72時間の奇跡〜幽霊の事情〜
       其の3





8月の20日
その日快斗は元気に学校へ登校していた。
理由は補習・・・・ではない。
昨日まではそうだったが今日は違う。
実を言うと新学期早々にあるクラス対抗演劇大会(良く分からないが毎年あるらしい)の為に集まっていたのだ。
補習を言いつけられた快斗はついでとばかりにその役まで押しつけられ補習のない今日出校していた。
メンバーはクラスの中心人物達ばかり。
先生が適当に快斗を選び、その快斗が無理矢理巻き込んだ青子やら白馬やら紅子。
そして責任感からか委員長
更には青子に巻き込まれた友人達。
またまたその他無理矢理にメンバーにされた面々が顔をそろえていた。

まあ何と行っても快斗や青子の友人だけあってノリがよく、こんな日に嫌々出校とは言え、
なんだかんだいいつつも盛り上がる。
お菓子やらジュースを持ち込みまるでちょっとしたパーティーのような状況のなか、快斗が教壇に立ち題目を決めている最中だった。

「で〜とりあえずこん中から決めよーと思うけど他に案はない〜〜?」

コンコンと黒板を指で叩くと一人一人に目を会わせていく。

「いいんじゃないかしら?」
「そだねー青子としてはキッドVS中森警部最後の決戦!!!ってのがお勧めなんだけどなぁ」
「っていうかそれって最後どっちが勝つわけ?」
「お父さんに決まってるじゃないっ」
委員長の問いかけに青子はキッパリ答える
「きゃーーーっか」
「あっ快斗おうぼーーっっ」
「何とでも言えっそんなのキッドが優雅にその場を去って終わりにきまってんだろ」
「何それっっ最後になんないじゃないっっ」
「オーケーオーケーじゃ中森警部退職にしよっ」
「だめーーーーー!!!」

「えーっとそろそろ僕は帰らせてもらっていいですか?」
二人の争いが長引きそうだと判断したのだろう白馬がそっと右手をあげ申し出る。

「んあ?ま、今日はいいぜ。題目も絞れてきたし後でセンセーに提出してくっから次は新学期にな」
「解りました。そうそう、黒羽君。巻き込んでくれたお礼はそのうちにさせてもらいますよ」
「・・・・ま、そのうちにね」
「では皆さんまた新学期に」
ニッコリ微笑み去って行く

その後ろ姿に快斗はそっと舌を出した
(ネチネチしつこいぞーーーーー)

確かに無理矢理だった。
超絶に無理矢理だった。
自分が無理矢理にこんな役に任命されたので白馬にも同じ思いをさせてやれっと思ったのはたしか。
でも転入生である彼を気遣ったのも実のところ数%ではあるが確かな事実であった。
探偵業ばっかやってっと友人できねーんだからなっ

白馬が去り、んじゃもう少し絞るかなと黒板に書かれた5つの題材を眺める。

「うーん。なんかビミョウ」

個性的なメンバーが集まっただけあり、普通のものがない。
全部オリジナル。
誰がシナリオ作るのよ?俺?俺なわけ?
今から頭が痛い。

「んじゃーとりあえず委員長この『黒雪姫と7匹の子ヤギ』なんだけどさ〜」
もうちょっと詳しく委員長の考える話を教えてくんない?
と聞こうと思った時だ
廊下からどかどかともの凄い足音が聞こえてきたのは。
見回りの先生だろうか?
お菓子持ち込んでるから叱られるなぁとか考えているとその足音は一直線にここへ向かってきた。
うーん。
狙い定めた感じだねぇ
「なんだ黒羽急に話を止めるなよ」
まだ足音が聞こえていないのだろう委員長や他の面々が突然に動きを止めた快斗を怪訝な顔で見た。
その時だ




ガラッッ




ドアを壊す勢いで開いたそいつ。
あまりの勢いに誰もが振り返った。
更には時を止めた。


何事かと振り返る少年少女達はそこに仁王立ちで立つ人物を見留め、とても驚いた。
そして教壇に立つ少年に顔をやる。
もう一度扉の少年に顔をやる。
そんな仕草を何度か繰り替えした末に



「「「「「ドッペルだーーーーーーー!!!」」」」」



叫んだ。


「快斗っ逃げてーーー快斗がしんぢゃうーー」
「落ち着け青子っ」
「まあ大変。これはどういう事かしら。光の大魔人が来るなんて」
「紅子なんの話だっ」
「黒羽が黒羽が二人いる〜〜なんだよ一体〜生き霊か?クローンか?それとも・・・はっまさか異世界から召喚〜〜〜〜!!!?」
「委員長落ち着けっ」
「委員長違うってこれドッペルゲンガーよっっこの間テレビで見たっ」
「あっ俺も見た。やっぱドッペルだよな?」
「って事は・・・黒羽・・安らかに眠れよ」

「眠ってたまるかぁぁぁぁぁ」

教室にいたのは女子6人。男子5人の計11人だった。
快斗は混乱する人々の言葉に必至で突っ込みを入れるべく教壇から叫んだ。
それに目をとめると新一はビシッと周りの騒ぎなど目にも留めず指をつきつけた


「おいっお前っっっ」


ふぇっ?と振り返ったその姿は何やら間が抜けていて新一の隣りでそんな三日前の自分を見た幽霊が額を押さえていた
(俺、かっちょわりーー)
だがしかし、新一も初対面の相手に大して「お前」はないだろう。
いくら怒っているといってもねぇ
あまりに偉そうな態度にどっちもどっちで困った奴らだねぇと一番非常識な存在の幽霊はやれやれと肩をすくめた

「お前が黒羽快斗だな」
「そーだねーそんな名前持ってるような気がするけど〜」
そのちゃかしているのか天然なのか解らない態度はイライラしている新一をむしょうに逆なでした。


「お前三日後に事故で死ぬらしいから気をつけろよ。じゃあな」
ズバッと言うだけいう。

「は?」
真夏の訪問者の言葉に生身の快斗は素っ頓狂な声をあげた。
すでに背をむけかけていた新一はクルリと振り返る。

「だ〜か〜らーー」
新一はイライラともう一度めんどくさくて死にそうなセリフを繰り返した。
「テメーは三日後に死ぬって言ってんだよ。別に信じないならそれでもいーし勝手にしろよ。」

ああ。やってられんと舌打ちすると新一は変人奇人扱いされる前に背を向け歩き出した。
用は済んだ後は帰るだけだ

それに慌てたのは二人の快斗だ

「『なっなんだそれはーーーーー』」

その二重奏は新一にしか聞こえなかったが、だからといって新一のなぐさめになるはずもない
むしろ皆様にもこの素敵なハモリをお聞かせしたい気分になってくる

「言葉通りだろ?」
とりあえず生身の方に答えておく。
暑いから帰ると不機嫌を隠そうともしない新一に幽霊は叫んだ
『そんな説明じゃ解るわけないだろーーー!』
それにそっぽを向き指で耳栓をする困った男新一

「俺にまるで怪しい宗教勧誘のようなマネをしろと言うのかよ。さっき公園でさんざんな目にあったってーのに」
ハッキリいってありまのののべたら良くて霊感少年、はたまた電波ヤロー。運が悪ければ病院へ行くことを勧められるだろう。
悪いが新一ならそのどれともお知り合いになりたくない

「ってか・・あんた独り言は小さい声のがいいと思うぜ」
恐る恐る老婆心ながら忠告する快斗。
すでにこの時点で新一は怪しい人と成り果てていた
「・・・・」
この男には新一は空に向かってぶつくさ呟くただの変なヤローにしか見えまい例えそれが三日後の快斗の為の行動だったとしても
「ふっ所詮探偵なんて報われない職業なのさ」
意味不明に嘆いてみる

「あのさーあんた多分この間新聞に載ってた人だよな?もしかして探偵業に疲れ果ててノイローゼにでもなったのか?」
その言葉に幽霊が青ざめた。
これまた余計な心配をする快斗に新一が心から殺意を抱いたのに気付いたのかもしれない。
だっれのせいでこんな目にあってると思ってんだぁぁぁぁ
「そうだな。きっとノイローゼだ。そんで何でか見える幽霊はきっと幻覚なんだよ。うん。帰って寝よ・・・」
ははとやるせなく笑う新一。

慌てたのは幽霊の快斗だ。

『待ってお願い〜ヤケにならないで〜このままじゃ俺、死んぢゃうよぅぅぅぅ』
「もうお前死んでるし。いいじゃん?俺やるだけやったし」
儚く笑う。
もう俺限界だよ。
大したことしてないくせに新一はそんな事を呟いた。


「お待ちなさい。光の魔人」
紅子が偉そうな声を出した。
それに新一は気付くはずもなく(自分がそんな名前になった記憶ないのだから当然のこと)さっさと教室を出ようとすると
「黒羽君っ彼を止めなさいっっ彼は貴方を助けてくれる人なのだから」
「はぁ?」
慌てたように快斗に掴みかかる紅子に怪訝な顔で新一も振り返った。
隣りで幽霊が顔を輝かす。
『さんきゅっ紅子ぉぉぉ』

「なんだよお前まであんな戯言信じてるわけ?3日後に俺が死ぬ?っざけんなよ。この運動神経の固まりの俺がどうやって死ぬって?」
快斗は髪をかきむしった。
彼だって訳が解らないのだ。

それを見て新一もようやく頭が冷えてきた。
そりゃあそうだろう。突然現れた男に「お前は死ぬ」と宣告されれば例え自分でも「はぁ?」と返す。
「お前頭おかしいんじゃねーの?」って返す。
快斗の対応は普通なのだ。
単に自分が反対の立場におり、なおかつ真夏の暑さに苛つき、ついさっき3日先から現れた幽霊のせいで世間から冷たい視線で見られたという経緯があったせいでそれを見落としていたようだ。
自分も充分過ぎるほどに不幸だが、目の前の同じ顔した男もよくよく考えてみれば不幸じゃないか。
うんうん。

「まあ、なんだ・・その。悪ぃな。突然に変なこと言って。とにかく早く伝言してこの件からおさらばしようと思っててさ・・。1から説明するよ」
新一は素直に謝り手近な席に座ることにしたのだった。

そこへ
「たっっっっ大変ですっっっ黒羽君逃げてくださいっっっ黒羽君のドッペルがぁぁぁぁぁぁ」
悩殺されて名乗られた事も忘れたのだろう白馬が教室へとかけこんできた。





「・・・・おっせーよお前」

快斗は呟いた。



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くじけるな新一!!!