悪夢到来!!!  無血の闘い方6



『・・・・・・・・・』
え?




知っていた人たちはなんとも言えない顔をしたが、知らない人たちは実に間の抜けた顔をした。
無反応な起爆装置に青年達は何度もカチカチとやる。
それが哀れで哀れでコナンはいたたまれない気分に陥った。

「ご・・・ごめんなさい。」
思わず謝ってしまう。
「えーっと・・・電池もらっちゃった・・・」
えへへ。
さっき言えばよかったのだろうけどとても言える雰囲気ではなかったのだ。
そして床に落ちた腕時計を拾いそれに繋がった電池を見せた。
その行動で言葉が通じなくともきっと通じただろう。

『・・・・・は・・ははははは。こいつはいいや。』
ボールが笑いだした。
つられたピエロも。
それにマーシェリー氏もクックッと肩をゆらしだした。

『何?何が起こったの?ねえ爆弾はどうなったわけ?』
マリアは途方に暮れた声を出した。
『良く分からないけれど助かったみたいですわ』
『偶然の勝利・・・いえ本当に偶然なのかしら?』
アリスもメアリも誇らしそうにボールに肩を叩かれていて痛そうに顔をしかめるコナンを見た。

『・・・・・・・・・そんな』
そんなにぎやかな彼らとは違いカクリと膝をおった青年達にKIDはフワリと近づいた。

『すべてが勘違いから始まった事だとしても、全てがはめられた事だとしても、罪は罪です。あなた方は罪を償わなければいけません。』
わかりますか?
優しく問う。
まばらに頷くのを見てKIDはゆっくりと手を持ち上げた。そして頭上でパチリとならす。
その拍子に青年の手から懐中電灯は消え、KIDの手に抱きかかえられていた。

『忘れないで下さい。いつまでも。あなた方の信じる怪盗KIDは決して人を殺めない。それは人間として最低限のマナー。命に対する最大限の尊重。神であっても人を殺める権利はありません。私はそう思っています。』
じゃあさっきのは一体なんだったんだよ。という突っ込みが沸くがとりあえずコナンは黙っておく。

あそこでもしセディスを殺してしまったら・・きっとKIDはもう生きていけない。
快斗は生きていけない。
尊敬する父の敵が目の前にいたとしても・・・決して手を下して欲しくない。
快斗の精神が壊れるから。
そうでなくても・・・
傍にいて欲しい―――――そう思うから。
快斗の為ではない・・ただ、自分の我が儘の為に。

『どうか人の命を・・・大切にして下さい。もちろん自分の命も・・』

結局はこれが言いたかったのだろう。自害すんなっっと。
これもきっと自分のためではない。相手の為でもない。
ただ、ひたすらコナンの為に。
犯人を死なせて一番衝撃をうけ、一生心に残る傷としてしまうただ一人の大切な人の為に。

(ばーろー。回りくどいんだよテメーの言い方は。)
泣きそうなくらいに胸が熱かった。
きっとまだセディスに対する思いは残っているだろうに自分の事を気にかけてくれる快斗の心に。

(バーーーカ。バーーーカ。バーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ)
心の中で罵倒しておく。
悔しいから。
なんでこんな時まで格好良く決められちゃうんだろうかあいつは。
悔しい。


『えーどうやら勝負もついたようですし、そろそろ脱出をはかりませんか?』
タイミングをみはからってロイドが言った。
彼が持っていた医療道具でコナンもマーシェリー氏も助かったのだが一体彼はいつの間にやってきたのだろうか?
それは誰も知らなかった。
コナンを抱き留めた時に初めてその存在があるのを人々は知ったのだ。
KIDですら。
『脱出経路はご存じですか?』
『経路はありませんがもうそろそろ私の仲間が到着していると思いますので』
『仲間?』
『ええ。すでにご存じでしょうKID貴方は。私の正体を』
『・・・・』
ロイドはニッコリ微笑むと指さした。
その方向から一人の男がやってきた。
グレーのスーツのいかにもサラリーマン風の男だ。

『お待たせいたしました。他の方は全て非難完了です。メア様もお早くっ』
『はいはーい。』
陽気に頷くとロイドは立ち上がった。
『彼は貴方が?』
『ええ。』
コナンを顎で指すとKIDは当然のようにコナンを抱きかかえた。
他のヤローなんぞに大切なコナンを預けるはずがないのだ。

『まあ貴方でしたら一人くらい抱えても上れますね』
現れた男に案内されぽっかり頭上の空いた部屋まで戻ると上から縄ばしごがかけられていた。
「なるほど。」
コナンは呟いた。
「怪しい怪しいとは思っていたが・・あいつがナイトメアだったのか」
「そのようですね」
すっかり騙されたと二人で笑ってしまう。
「ッてことは何か?どっちが本物なんだろうな?」
「出来ればナイトメアが本物のほうが私の精神衛生上はありがたいですね」
「・・・・」
まあそうだろうな。
苦笑を見せるとKIDはコナンの背が痛まないようにしっかりと抱きかかえ縄梯子を手にした。
丁度前に登っていたのはボールでその前にはプロフェッサーセディスだった。
セディスは何を考えたのか突然に進みを止めた。

『おいっ止まるなっさっさと行け』
ボールが叫ぶとセディスは足で思い切りボールを踏みつけた。
『おわっっ何しやがる』
『このまま帰っても私の命の保証はありませんのでやはり何とかしないと、と思いまして』
『はぁ?』
何いってやがんだこいつとボールがセディスの足をひっつかみ引きずり落とそうとしたその時セディスの右手に構えた2本のナイフがピッと飛んだ。
ボールの顔すれすれに。
それは縄をキレイに切断した。
ブツッと嫌な音がする。
その瞬間KIDはフワリと後へ飛んだ。
そのまま縄に捕まっていたら落ちて行くボールの巻き添えを食っていただろう。
空に浮いたままトランプ銃を撮りだしポンっとカードでセディスの左手を打ち据えた。
右手は新たにナイフを持っていた為片手で体を支えていたセディスは見事にバランスを崩し下へと落下した。
下で待ちかまえていたボール(見事な受け身で怪我はない)は受け身をとろうとしたセディスを思い切り殴りつけ地面へと叩きつけた。
素晴らしいパンチだった。

『こっっのやろーーーーーーー最後の最後まで往生際のわりぃーーーー!!!』
気持ちは分かるのでKIDも止めない。
これだけの長い縄梯子はなかなか無いと思う。
もちろん緊急で急ごしらえてもKIDは全然構わないのだが、女性陣はちゃんとした梯子でなければ上れまい(女性陣3人が全員残っているのはスカートの為後に回してもらったから)

先に登ったカバとピエロとマーシェリー氏、それにロイドが叫んだ
『大丈夫ですかーーーーーー?』
『ああ、なんとかなっ』
セディスは全然大丈夫じゃないだろうが。
『とにかく新たな縄梯子を用意するまで待っててくださーーーい』
ロイドが叫ぶ
『どんくらいかかる?』
『そうですねー20分もお待たせしないと思いますよ』
『解った。』
その言葉にセディスが青ざめた。

『や・・やばい。時限装置のほうが入ってしまっている』
胸ポケットから何かを取りだしたと思ったらそんな事を呟いた。
『時限装置・・・というとまさか』
KIDは嫌な予感を覚えた。
当然コナンもボールも。

『うそだろーーーーーーーーーーーーー』


『ってどういうことかしら?』
『さっきコナン君のお陰で助かったその爆弾のタイマーがかかってしまったみたいね』
マリアの問いに妹は冷静に答えた
『というと後どのくらいかでここはバンっっですの?』
『いやーー嘘でしょーーーーーーちょっとそこのおじいちゃんっ(セディスの事らしい)どういうことよーーー』
『マリアお姉さま叫んでもどうにもなりませんわ。』
『そうね。無駄に体力を消耗するだけね』
『なんで二人ともそんなに冷静なのよーーーおかしいわよアンタたちーーーー』
『だってお父様がついてるもの』
『コナン君もいるし。』
『・・・・』
二人のその自信の根拠が良く分からないマリアはシクシクと一人悲しく頭を抱えた。






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なんだかこの中で一番常識持っているのがマリアのような気がしてきました。
マリアさん。双子のお姉さんで金髪の美人です。
とにかく元気で子供のアリスと一緒にボーイズに萌え萌え。
なのに白衣の天使さん。
こんな看護婦さんで大丈夫なのだろうか?