悪夢到来!!! 依頼者達7
『とりあえず、会議始めるわよ。シンイチが来てから第一回目の会議。はーい聞いてっ』
パンパンと手を叩きながらワインで酔った様子の一欠片も見せずマリアが視線を集める。
机の上に置かれたすでにからのワインビン。
二人で一本をこのスピードで飲んでおきながらまったく酔わないってどういうことだろうか。
恐ろしい物を見る目つきで快斗は素面にしか見えない姉妹を見ていた。
同じくコナンも呆れた目で男共を見ていた。
ピエロの目が少し据わっているものの、後は代わり映えしない。
床にワインボトルがゴロゴロ大量に転がっているというのに。
『えっとねー全然進展しないんだけどね、奴がいつ現れるか情報はゼロ。だれか少しでも情報ないの?』
その言葉に快斗はハイっと軽く右手を挙げた。
『すみません。その前に何故KIDを捕まえるのか聞いてもいいですか?そう言うことは警察に任せておけば―――――』
『あんなヘボに任せておけるもんですかっ』
快斗の言葉はマリアの激しい憤りの声にかき消された。
(へぼ・・)
快斗もコナンもほぼ同時に思っただろう。こっちの警察も馬鹿にされているのか・・と。
中森警部も結構大変そうだもんなぁ。
『ハッキリ言ってあいつらアホよ馬鹿よ。なんであんな奴さっさと捕まえられないのよっ』
『姉さん。手が傷つくわよ』
強く机をたたきつけるマリアの手をメアリがそっと包み込む。
『ごめんなさい。また興奮しちゃった。』
『まあマリアさんのはちょっと大げさだけどKIDが現れるようになってから僕たちのように少しでもマジックが出来る人物が疑われるようになったんです』
ピエロが不快そうな顔で快斗を見つめた。
『特に団長が疑われてるからマリアも気がきじゃないんだろう』
『団長ってそんなに有名なマジシャンなんですか?』
『まあ俺達ん中じゃダントツだわな。だが団長程度のマジシャンならそこら中にいるぜ?』
快斗の言葉に応えると、ボールはワインをボトルごと仰ぎ、ぐっと腕で口元をぬぐう。
『どーもここの劇団の近くで奴が勃発するせいか警察のヤロー共がうるせーうるせー』
そりゃこの犯罪人顔のボールには実に迷惑な話だろう。
もし快斗やコナンの予想通り、ボールに前科があったとしたら余計に警察の目は厳しくなる。
『だから父にKIDを捕まえてくれと頼んだんですね』
さっさと本物を突き出して無実を証明しようって事か。確かにこのままだとサーカスの方にも支障がでるだろう。噂というのは例え真実でなくとも人心を惑わす。
『なるほど分かりました。』
『とにかく奴が今度いつ動くか分からない以上しばらくは情報収集に専念と言うことになってるのよ』
マリアの分かった?といった瞳に快斗はニッコリ顔で答えた。
『明日ですよ』
『え?』
何を言われたのか解らずパチクリと目を開き快斗を見つめていたのはマリアだけではない。
しばらくして意味がようやく脳まで浸透したのか一斉に驚きの顔を浮かべた頃合いを見計らって快斗はもう一度口を開いた。
『明日。奴は動きます』
『な・・なんで今日来たばっかのお前が―――――』
そんな事知ってるんだっっとガタリと立ち上がりいちゃもんを付けようとしたボールは
『探偵ですから』
しれっと答えた快斗に膝をカクリとさせてしまった。
さしものボールもその飄々とした態度に怒りが持続しなかったらしい。
そんな二人のやりとりを隣りで見ていたコナンは呆れた視線を快斗に向けた。
(むちゃくちゃ信憑性に欠ける言い方だな)
『明日。マーシェリー家付近へ奴が現れる事はかなり確かな情報です。さすがに時刻までは分かりかねますが』
マーシェリー家に現れるとは聞いていないためしっかりとは述べられないが、十中八九はその家が狙われているとみてよい。
あの近辺に大きな家が建っているか一度調べてみる必要はあるだろうが。
『じゅ・・充分よ、しんいち。グレイト』
驚きのあまりどもるマリア。それに何故か周囲からさすが探偵だっと拍手まで貰ってしまい、快斗はちょっぴり罪悪感を覚えてきた。
(いや・・中森警部がペロリと吐いただけなんだけど)
真相を知ったら誰もが腰を抜かすだろう。
いや、その前に警察にあるまじき口の軽さにあきれるか。
(日本の警察が誤解されたらやっぱ嫌だしねー)
『しっかしマーシェリー家か。奴も目の付け所が違うな』
『そうね有名だものねマーシェリー家と言えば』
ボールの言葉にメアリが頷く。
『音楽一家だものね』
『薬の仲介人だもんなー』
え?
と二人で顔を見合わせた。
『ボール?』
『なんだよ音楽一家って?マーシェリー家って言やぁ薬の仲介屋だろ?』
まるで空港でのコナンと快斗の言い合いのような事を交わし会うのを見て
「俺ボールのおっさんにむっちゃくちゃ親近感湧くな〜♪」
「やっぱ裏の世界の人かあの人・・」
仲間仲間〜と快斗のお気楽な言葉とコナンのげっそりとした一言がひっそりもれたがボールの爆弾発言のおかげで聞きとがめる人はいなかった。
2002.7.28