悪夢到来!!!  無血の闘い方2



『いや・・探し人は見つかったからもういいよ。』
5人の青年は動き出した。

1人がコナンの持つ光りに向かって小さな石を投げつけた。
なんとか避けたもののその弾みで腕時計を落としてしまう。
「うわっ」
『コナンっっ』
落ちた弾みで電気が消えてしまい辺りは一瞬にして闇に包まれた。

『貴方には罪をつぐなってもらうよ』
暗闇の中声が響く。
『罪とは何のことだっ』
『しらばっくれんなっっ俺達の尊敬するあの方を殺した罪だっ』
『・・・・』
マーシェリー氏が首を傾げる気配を傍にいたコナンは感じていた。
「あの方って・・・まさかKIDの事?」
『きっど?まさか私があの人を殺したと?』
呟いたコナンの言葉に反応した祖父は驚きの声をあげた。

『俺達は聞いたんだ。あんたらが会合を開いていたのをな。その時に怪盗KIDの名はでた。』
『あんたらは言ってたよな。"まさか彼がKIDだったとは""彼を死に追いやったのは私たちだ"と』

『・・・それは』
確かに言ったが・・

『残り少ないその命で償えるとは思えないけどあの方を殺したあんたがノウノウと生きてるのが許せないんだよ俺達は。これはあの人の敵討ちだっ』
『君たちは何か勘違いをしていないだろうか?私は彼を殺してなどいない』
きっぱり言い切る。
だが相手は聞く耳など持ってはいなかった。
『あいつらもそんな事言ってた。』

『そうか言いたいことはちゃんと言えたかよかった。』
身に覚えの無いことに弁解の一つできぬまま死んでしまったのならあまりに哀れだ。
言ってダメだったのなら仕方あるまい。

『もう歳だからな。この命惜しくはない』
それだけ言うとコナンに覆い被さった
「お祖父様!!!?」

何をする気だ?
そのまま完全に体を覆い隠すようにされようやくわかった。
自分が盾になる気なのだ・・・・なんてこった守るはずの自分が守られているなんてっっ

『ぐっ』
何が起こったのか解らないがビクリと動いた祖父の反応と苦しげなうめき声で何となく察した。
そして動かした手にぬるっとした物が触れ・・・
「・・・・・」
あ・・・
血?
ひどく自分が狼狽えているのがわかった。
ガタガタ震えがくる。
思い出してしまうあの地獄絵を。
このままじゃダメだ―――――

「大丈夫だお前には指一本触れさせないから」
マーシェリーは絞り出したかのような声でコナンの額にかかった髪を優しく撫でた。

『お前達っこの子には手を出すなっこの子は関係ないっKIDの事も。マーシェリー家の事もっっっ』
それどころか血のつながりだってないのだ。
マーシェリーは胸の中で呟いた。

知っていた。多分手紙形爆弾の辺りから・・いやもしかするとコナンを目にしたその時から。
この子が本当の孫では無いことに。
この子は何故か自分を守ろうとしてくれていた。
一生懸命この小さな体で自分の為に奔走してくれた。
何の為かは知らない。
それでも自分の敵ではない事だけは確かだから気付かないフリをしていた。
ひとときの幸せな夢を見たくて。

こんな危ないことに巻き込ませたくなかった。
例え血は繋がらなくても・・
大切に思う気持ちは変わらないから。
ギュッと腕の中で震えるコナンを抱きしめる。
さっき斬りつけられた背中がヒリヒリ痛む。
何故ひとおもいにやらなかった?
まさか嬲るなのか?
そうならコナンは格好のエサだ。
自分が痛めつけられるより辛い。

『この子には・・・この子だけには手をださないでくれ』
逆効果だと解っていても。それでもひたすら懇願する。
『なるほど。人質が一番堪えるか。』
その言葉と同時に
『きゃっ何するんですのっっ』
アリスの声と
『何すんのよっっ』
マリアの声、
『うわわわっ何するんですかぁぁ』
ピエロの声がした


『・・・どうして私は外されたのかしら』
ボソリとメアリが呟いた声は幸い誰にも気付かれなかった。


『なんだ?何が起こってるんだ?アリスっ無事なのかっっ』
『やめろっその人達は関係ないだろうっ』
ボールの叫びとマーシェリー氏の悲痛の声が重なった。

そこまで聞き取りコナンは祖父の腕からようやく這い出した。
何があの人の敵討ち・・だ?
「てんめーら・・・いいかげんにしろよ」
コナンの唸りと同時に室内の電気は灯った。修理が今頃終わったのだろう。
ポワリと肩を怒りで強ばらせる少年を灯し出す。
さんなコナンに慌てて青年が一人持っていた銃を向けた。

それに動じた様子もなくコナンはそっと眼鏡を外した。
伏せた瞼がゆっくりと持ち上がり長いまつげの下から神秘的な蒼い瞳があらわれた。
嘘を見抜く強い眼差し。
犯罪者を脅かす真実の瞳。
胸に一物抱えている者はその視線にさらされただけでいたたまれなくなるだろう。
それを解っていてコナンはその瞳をただひたすら罪人にだけ向ける。

『復讐だか敵討ちだかしらねーけどな』

カチャリと眼鏡の弦を閉じ、胸ポケットに眼鏡を放り込んだ。
そのゆっくりとした動作に人々は息をつめた。
次になにが起こるのか固唾をのむ。

『今の状況をあんたらの尊敬するその人に胸張って報告できんのかっっ』

静かな空間に突然爆発しかたのような激しい恫喝が響いた。
逃げを許さない瞳に斬りつけるような強い言葉。
一瞬にして小学生から探偵へと表情を変えた少年に誰もが目を奪われた。
小さな体からみなぎる力は強く、何故だろうこの人なら大丈夫と思わせる何かを漂わせていた。
銃口を向けられているというのに一歩も引かず、にらみ返してくる蒼い瞳に犯人のほうが追いつめられている気分を味わう。
『家一つ爆破して』
ゆっくり一歩近寄る。
『無関係の人巻き込んで人質にして』
更に近寄る
『小さな子供に銃向けたこの姿を尊敬するその人に見せられるのか!!!』
銃口を向ける男との距離はもう2メートルとない。
この距離ならば例えどんなに下手な人でも確実に銃弾を当てる事が出来るだろう。
さらに一歩。
『復讐するなら銃向ける相手が違うだろ。今あんたがやってんのは―――――』
『やめろーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』
コナンの言葉をかき消すように叫ぶとチャキっと本格的に銃を構えた。
それに周りから小さく悲鳴がもれた。
息すらも出来ないほどの緊迫感。
銃を向けられていない周りの方が心臓に悪い。
なのに小さな子供は不敵に笑ってみせたのだ。

『撃つの?お兄さん下手そうだからなー心臓より頭狙ったほうが確実に人を殺せるよ?』
挑発にしかとれない言葉をはくコナンにたまりかねてボールが飛び出そうとした。
それをいつの間にかやってきたのだろうモリスがそっと止める。背後には一緒に電気の修理をしていたカバがハラハラとコナンを見つめている。
『放せっあのガキがどうなってもいいのかっ』
『これは彼の闘い方。誰も傷つけないように彼は闘ってる。だから私は彼の意志をくみ取り今はここで見ているのです。邪魔をするつもりなら私は体を張って止める覚悟ですよ』
『・・・』
人質を取られている今確かに下手な行動は避けたほうがいい。
・・だが何がそこまで彼を信じさせているのか目の前の人間はコナンの行動を無謀な行為とは受け止めていないらしい。闘いだと言った。彼なりの。誰も傷つけさせないための。
『お前達は一体・・』
なんなんだと続く言葉はモリスの視線がコナンのほうへ向いた事で口の中だけで転がされた。
(だってあいつはタダのガキだろ?探偵君にひっついてきたお荷物だろ?なにをそんなに期待してんだ?)
確かに今までの彼とは取り巻く空気が違うのはボールにはひしひしと感じている。
たかが子供と侮っていた自分の目が節穴だったと呆れるくらいにその変化をここにいる誰よりずっと感じているだろう。
修羅場をくぐり抜けてきた者が持つオーラ。
闘いに身を投じた者のオーラ。
迷いのない力強いオーラ。
とても6歳の子供が持ち得るものではない
なんなんだよ一体―――――

『ここ狙いなよ。人殺しさん』
とニッコリ微笑んで自分の頭を指さした。
何を考えているのか解らない突然の子供の行動にだれもが言葉を失った。
死にたがっているとしか思えない。
今までの挑発で頭に血が上った男は簡単に自分の理性のリミッターを取り外した。
すなわちブチキレタ・・のだ。

『screw you(くたばれ)っっっっ』






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