72時間の奇跡〜幽霊の事情〜 其の4 あらかた説明をし終えた新一 快斗は未だ半信半疑なのだろう疑わしげな目を向けてきたが最初のような明らかな否定の目ではない。 だが3日後の事故で自分が死ぬという事実だけは未だに納得出来かねた。 「んで、そこらへんに俺の幽霊がいるって?」 「そう」 「更には三日後から来たとそいつが主張してるって?」 「そう」 「・・・んで。三日後に俺が死ぬって?しかも死因はわからん?なんだそりゃ」 (うーん。仕事が入ってんならまだしも) この俺が? 事故ごときでそんな目にあうか? ありえねーって そんな快斗を見てこれはダメだと判断した新一は明日の朝日を素敵に拝む為にこの件に最後まで関わろうと腹をくくった。 「まあ、仕方ねーから23日だけ朝からガードしてやるよ」 気になるしさ と親切な申し出をしてくれた探偵に「そりゃどうも」と言おうと思った瞬間快斗はある事に気がついてしまった。 「あのさ・・・・明日事故って23日にお亡くなりってパターン・・・あり?」 幽霊と探偵ははたと顔を見合わせユニゾンした 「『あ』」 「ありえるのね(涙)」 空に目をやり困った表情をする新一を見て悟ってしまった 『いやーそういうのは考えてなかったなぁ。はっはっはー』 自分の事のくせに幽霊は朗らかに笑う 他人事である新一のほうが真剣に見えてしまうほどに 「て・め・え・わ〜〜〜」 恨めしげな声を絞り出しても仕方なかろう 見捨てたい こんな奴 だが隣りで首を傾げる男があまりにも無防備な顔を見せるから放っておけないと探偵魂が叫んでしまうのだ ああ・・なんて損な性格 己の親切さに涙がちょちょぎれそうだ 「じゃあ今日、今からガードに入ってやるよ」 疲れたように言うとそいつは困った顔をみせた 「わりぃ明日からでもいいか?」 新一にとっては願ったり叶ったりだ 「あんたがいいならいーぜ。むしろ今日はもう帰って寝てーし」 心身ともに疲労が出ている 誰のせいとは言わないが・・・ 「んじゃそーゆーことで。えーっと工藤だっけ?」 その瞬間むしょうに新一の背筋が冷えた。 なんだぞわぞわするぞ 『どしたの新一?』 フヨフヨ浮く幽霊が空から不思議そうに首をかたむける それにピンときた。 そうか・・そう言うことか 「黒羽。頼むから名前で呼んでくれ。何かお前に名字呼ばれると違和感でふるえが走る」 鳥肌のたった腕をさする新一 「へ?」 そこまで嫌がられるとは一体? 諸悪の根元はそんな二人を見下ろしニヤニヤ笑っていた。 「あーー疲れたっ・・・・・ていうか幽霊っっっっっっ自分トコ行けっっ」 『えーーー酷いなあ名前呼んでくんない?』 「黒羽幽霊バージョン」 『うっわ長っ』 「アホバカイトの方がいいか?」 『しくしく。快斗って呼んで欲しかっただけなのにぃ』 わざとらしく両手で顔を覆ってみちゃう幽霊にため息をこれみよがしにつく 「寝る。黙ってろ」 『はぁぁぁい』 追い出すのを諦めた新一に気付いたのだろうか 幽霊は思ったより素直に返事した。 自分の家はやっぱりホッとして だけど傍に(幽霊のくせに)ぬくもりが感じられて いつもよりホッとする それが何故かちょっぴり悔しい つい最近まで常に蘭か小五郎が傍にいたから人の気配に慣れてしまったのかもしれない。 一人は寂しい 前はそんな事思わなかったのにな 『新一寝ちゃった?』 そんな事を考えているとそれまで黙っていた幽霊がそっと眠りを妨げないように囁いた 「んー?なんだ」 『ごめんね。疲れてるのに』 愁傷に謝れてしまうと文句を言うのがためらわれる 「別にいいけど」 もごもごと口の中で呟くと幽霊は嬉しそうな笑顔を見せた 今にも消えてしまいそうな儚げな泣きそうなそんな顔を。 「なんか言いたい事があったんだろ」 それが何か怖くて早口に言う 『あ、うん。』 はっと我に返ると明るい笑顔を取り繕う もしかすると今までも作ってた? ちらりと新一の頭によぎった 『あーあのね。ごめんね巻き込んで・・って言いたくて』 今更な 『新一巻き込んだ事後悔してないけど、でも申し訳ないとは思ってるんだよ。ホントの事いうとさこのままこの世界の俺が生き残れたとしても幽霊の俺は消えちゃうんじゃないかな・・とかさ。思って・・・一人でも俺がここにいたってこと覚えていて欲しいなぁって・・・ごめんね我が儘言っちゃって』 そんな事言われて何を言えるというのだろうか。 『今もこうして眠りさまたげちゃってるし。なんか邪魔ばっかしてるよね。ごめん』 「・・・・」 はあ。 ここまで暗い顔をされるといかに今までの快斗が頑張って表面を取り繕っていたか解る。 っつーか気づけなかった自分に嫌気がさす 「バーろー。てめーみてーな迷惑な幽霊忘れるわけねーだろ。」 やれやれと首を振りしっしっと幽霊の背後に取り巻く暗雲を振り払うかのごとく手を振った。 「とりあえず夕飯食わなきゃなんねーから一時間後に起こしてくれ。」 「あ、うん」 こんな自分にも出来る事があると快斗は嬉しそうに頷いた。 「一時間後ね。うん。絶対起こす。」 「マジで頼むぜ7時に隣りにいかねーと灰原の奴がうるせーんだよ。お前がいて良かったよホント」 自力で起きれる自信がない新一はしみじみそう呟いた。 それほどまで疲れたのは目の前の存在のせいなのだが、それとこれとは別らしい。 感動のあまり胸をふるわせる快斗を置き去りに新一はゆっくりと夢の世界へと羽ばたいた 「おやすみ快斗」 初めて呼ばれた自分の名前に快斗は歓喜のあまり震える声で答えた。 『おやすみなさい新一』 ひどく自分が幸せで それと同時に 消えゆく不安に涙がでそうになった 願わくばこの心までも美しい彼に少しでもかけらでも覚えていてもらえる存在になれる事を祈りたい。 また自分の死によって彼の心が傷つかないで欲しい。 矛盾してるよな。 ほんと。 (ねぇ新一。俺は・・・・・・・・・お前の為ならこの命惜しくないんだよ) ごめんね。 ホント。ごめんね。 透き通る快斗の頬に暖かな滴が一筋流れ そして 床に落ちる事なくかき消えた |
あ、シリアスだ・・