悪夢到来!!! 依頼者達1
そんなこんなでようやくたどりついたロンドン。
すでにコナンはぐったりしていた。
飛行機の中でいろいろとあったのだ。
その中でも大問題だったのはコナンの右となりに座っていた女性だった。
離陸する前から気分悪そうだなと時々様子を見ていたコナン。
これはやばいっっと気付いたのはすっかり空の上だった。
やめて欲しい・・。
快斗に症状を話し、やはり危険な状態だという結論に至り、ただ気分が悪いだけだという本人の言葉を無視してスチュワーデスを呼びつけた。
本人にそこまで自覚がないのか、まだ耐えきれる状態だったのかその30代前半くらいの女性はけなげにも大丈夫ですの言葉をくり返し、スチュワーデスにも笑顔をなんとか見せていた。
それに騙されたのかその場を去ろうとしたスチュワーデスをひっつかみ脅すように詰めかけたのは快斗だった。
「一応医者探してよ。そんで何もなければそれでいいじゃん。このまま何かあったらあんたの責任ってことになりかねないぜ?」
「そうそう。それにこのお兄ちゃんこう見えて、ちょっとだけこういうことに詳しいんだから信憑性は高いよ。」
コナンの後押しも一応聞いたのかスチュワーデスは困った顔を見せつつも上司に連絡に行った。
そして2分もたたないうちに機内に放送がはいる。
行動が早いなぁと二人が感心している間に運良く医者は見つかり一気に隣りの女性は注目をあびてしまった。だがそのころにはもうそんな事を気にしていられる状態ではなかったらしく元々青かった顔がさらに白くなり、唇をふるわせていた。
「よかったですね。隣りの少年が気付いて知らせてくれて」
診察を終えた金色の髪に緑の瞳の医者は言った。
その言葉に先ほど快斗に呼び止められたスチュワーデスが青い顔で頷いた。
やはり危険な状態だったらしい。
あのまま放っておいたら、飛行機が着陸するころには悪化か下手をすれば命を落としていたという医者の言葉に、当の本人まで青ざめていた。
「よく気付いたね坊や」
「えへへ」
誉められとりあえず照れた顔を見せるコナン。
「それに今時の日本の子供というのは医学の知識をこんなに持っているんだね。感心したよ」
口ではそんな事を言いつつもどことなく疑わしい目を向けるその医者にコナンと快斗はギクリと心臓を跳ねさせた。
ロンドン行きの飛行機なのだからロンドン生まれなのかもしれないその医者はまったく違和感を感じさせないなめらかな日本語で躊躇いがちに尋ねた。
「君たち本当に・・その高校生と小学生なのかね?」
「あったりまえだってー。」
「それ以外には見えないよね?」
「・・・・」
嘘は言っていない。
単にちょっぴり変わった高校生と小学生というだけで、未だに学生はやっているのだから。
「だがしかし・・・まさか此処まで医学を知ってるというのも・・」
特に二人が何をしたと言うわけではない。
ただ医者の言葉に的確な返事をしただけだ。
もちろんそれが説明する時間を短縮したため患者の為になったというのは本当のことだが。
「灰原いなくてよかったかもな」
「そうだね哀ちゃんいたらフォローのしようがなかったかも」
だが実際ここに灰原哀がいたら医者の手助けをしようとする軽率な二人をきっと止めただろう。
あなた達自分の立場分かっているのかしら?と。
「あーーー揺れない地面って素敵っ」
最初の数分飛行機に酔っていた快斗は首をコキコキならしながらベルトコンベアーから流れてくる荷物を眺めていた。
「船よりマシじゃねーの?」
「まあね。空は俺の領域だしぃ。しっかしあの騒ぎには参ったよなー。」
「全くだ。あの医者最後まで変な目で俺達の事みてたぜ。」
「いいじゃんねー。悪いことした訳じゃないんだし」
確かに自分たちでも怪しかったかなと思う。それでも目のまえで苦しんで居る人がいて、それを手助けする知識を持っているのに傍観するなんて出来なかった。
「ま、もう会わないだろうしいいんじゃねーの?それより荷物来た来たっ」
「おっ本当だ」
二人はすっかりそのことを思考からおいやるとベルトコンベアーで運ばれてきた大きな荷物をもって歩きだすのだった。
どう考えても1日や2日分の荷物ではない。
何日泊まるかは分からないため念のため一週間分持ってきてある。
一応冬休みの間中(最後の3日は約束の為残しておかねばならないが)は大丈夫だから時間にゆとりはある。
「あーロンドンだーーー」
お金の換金もすませ、すっかり気分はロンドンの快斗は荷物をしっかり手に持ちリュックも背中からおろして手で持った。
「ロンドンは窃盗多いからな。背中なんかに背負ってたらナイフで切られてサイフだけ盗まれるぞ」
まあお前なら大丈夫だろうけどな。そう付け加えつつコナンは笑って言った。
そういうコナンは慣れたもので、ウエストポーチだ。
もちろん絶対安全などと保障は出来ないものの、鞄のなかでは一番安心な種類だろう。
当然のことながらコナンごとテイクアウトされないように快斗は目を光らせていたが。
「さてと迎えが来てるかな?」
辺りを見回す。
「ところでコナンちゃんや。そろそろ聞かせてくれないかなあ?」
今まで着いたらなと延ばし延ばしにされていた今回の事情を問いかける。
「ん?ああ。そっか。依頼だよこっちに来たのは」
「探偵の?こっちまで工藤新一の名前って届いてるんだ」
「違う違う。父さんからの依頼。こっちに居るって言ったろ?」
慌てて首を振って体中で否定するコナン。
その言葉に快斗は眉を寄せた。
工藤新一の父といえばあの有名な推理作家工藤優作のことだろう。
彼ならば息子に頼らずとも自分で解決出来てしまうだけの探偵の才能を持っているはず。
「父さんが昔お世話になった人がこっちにいてな、それでその人たちから依頼されたらしいんだけど相変わらずあのバカ親父は締め切りに追われて手が貸せないって訳だ。まったく俺に尻拭いさせるなっての」
「へー。それで俺が新一役やれってか」
「そ。俺はこの姿だから出来ないって言ったらお前連れてこいってさ」
むちゃくちゃである。
だが結局依頼内容が偽キッドをとっつかまえる事と言った物であるため、コナンは引き受けた。
KIDの名を汚される事をいたく嫌う快斗のために。
「へーほー。」
依頼内容を聞いて何か言いたげな快斗にコナンはなんだよと上目遣いで見上げる。
「ぺっつにぃ」
快斗はそっぽを向いて何でもない風に装った。
なんだかんだ言ってコナンちゃんって俺の事愛しちゃってるのねぇなんて口に出したらもちろんあの強力な蹴りが飛んでくるだろう事は必至だったから。
『ちょっと失礼。あなたが工藤新一かしら?』
背後から肩を叩かれ快斗がゆっくりと振り返る。
声の質からして美人だなと見当を付けていた快斗は思った以上の美人におやと目を大きくした。
ようやく到着ロンドーン。
もちろん縁真はそんなリッチな所へ行った事ありません(笑)
当然全て想像ですのであしからず。
どこへ行っても騒ぎに巻き込まれる二人。
今回ももちろん飛行機内でタダですむはずがありませんでした。
彼らの先はまだまだ長いです。
どうぞのんびりおつき合いお願いします。
By縁真
2002.6.17