悪夢到来!!!  依頼者達2





快斗より顔半分くらい高い背とスラリと延びた足に小さな顔。ピンと延びた背筋と金の縁取りの眼鏡が会計士を彷彿させる。これで髪を頭の上にひっつめていたら美人会計士の出来上がりといったところだ。引き締まったウエストも大きな胸も、すべてが彼女の美を引き立てた。
明るいモスグリーンのスーツを着たその女性は柔らかい笑顔を浮かべ返答を待っていた。

『そうですが、あなたは?』

その問いに答えず目の前の20代前半くらいの美女は背後に顔を向け声高らかに叫んだ。
その拍子に腰まである長い金髪のフワフワの髪が快斗の目の前を横切る。

『メアリっ私の勝ちよっ』
『・・・また負けた。なんで姉さんったらこういう感だけ鋭いのかしら』

向こう側から唇を尖らせてやってきたのもやはり美女。
目の前の美女と違って金色の光輝く髪は肩までのストレートだった。
遠くから見ると顔の大きさのせいか小さく見えたが近くでみるとどうやら姉と同じくらいの身長らしい。
姉同様羨ましいほど整ったボディーにジーンズとTシャツにジャンパーというラフな格好の彼女は姉の前を突っ切り即座に快斗の前へと立つと上から下までジロジロと検分し始めた。
そしてようやく満足したのか一つうなづくと快斗の顔をしっかりと見つめる。


『初めましてMr.シンイチ。私はメアリ。みんなそう呼ぶからメアリでいいわ』
本名を教えたくないのか、特に必要ないと思っているのか愛称のみを述べ片手を差し出す。
残念ながら笑みは見られなかった。
『工藤新一ですMiss.メアリ』
そんな彼女の小さく白い手を握りしめ快斗も流ちょうな英語でかえした。
『メアリで結構よ。私もシンイチって呼ばせて貰うから』
素っ気ない口調のメアリに快斗は工藤新一を意識して妖艶に微笑む。
隣で見上げていたコナンがゲッと思うほどに。

『分かりましたメアリどうぞよろしく。』
もちろんその笑みは男女共に効果があり、目の前の美女達はもちろんのことその場にいたすべての人の目を奪った。
ただ微笑んだだけだと言うのに先ほどまでの笑みとは違い目が離せない。
綺麗な顔立ちなのは最初に見た瞬間から分かってはいたが、ここまで表情一つで変わるとは思わなかった二人は勝手に赤くなる頬に手をやるとなんとか快斗から目をそらした。

「・・・新一兄ちゃん」

そんな中一番近くにいながら全くその影響をうけなかった小さな少年はニッコリ微笑み快斗を見上げいかにも不服そうな声を出した。
俺はそんな顔しねーよっっ。
それに普通の笑顔に戻した快斗は内心苦笑しつつ、コナンの頭に手をやった。
自覚ねーもんなこいつ。

『この子は江戸川コナン。僕の遠縁にあたる子です。』
「はじめまして江戸川コナンです。」

日本語で挨拶をしてペコリと頭を下げる。
どうやら英語は使う気がないらしいコナンに快斗は人にそれと気付かれない程度に眉をひそめる。
ようするにめんどくさい通訳を自分に求めているのだこの子供は。

『可愛いっっコナン君ね。何歳?』

先にそれに反応したのは今まで黙って妹の自己紹介を見ていた姉の方だった。紹介されるまで全然気付いて居なかった小さな少年の存在を認めたとたん目を輝かせる。
しゃがみ込むとコナンをギュっと抱きしめた。
大きな胸に顔を埋めながら、困ったように快斗を見上げる。

(胸が胸がぁぁぁぁ気持ちいいかも・・・)
そんなコナンを呆れ半分ムッとする気持ち半分で快斗は見下ろすと通訳をする。

「何歳かってさ」
「六歳だよ」
両手で六を示すとようやくその女性は手を離し、まじまじと可愛い顔立ちの少年を見つめた。
『六歳なの。小さいわねぇ。荷物重いでしょ?持つわよ』
先ほどとは違う意味で頬を染めその女性はコナンと同じくらいある大きさの荷物を奪い軽々と肩に掛けた。
「・・・新一兄ちゃん何て言ってるの?」
とぼけた風のコナンに快斗は疲れた笑みを見せた。
めんどくせーーー。
コナンの耳に口を近づけ「ひそひそひそ」
適当な事を言ってやる。
「へーそうだったんだ」
それにコナンは口元に手をやり苦笑し、とりあえず今聞いて分かったふりをした。
「有り難うお姉ちゃん。えーっとさんきゅーべりぃまっち」
小首を傾げ慣れない様子の英語を使う小学一年生にまたもや興奮するその人はどう考えても子供好きなのだろう。
そんな今にも鼻血を吹きそうな姉の気配に見ていられないとばかりにとうとう妹が止めに入った。
『姉さん・・いい加減にしておかないとさすがに姉妹の縁切るわよ?』
『ああ、ごめんなさい。ちょっと別の世界に吹き飛んでいたわ』

ちょっと・・ね。

三人の呆れた目が分かったのかやだ恥ずかしいと頬に両手をそえるその女性はすぐにコホンと軽くせきをして取り繕うと右手を差し出した
『ごめんなさい自己紹介が遅れて。私はマリア。愛称だけでごめんなさいね。ただ私たちの間では本名を使わないようにしているの』
あからさまに怪しい事を言われ二人は無言になる。

本名使わないってどゆこっちゃ?
コナンちゃーんなんかあるでしょ絶対に。
そんな瞳を受けコナンも目だけで返す。
知らねーよ。俺だって聞いてねーもん。

『新一。あなたももちろんあだ名を使ってもいいのよ。でも貴方の場合長く滞在すると言うわけじゃないから特に必要ないかしら。』
『父はどんなあだ名を?』
なんとなく予想しつつ尋ねる快斗。
それに姉妹は声をそろえて答えた。


『『ナイトバロン』』


ええ・・ええ・・分かっていましたとも。どうせそんな事だと思ってたよ。
そんなコナンのやさぐれた空気を感じ快斗は頭を掻く。
ナイトバロンを堂々と名乗ってしまえる自分の父がちょっぴり嫌なのだろう。

うーん。あだ名作っておいた方がいいのかなぁ。
しゃがみこみコナンに耳打ちをする。
「どうする?」
「快斗に改名しとくか?呼ばれ慣れてていいんじゃねーの?」
「うっかりボロだしそうな自分が怖い」
「なるほど。別に本名でもいいけどな。」
「まいっかこれ以上別の名前つけるとめんどくさいしね。このまま新一でいくよ」
「おう」

『僕はこのままシンイチで通して下さい。』
『オッケー。ナイトバロンからどこまで聞いたかしら?』
マリアの問いに快斗はうっすらと笑むと困った顔をみせた。
『全く。KIDを捕まえろと言うことしか。』

しかもこれすらついさっき聞いたんだけどね。
そんな快斗の視線にコナンは素知らぬ顔でメアリとマリアの顔をみる。
姉妹と言うだけあって似通った顔立ちをしている。
化粧の効果か、顔の骨格といい、目の大きさ唇の形鼻筋どれをとっても酷似していると言うのにどこか違った雰囲気を見せている。
いや、もしかするとそう見せるようにしているのかもしれない。

性格はどうやら妹のほうが冷静な様子。ちょっと素っ気ない口調といい、
冷めた瞳といいどことなくあの少女を思い出させる。
此処に来る前診察してくれたあの茶色い髪の少女を。
姉の方はどちらかというとその・・おおらかと言うか抜けてるというか隙がありそうでいい感じだ。
もちろん抱きつかれた時の胸の柔らかさがコナンの中で好意をアップしていたのかもしれないが。

『そう、でも結局はそれが依頼なんだけどね。』
『とりあえず話は道すがら。いらっしゃい二人とも』

メアリの言葉に快斗はマリアに荷物を奪われ身軽になったコナンに目をやった。
何かあるの?と不思議そうに快斗を見上げるそんな彼に快斗は素晴らしい演技っぷりに喝采を送りたい気分だった。さすが女優の息子。

「行くよ」
「はぁぁい」

ここに日本語が分かる人がいたらもちろんこの子供は英語が全く分からないと思っただろう。
それほど見事にコナンはとぼけきった。


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はやばや更新を目指してます。
このたびはとりあえず新登場が二人。
メアリとマリア。姉妹です。
マリアがフワフワ髪の姉でメアリが妹。
私の中ではすでに顔かたちが出来上がってます。

まだまだオリキャラが登場しますー
どこまで着いてこれるかな〜(笑)

By縁真
2002.6.21