こないだ俺は聞いてみた

「江戸川コナンってどんな奴?」
「歩美の王子さまーー」
「お兄さん・・みたいな感じでしょうか。」
「ずっこい奴だぜーいっつも良いところ独り占めするしー。」
「でも元太君いつもコナン君に助けて貰ってるじゃない」
「まーそーだけどなー」
文句をいいつつも元太はコナンを認めている。
仲間として、頼れる存在として。

だめだこいつらは江戸川びいきだから。
もう一人聞いてみる。
「彼?彼は・・・・脳天気な推理オタクよ。」
冷めた口調の灰原さん。今日もクールで素敵です。
だが、脳天気?思いもよらぬ答えが返ってきて俺は首をかしげてしまう。
江戸川って思慮深そうじゃねーか?
「近づいてみれば解るんじゃないかしら?」
そんな俺に提案してくれた。
そうだな。本人にアタックが一番手っ取り早いよな。
だから俺は作戦を練ったのだ。





     江戸川コナンという男。(前編)


俺は高宮勇気(たかみや ゆうき)。6歳。自分で言うのもなんだけど天才少年とは俺のことさ。
勉強できてスポーツもできてそれなりに顔もよい。
そしてこの活発的な性格。どれをとっても完璧だよな。

毎朝鏡を見て俺は自画自賛していた。
なんで俺ってこんなにかっこいいんだろう(まだちょっと頬のあたりが丸いから可愛いとか言われるけど5年後には間違いなく完璧な美貌を誇るだろう)
ふ・・罪だよな。
悪いね世の一般的顔の少年達よ。はっはっはぁ。


もちろん努力なしにここまでこれた訳じゃない。
勉強だって幼稚園のころから塾通ってるし、スポーツだってちゃんと毎朝マラソンしてる。
服やら髪型やらにはきちんと気をつかっている。
それに牛乳だって毎日2本飲んでるし嫌いなピーマンだって頑張って食ってる。

努力あっての俺だからこそ、俺は自分に自信を持っていた。


それが・・・だ。

それが・・・・・・・どうしてこんなことに。



先日うちのクラスに転校生がやってきた。
なんでこんな時期に?と聡い俺は疑問に思ったがそれは子供じゃないんだしつっこむのもなんだよな・・と思ってとりあえず気付かないフリをしておいてやった(俺っておっとなーー)。

そいつの名は「江戸川コナン」
・・・・・変な名前だよな。
まあまあ顔が整っている奴だったから要チェックしてたんだけどさ(俺様の人気を横取りしないか)、なんとあいつは俺の愛しの「吉田さん」のグループへとすんなりと仲間入りしやがったんだ。
どーゆーことだぁぁぁぁ。

俺様が入れなかったあの壁にあいつが入れた・・なんでだ?

あのクルクル変わる可愛らしい表情にクリッと大きな瞳。
笑顔なんか最高なんだよ。俺の心を捕らえて離さないぜ。
なにせ俺の予想では学年一の美少女だからな吉田さんは。


それなのに・・それなのに。
何故かあの子は俺につれない。
特にあいつがやってきてから。


「コナンく〜ん」
甘い声で呼ばれ鼻をのばした江戸川(勇気的主観)が振り返った。
「なに?歩美ちゃん?」
「あのねーこれどーしても解けなかったの。」
昨日だされた宿題を教えてもらうつもりらしい。
そんな事なら俺が懇切丁寧に教えてあげるっていうのに・・。
それはもう手取足取り・・・うっとり・・。

「ああ。それはね。」
俺の妄想が進む前に質問された問題にこともなげに答える江戸川。

むかつくことに江戸川は頭がいい。
変な名前のくせに卑怯な奴だ。(関係ないのでは)
なんでもないと言ったように軽々と100点満点をとるあいつに俺は自分の時代が終わった事を悟った。

ふっっ乾杯だぜ江戸川。
勉強で完璧に打ちのめされたところに大得意のサッカーでボロ負けし、さらには吉田さんまで奪われがくりと膝をついた。
もうダメだ。
俺の人気はすべてあいつの物。

今までクラスでトップを争っていた円谷はどちらかというと運動が得意ではないし、顔も俺に劣っていた(失礼)から安心していたのに。
まさかこんな大物が最後に登場するなんて。
しかもその後転校してきた「灰原哀」。
これまた美少女に一目でフォーリンラブ(歩美はどうした)した俺は転校したてで心細いだろう彼女に優しく愛の手をさしのべようとしたその瞬間さらなるどん底へと突き落とされた。



「あっ灰原っこっちこっち。」
知り合いらしい江戸川が手招きをしていた。
お前・・・吉田さんと言うものがありながら。よもや二股かっ。
恨めしい気分で江戸川を睨み付けたがあいつは鈍感なのか全く気付かないまま俺は無視された形でおわった。






そんなこんなで。こうなったら江戸川の弱点を見つけてやる。
と躍起になった俺は逐一あいつの行動を見張るようになった。
だってよーどこからどう見ても完璧なんだぜあいつ。
なにやらせても出来るし(音楽は別だがあれは勝負にならないから無視)なんか雰囲気すら大人っぽいし。
悔しい通り越してライバル扱いするのもおこがましいくらい出来た奴。
だからこそ。だからこそ弱点の一つくらい見つけないと俺は未来に希望が持てないんだぁぁ。



「あれ?高宮?なにやってんだそんなとこで。」
「おうっ。見つかってしまったか」
「バレバレだって。」
学校帰り後をつけていた俺は電柱柱の影からひっそりと覗いていた。
まるでストーカーのように。

「なーーんか最近視線感じると思ったらお前か。」
呆れた風の江戸川に俺は視線を感じるとはやるなお主っ。となにやら忍者的気分でふっと笑った。
「はっはっはぁ。まさか見破られるとは思わなかったぞっ」
高笑いをしつつ胸を反らしあっさり認める。
「・・・・開き直んなよ」

「まあいい。ここであったが100年目。いまこそ尋常に勝負勝負ぅぅ。」
とりあえずカンフーっぽい構えを取ってみた。
それに呆れた目で江戸川はあっさりと指摘した。

「お前時代劇好きだろ。」
「まあな。水戸黄門はかかさず見ているぞ」
肩をすくめうなづいた。なんで解ったんだ?
「渋い趣味してんな」
「下手なドラマ見てるより為になるぞ」
「・・・・そうだな」

ドラマなんかちゃんちゃらおかしいぜ。愛だの恋だのでよくあれだけドタバタできるよな。
俺はもっとスマートに生きるぜ。
その点時代劇はいい。
悪がいて正義がいる。
あっさりしていて気持ちがいい。
その上歴史上の人物の名前をすんなり頭にインプットでき一石二鳥だ。
なんて素敵なお話だろうか。


「俺はどちらかと言うと推理もん見るからな」
時代劇はよくわからん。昔母さんに無理矢理みせられたくらいかな。
そうつぶやく江戸川に昔っていつやねんっと心で突っ込みをいれつつ、うむっと頷いた。
「推理か。たまに見るな。おばちゃん刑事とかはなかなか楽しい。」
「・・・・そうか」
「あっバカにしているな江戸川っ。あれはきちんとした推理話の上、おばちゃんが男尊女卑に立ち向かう崇高なお話なんだぞっ。」

力む。だってこんなテレビ見てる奴いないから話題に出来ねーし、でも一般的小学一年生に推理ものを理解しろなんて酷な真似俺にはできねーもんな。だいたいアニメしか見ねーよな一年生くらいじゃ。
だがきっと江戸川なら解るはずだっ。
だからお前も見ろっ。そして俺とともにはまるんだっ。
そんな理屈により俺は江戸川に力説していた。

「へーそうだったんだ。今度見てみるよ」
「うむ。良い心がけだ。」
素直な(投げやりに見えなくもないが)返答に俺は仰々しくうなづいた。

「それで?話は戻るけど高宮。お前の家は確か俺んちと逆方向だった覚えがあるんだけど。」
「・・・まあ堅いこというな。俺はこっちに来たい気分だったんだ」
「へーそう。それじゃあ俺は帰るよ。」
「まて。お前の家にお邪魔していいだろうか。」
「何で?」
「そんな気分なんだ。」
「・・・・・」

結局なにがしたいんだ?そんな瞳をうけ俺は数瞬考えた。
よしっ作戦Aだ。

「実は俺んち両親離婚寸前でさ。ちょっと家に帰りづらいんだ。」
この演技力はお前に見抜けまいっっ。
毎日20分は鏡の前で練習しているからな。
この苦しそうな瞳をみよっ。
この辛そうに歪んだ眉をみよっ。

「・・・・お前さ。」
そこまで言ってからやれやれと首をふり、盛大にため息をつくと江戸川は家へと招いてくれた。
ふっ俺の作戦勝ちだな。単につっこむのがめんどくさかっただけかもしれないが。



        小説部屋      後編


正月企画を読んだ人はちょっぴりお得っっ(?)となっております。
そう気付いた人いるかもしれませんが
あれに出てきた「高宮君」です。
実はこんな奴だったのです(笑)
2002.5.25
By縁真