悪夢到来!!! 依頼者達5 




 扉を開くとにぎやかな声が聞こえてきた。
 部屋の中は結構な広さで、真ん中に10人は同時にご飯を食べられるだろうほど大きな机とイスが置いてあり、さらに左奥の方には5.6人掛けのソファがドデンと置いてあった。それでも全く狭いと思わない。
 部屋の右側に立ち並ぶロッカー。名札が付いているところを見るとこれは団員専用のロッカーなのだろう。ズラリと役20個のロッカーだが場所によっては3枚名札が貼ってあるところもあるから20人以上団員がいることは確かのようだ。

 そこまで見て取るとコナンは声の主へと目をやった。
 ソファに座る二人の男が言い争いをしているようだった。
 どうやら先ほど笑いながら入室したボールが部屋にいた気弱そうな男をからかって遊んでいたらしい。
 もう一人いた大きな体の男がまあまあと二人の仲介に入っていた。
 それらをチラリと一瞥すると慣れた様子でメアリが口を開いた。
『今ここにいるのはこの5人と後で来るアリスの合計6人よ。』
 その静かな口調にピタリと動きを止めたその三人は一斉にドアを振り向いた。
 そしてボールを除いた二人が興味津々で新たな来訪者を見つめる。

『他にはいないんですか?』
『ええ。練習は個人で。大抵の人が本番の2.3日前にしか集まらないわ』
 と言うことは他の仕事を持っているのかもしれない
『ここのサーカスで稼いだお金はすべてある方への寄付なの。ようするにボランティアね。だからみんな本業を持ってるの。』
 恵まれない子供ではなくある方?
 尊敬する人か?だがそんな人が寄付なんか受け取るものだろうか?
 コナンも快斗も不思議そうに首をかしげるが、あまり詮索するのも失礼なのでとりあえず流す。
『とりあえず紹介からするわね』
 メアリの言葉に少し離れた所にいた三人は近寄ってきた。

 イスに腰掛けるとメアリが一人ずつ指さしていく。
『シンイチ。奥から行くわ。ポールは知っているわね。その隣りがピエロ。』
『サーカスでピエロ役をしているので、ピエロと呼ばれてます。初めましてシンイチ君。噂は君のお父さんから聞いているよ。』
 気弱そうだと思ったのは外見だけで喋る口調は予想以上にハキハキしていて気持ちがいい。独特のリズムを持っているらしく場の空気が少し明るくなった気がした。
『はじめまして。父がいつも御世話になってます。』
『それでこの人が』

 最後に指をさされたお腹の出たズドンとした男は大きな体に似合わず小さな顔と優しい瞳を持っていた。
 穏やかに微笑むと自分から名乗った。
『カバと呼ばれてます。サーカスでは動物使いです。後でよければ僕の友人も紹介するよ』
 友人というのはたぶん動物の事だろう。
『カバ?えーっとそれは日本語ですか?』
『ええ。こちらで言うとヒポタマス。でも僕の場合はどうもカバの方が似合っているらしくてね。』
 クスクスと笑いながらいうその彼は確かにカバ。
 なんと言っても癒し系の空気を持つせいだろう。水の中をボーーーーと漂うカバに似た雰囲気を持っていた。
『よくカバちゃんと呼ばれてます。よろしくシンイチ』
『こちらこそよろしくお願いします。カバさん・・ってなんか変な感じですね。』
 苦笑する快斗にカバも朗らかに笑い出した。
『すぐに慣れますよきっと。』
 カバの言葉にそうですねと頷くと男三人組は近くのイスにそれぞれ座りだした。

『それじゃあ最後に今更だけど自己紹介するわよ私がマリア。こっちが私の妹のメアリ年子よ。シンイチ。自分で挨拶して』
 マリアの促しに頷くと足下でぼへっと立ちつくすコナンの耳にごにょごにょと吹き込み、みんなの顔を見渡した。
『はじめまして工藤新一です。父から呼ばれてきました。こちらのルール等ありましたら是非いろいろと教えて下さい。それからこの子は江戸川コナン。僕の遠縁にあたる子です』
 とコナンの頭を押さえて下げさせる。
『このガキに手ーだすと探偵君が猛烈に怒るから気を付けとけよー』

 ボールがにやり笑いを作ると快斗は苦笑して頷いた。
『経験者の語りが一番真実味を持ちますよね』
『ボール・・お前もう何かしでかしたのか』
『そう。そんで叱られたからな。もう手はださねーよ』
 カバが呆れたように額に手をやり尋ねると肩をすくめ楽しげに肯定したボールはどこから出したのかワインをドンッとテーブルに置き

『ま、さっきの事は水にでもサァァァッと流して、祝いだ祝い。歓迎祝い。飲むぞっ』
『ボール・・なんでお前はそうなんでもこじつけて飲みたがるんだ』
『親父ぃお前こそ顔似に合わず老けた考え方だなー。今時のわかもんってーのはこじつけでもしなきゃ飲めねーんだよ』
『若者?』

 不思議そうなピエロの呟きに眉をしかめると
『へーへーすみませんねぇどうせもう若者とっくに通り越してますよーー』
『あ・いえそんなつもりで言ったわけでは』
『おぼっちゃーん。お前はまだ若者の域だから飲むよなぁ?もちろん飲むよなーっていうか俺が注いだ酒を飲めねーなんて言わせねーぞー』
『ボールさ〜〜ん』
 酒が飲めないのかピエロが必至にボールから逃げようとするが、上手く遮られいつの間にやら手にワイングラスを握らされていた。手の中の物体を嫌々みつめるピエロ。それを心底楽しげに見つめるボール。それを困った顔で仲裁に入るカバ。



「・・・・忘れられてるね」
「ああ。そんな感じ」


 コナンの的確な表現に快斗は呆然と瞳はその三人を見つめたまま頷いた。
『ちなみに親父というのがボール流のカバちゃんの呼び方よ。確かに25にしてはカバちゃん内面親父入ってるもんねー』
『そしてピエロはぼっちゃんと呼ばれてるわ。私たちはお嬢ちゃん。』
『酷いときは姉ー妹ーって呼ばれるんだから。もうなんのために呼び名があると思ってるのかしらね。まともに名前を呼ばれるのはアリスくらいじゃないかしら。』
『呼んだー?』
 マリアの言葉に扉の向こうから明るい女性の声がした。すぐにカチャリと開くと予想以上に若い女の子がひょっこり顔を出した。




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はーいサクサク増える新キャラ達ー。
でもさすがにそろそろ出尽くしてきたので安心してね♪
あと・・数名ですね←おい。
まだ人物紹介しかしてないから話の核心まで届いてません。
でもご安心を。核心つくと後はスピーディーー・・だといいですね(笑)
それでは8でお会いいたしましょうっ。
2002.7.12