悪夢到来!!!  無血の闘い方8


地上へ出るとセディスはロイドの手先(らしき存在)にわっと押さえつけられた。
『まあ命だけは保証してあげますよ』
安心しろというのだろうか片目をつむってそういうロイドにセディスは「はぁ」と頷く。

KIDはそっとコナンをカバに預けるとその場から去ろうと背を向けた。
その時
『おっと』
ナイフがKIDの心臓めがけて飛んできた。
気配を感じ横に飛ぶとそこに第2打が飛んでくる。同時に誰かの悲鳴も聞こえた。
『ボールっ』
『てめーらは黙ってろっ』
第2打でバランスを崩したKIDにとどめの3打を打とうとしたときボールはマリアにしがみつかれた。。
『ボールっダメよ。』
『邪魔するなマリア』
『ダメっっ離さないわよ。』
『そうですわマリアお姉さまぜっっっっったいにボールを離しちゃいけませんわっ』
頭に血が上ったボールにはじき飛ばされそうになったマリアはそんなアリスの応援にやる気を俄然取り返す。
更には娘にまで敵対されボールはようやく頭が冷えてきたらしい。
『アリス。お前まで何で・・』
『あの人は私たちを助けてくれた』
『そうよメアリの言うとおりよボールっ恩には恩を返すのが礼儀でしょっ』
『恩を仇で返すのはマナー違反ですよボールさん』
ピエロもようやくボールの手の平からナイフを奪いに駆け寄った。
『それに。彼が怪我をしたらコナン君が悲しむだろう』
腕の中で眉を寄せボールを見つめるコナンに語りかけるようにカバが言う。

『何だよお前らよってたかって集中攻撃かよ。俺は正当な理由で・・』
『正当なら、不意打ちなんて卑怯なマネは止めて下さい』
ピシッとピエロが言い切った。
さすがにボールも反論できなかったらしいそっぽを向きぶすくれた。

『失礼しました。ですが僕たちは貴方を認めたわけではありません。』
『そうよ偽者は偽者なんだからねっいくら似てても偽者よ貴方は』
『どんな理由で人の名を語っているのかは知らないけど・・あの人の名を汚したその時には私たちは全力で貴方を排除します』
『それだけは覚えて置いて下さい。』
ボール、マリア、メアリ、カバと立て続けに立て板に水のごとき責め立てられKIDは少し胸を痛めた。
だが一瞬も笑みを崩すことなく頷くと
『ですが、あなた方も覚えて置いて下さい。私はKID。確かにあなた方にとっては偽者でも本物と思う人にとってもは本当の怪盗KIDなのです。そうである限り私はKIDの名を汚す行為は決してしないとこの名に誓います。』

愁傷にシルクハットを腰の位置までもってきて腰をおるとKIDはフワリと飛び退いた。

『って事で。またお会いしましょう名探偵っ』
一転変わって楽しげな表情をみせるとコナンに向かってウインク一つ残しパチリと指を鳴らした。
それと同時に白煙灯を地面に落とす。煙に目を奪われたその一瞬の隙をつき、KIDは煙と共に消え去った。

『ちっ』
小さく舌打つボールを残して
そしてそんな騒動を見ていたロイドとその仲間達はというとKIDが消え去った煙に目をやり
『おーワンダフル。』だの
『ミステリアスっ』だの
『マジック』だの
叫んでいたがKIDの元いた位置に駆け寄るのだけはロイドに禁止され唇をとがらしていた。
『あそこにマジックの種があるかもしれないんですよっ』
『はいはい。だが我々の仕事はKIDのトリック暴きではなくこの男の捕獲。素晴らしいショーを見せてくれたKIDには感謝の意を表して拍手一つでこの場から去るのが妥当といったところだろう?』
『確かにそうですがーー』
あの伝説の怪盗を目の当たりにしていつもなら言わない我が儘が口に出てしまうらしい男達にロイドは苦笑を見せた。
『気持ちは分からないではないですがそう言うことは又の機会に。いつかまた出逢う事となるでしょうからね』
意味深な笑みでコナンの方をチラリと見やるとそう言えばと手のひらを叩いた。

『ミスターマーシェリー』
『なんだね。ああ、そうだ君にはお礼を言い忘れていた。私と私の孫を助けてくれてありがとう』
すっかりKIDのショータイムに夢中で忘れていたがロイドにはとっても御世話になったマーシェリー氏。しわが刻まれた頬を更にシワシワにし微笑むと手のひらを差し出した。
『いえいえ。こちらも後ろめたい身ですからこれで相殺にしてもらえます?』
クスと笑うとロイドは差し出された手のひらを無視してポケットからある物を取りだした。

『どさくさに紛れてお借りしてましたがお返し致します』
握手の為に差し出した手の平にはいと手渡されたマーシェリーは首を傾げつつ受け取った
『は?』

手の中に納められたそれは丁寧にハンカチに包んであった。
そっと開いてみれば・・・・・
先日偽KIDに狙われたにも関わらず無事でいたあの石だった。
い・・いつの間に

『彼の名で宝石を盗んだのは私です。お騒がせいたしました』
それだけ言うと仲間とセディスをひきつれロイドは仲間と共に風のごとく去っていった。
質問すらさせずに。

『は?』
もう一度マーシェリーは目を瞬かせながら呟いた。










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