事で・・・』
半泣きで抱きつかれたピエロは恨めしそうなボールの視線に肩をすくめながらアリスをなだめる。
『アリスーー俺の心配はないのかー?』
『あらボールの何を心配すればいいんですの?アリスの自慢のお父様はこんな事くらいで怪我を負ったりしませんわ』
ふふんと自慢気に胸をそらされるとボールも何も言えなくなってしまう。
『そうかそうか』
それならいいんだ。
嬉しそうに頷く。
もちろん腕をグキッとやったことなど言う気はさらさら無いだろう。

『とりあえずカバちゃんとシンイチ・・・じゃなかったえーっとそうそうっモリスが電気をなおしに行ったからもうすぐ明かりはつくと思うわ。問題は上に上がる方法よねぇ室内の電話はご丁寧にコード切られてたわ。』
マリアが暗闇に目を細めながらボール(らしき物体)に向かっていう。
『あなたも無事そうね。怪我は?』
メアリがコナンを見つめ聞くと隣りのマーシェリー氏が首を振って答えた。
『大丈夫のようだ。みたところかすり傷を負った程度ですんでいる。体が軽かったのがよかったのだろう』
『そうよかった。』
ほっと肩の力を抜くとメアリは背後に厳しい目を向けた。
『それで・・?あなた達はどこまでついてくる気?』
その声に入り口に立つ少年達に視線が注がれた。






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