悪夢到来!!! 依頼者達6
『あら?アリス来たのね』
『うん。あっその二人が例の?』
『ええ。シンイチ彼女がアリスよ。アリスこちらシンイチ。隣りがシンイチの遠縁にあたるコナン君よ』
アリスは小柄な少女だった。柔らかな素材の水色のワンピースにフリルのカーディガン。
茶色いストレートの髪は腰まで伸びていた。
小学生か中学生くらいだな?
コナンが見上げていると目があったのかにっこり笑いかけられた。
『こんにちは。シンイチお兄さま。コナン君。私はアリス。11歳よ。コナン君はいくつ?』
『はじめましてアリス。ごめんねコナンは英語話せないから。この子は6歳だよ』
腰をかがめ130cmあるかないかの小さな少女に目を会わせると快斗は柔らかく子供好きする顔を見せた。
『まあ。シンイチお兄さまって格好いいのね。コナン君も可愛いし。素敵・・・』
どう素敵なのか分からないが感動しているらしく手を祈るような形に組み合わせたアリスにちょっぴりコナンは引き気味だ。
なにやら悪寒を感じる。
『マリアお姉さまっ。わたくし有りだと思いますのっ』
『アリスならそう言うと思ってたわ。私も有り派よっ』
『遠い異国の地。言葉を話せない少年が頼れるのは兄ともしたう青年ただひとり・・・ああ・・・なんて素敵なシチュエイション』
『萌えるわねー』
『・・・あ・・あのなんの話を?』
『ああ。ごめんなさいこちらのことよ』
あなたには関係ないから心配しないで。とマリアに言われた快斗はとても関係ないとは思えない内容に頬を引きつらせた。
『それで?マリアお姉さま。お部屋はもちろんあの部屋ですわよね?』
『あの東部屋ね?私もそうしたいのは山々なんだけど部屋の管理はメアリなのよぅぅ』
『ああ・・メアリお姉さまは融通きかないから―――――』
『本人の目の前でいい度胸ねアリス』
『まあ何故怒ってらっしゃるのメアリお姉さま?』
『・・・安心なさい。私もこのカップルは有り派だから。』
『メアリお姉さまっっっっっ♪』
『メアリは子供好きだから子供ならオッケイなのよね?』
『可愛い子供限定よ』
『あのお部屋ね。あのお部屋。朝日が最初に射し込むロマンティックなあのお部屋。』
『アリス妄想話は後でいくらでも語り明かしましょう。とりあえずシンイチ。はいグラス。』
三人寄れば姦しい。その言葉通り延々と会話が繰り出され、その言葉一つ一つに快斗は衝撃を受けていた。
いっそ分からない方がよかった。
ようするに彼女たちは自分たちをカップリングとして認めたのだろう。
そしてそれについて妄想をたくましく燃やしているらしい。
コナンはというとアリスの醸し出す空気に何かを察したのかさっさとボール達男軍団の喧嘩に参加していてこちらの会話は聞いていないらしい。
俺もそっちがいい・・と快斗が恨めしげにコナンの背を見つめていると、
いつの間にやら新たなワインとグラスを持ってきたマリアがグラスを差し出した。
渡されたグラスを反射的に受け取ってしまった快斗は並々注がれた葡萄色のそれを見て首をかしげる。
『・・・未成年ですが』
『気にしない気にしない。どうせピエロも未成年よー。あいつ今年で19だっけ?』
『いえもうすぐ20よ。未成年卒業。大変ね彼。今年からボールに居酒屋ツアーに連れ回されるわよ』
『あーあ。お酒だめなのに大変。』
『そうね本人も可哀想だけど周囲も大変よ。』
『飲み過ぎると吐くとか?』
快斗の問いにマリアは含み笑いで答えた。
『違うの。テンションがハイパー化しちゃうのよー』
『ただのハイパーじゃないわ。以前一度だけその現場に遭遇したけれど皿投げるわ、机割るわ、店のドア壊すわ、とにかく大変だったわ』
『あっアリスも見ましたわーピエロちゃん凄かったですわよね?机をえいって持ち上げてたもの』
しみじみとしたメアリのお言葉と脳天気に怖いことを言うアリスの言葉に快斗も笑顔が引きつる。あの気弱そうな少年がそんな事をしでかしてしまうなんて酒ってこわーい。
『反対にカバちゃんなんてざるだからいくら飲んでも顔色一つ変わらないし、がぶ飲みするから水でも飲ませとけって感じよー』
『良いお酒はカバには飲ませられないわ』
なるほど。
なんとも分かりやすいお方達だこと。
付け加えるならばどうやらこのマリア、メアリ姉妹もざるに近いようだ。
ワインをがば飲みしている。もったいない。
アリスはもちろん未成年のため持参したペットボトルのオレンジジュースをグラスに注いで優雅にのんでいた。
このマイペース軍団の中にいたらピエロ君もそれは大変な事だろう。
そしてハイパー化すると分かっているのに(分かっているからなのか)ピエロに酒を飲ませるボールという悪人もいることだし打ち上げの際とか非常に凄いことになりそうだ。
『とりあえず、会議始めるわよ。シンイチが来てから第一回目の会議。はーい聞いてっ』
縁真お気に入りのアリスちゃん登場〜〜〜
一番書きやすかったです。
そしてこの先も頑張って煩悩に生きてねって思ってます。
2002.7.20