72時間の奇跡〜幽霊の事情〜 其の6 結局昨夜は危ないからという理由で新一の家へ泊まった快斗 朝起きてどこにいるか数瞬悩んだ 「ああ、そういえば」 昨日この家におじゃましてからも喧々囂々戦った二人。 学校へ行くといいはる快斗と3日くらい休めという新一 二人は一歩も譲らなかった そうして日付が次の日へ変わるか変わらないかそんな時間にようやく疲れ果てた二人は妥協をし出した。 「せめて明日は行かせてくれ。」 と残り二日は従う気配を快斗がみせれば 「仕方ねーな。俺の護衛つきだぞ」 新一もため息とともに同意を示した。 そして本日時計をみれば午前7時。 補習はふつうの日より1時間遅くから始まる。 9時につけば大丈夫だ。 ここから学校まではちょいと距離があるので出来れば8時には出発したい。 「うしっ」 『しーーんーーーいーーーちーーーーーー』 「んっ」 もぞもぞと布団が動く 夏なのに布団を着る新一。 部屋の中は冷房でキンキンに冷えていた。 さすがお坊ちゃんはやることが贅沢だ。 『しーーんーーいーーーちーー俺が学校遅刻しちゃうよーーー』 「ん、うるせー寝かせろっ」 『だぁめーー。起きてーー』 触れないというのはとても不便だ。 揺すり起こす事ができない。 『全くもーー』 またもやスヤスヤ眠りだした新一に幽霊快斗が腰に手をあてため息をつく。 もーそろそろ俺が呼びにくるころかなぁ 仕方ない新一を起こす役目は生身の俺に譲ってやるか 悲しいような悔しいような不思議な感情でそう呟いた。 「新一ーーあっさだよーーんおーーーきーーーてーーー」 タイムリーな階下からの声に新一は『んーーーーー』と嫌そうに唸った。 それを見てプッと吹き出し。 俺って意外に役得? 心ゆくまで新一の寝起き姿を堪能した。 工藤家には食べ物は全くおいていない。 いやたぶんカロリーメイトとかそういう栄養補給物はあるのだと思う。 いかに新一が食事に手を抜いているかが分かってしまい快斗は怖くなってくる。 この平成の平和な世の中で栄養失調で死にそうだよこいつーーーー だから隣家へ行き材料を調達してきたのだ。 「俺朝は飯いらねーー」 「だめです。一日の基本は朝ご飯からっ。しっかり食べないとそのほっそい腕がポッキリ行くよ」 昨日幽霊に言われた事をズバリに口にされ新一はムッとした。 よくよく見れば同じ顔で同じような体型のくせに目の前の男の腕はがっしりしている。 くそっっ 「食えばいいんだろ食えば」 そんな新一の前に にっこり笑って快斗が香り立つカップをおいた。 「はい、コーヒー」 「おっ気が利くな」 一瞬にして機嫌が浮上する新一に笑みが禁じ得ない。それはそばに潜む幽霊も同じ事。 二人で同じような笑みを浮かべコーヒーに口をつける新一を見守った。 「うまいっ!!」 パァァァと広がる笑顔 「それはよかった」 ちゃんと隣家のお嬢さんに新一の好みはリサーチ済みなのである。 どんな豆のコーヒーが好きかとか、どんな入れ方とかブラックで飲むか、とか。 本当はブラックが一番好きなのだろうが朝だから胃を荒らさないように少しミルクを足してある。 それでもコーヒーの味は壊さないようにしたつもりだ。 「じゃ、いただきます」 「いただきます」 学校は平和というわけにはいかなかった。 と、言うのも、教室の一番後ろの席には新一が座っている。 "あの"工藤新一を前にどんな補習をしろと? 数学の先生は泣きながらに快斗に頼みこんだものだ。 「"あれ"を引き連れて今日は帰ってくれっっ」 「ごっめーん。明日から2日間これないから今日だけはちゃんと補修うけさせて〜」 じゃないと日数に支障がでるのよ〜 それとも出席に丸して置いてくれる?快斗の笑顔は悪魔のほほえみに見えたと数学教師は後にほかの教師に語ったという。 そんな不正が許されるはずもなく泣く泣く授業参観よりも緊張する授業を開始する。 一日はとっても長かった。 チャイムと同時に補習を切り上げる いつもならもう少し長引くのだが教師はそそくさと背を向け退散していった。 新一の批判をうけるのが怖かったらしい。 「新一ー帰ろーー」 帰り支度ばっちりの快斗がそう声をかけて、ようやく 新一は微動だにしなかった体を動かした。 「あーーーやっぱ学校が一番集中できるな」 グゥぅっと背伸びをする。 可哀相な教師の気持ちを知るよしもなく新一は持ってきた本を心ゆくまで読めたらしく満足気な顔を見せた。 きっとひとかけらも授業を聞いていまい。 「あんた一体何しにきたのよ?」 「護衛護衛。学校は安全だよなーはっはっはー。あっ明日も来るか?」 学校での読書に味をしめた新一に (アナタ昨日なんておっしゃいました?) とつっこみたかったが無駄な事を知っている快斗はやるせない笑みを浮かべ教師の為に丁重に辞退を示した。 「明日は新一の家でごろごろさせてちょうだいよ」 「は?」 「残り二日守ってくれるんでしょ?」 意外に居心地の良い新一の隣を占領する機会を逃すはずもなく、 しっかり今の状況を利用する気満々の快斗はニンマリほほえんだ。 「ちょっとここで待ってろ」 帰宅途中そういわれたのはコンビニの前。 一緒に入って行こうとしたらもの凄く嫌そうな顔をされた。 んまぁぁ、何て素敵なお顔かしら。思わず摘みたくなっちゃうわっ 心の中で摘んでおく 「お前といると目立つんだよ」 まぁそれは自分も思ってたから納得できる。同じ顔、更にはちょーー美形(自分で言うし)が並んでたら効果は二乗ってもんだよネェ。 「でも今更じゃない?」 「コンビニに入った瞬間の視線がいたたまれない。」 そう口にしてさっさと一人入って行った。 どーせ一人でも十分すぎるほど目立つくせに。 「あれ?工藤やないか?」 ボーっとおとなしく待ってると聞き覚えがあるような無いような声が聞こえてきた。 「めっずらしなーこんな人通り激しーとこおるんなて」 親しげに話しかけてくる同じ年頃の少年。 少しずつ距離は縮まっているというのにまだ気づかないのかネェ。 「・・・あれ?工藤なんや雰囲気変わったなぁ」 おっなかなか良い線行ってるねー 「なーーんてな。俺その姿の工藤と会うたの数回しかないっちゅーの。はっはっはーー」 何なんだこの関西人はっ 数回しか会ってないやつにこんな慣れ慣れしく話しかけんなっ 「何や工藤だんまりか?」 さすがに様子がおかしいと気づいたのだろう、そっと顔をのぞきこむ。 少し腰をかがめる動作が身長差を見せつけられているようでむかつく。 「おーーーい工藤ーーー怒ったんかーー?」 不安そうな声音。表情もちょっと悲しげで、何故だろう 非常に二人の仲を見せつけられている気分になってきた。 むっしょーーーに腹立つなぁ 「あーーーもうっっ平次!!何勝手にウロチョロしとんねんっ。めちゃくちゃ探したわっ」 竹を割るようなピシっとした声。 その主はだーーーっと勢いよく走ってくるとその勢いのまま目の前の関西人を思い切りどついた。 慌ててよける快斗 (こらこら。もうちょっとで俺も巻き添えくらうとこだったぞ) そしてその少女の後ろから駆けてきた二人の少女が快斗の目に入り なんだろうちょっぴりやけくそな気分になってきた。 「和葉ちゃんそのへんでやめてあげたほうが・・・・・・・・・・・・・ってえ?新一?何でここに―――――」 「あや?そこにおわすのは用事でこれなかったはずの蘭の旦那じゃあーりませんかっ」 「ちょっ園子ぉーー」 「元々引き受けた役をこの園子様に押しつけといてここで何してるのかしら?」 当然聞く権利はあるはずよねー 蘭の制止も聞かず詰め寄ってくる園子に快斗は引きつった笑みを浮かべた。 西の高校生探偵服部平次に その幼なじみの遠山和葉 工藤新一の幼なじみの毛利蘭に その友人で財閥のお嬢様である鈴木園子 うわー見事にそろってるねー 新一の関係者さんが その彼らが自分を新一と信じて疑わないのに笑えてくる。 「えーっと押しつけたってどゆことかな?」 「あらっしらばっくれる気?そこの関西人のいちゃこきカップルの東京案内の事よっ」 だれがいちゃこきカップルやねんっとつっこむ黒い男は無視して園子は快斗の鼻に指をつきつけた。 「いーい?この貸しは高くつくわよっっ」 「もー園子ったらー。」 ごめんね新一〜と快斗から園子を引き離そうと動いた蘭は突如動きを止めた。 「あれ?」 「だいたい人に仕事を押しつけといて、自分はここで何をしてるのかってのが問題よ。」 そんな蘭に気づかず、最初の話題をほじくり返す園子に快斗はへらりと笑った。 「電波少年が帰ってくるの待ってるんだよ」 本人聞いたら「違う!!」と殴ってくるような事を口にすると約一名を除き全員が 「は?」 と疑問符を掲げあげた。 「えーっと・・・もしかして人違い・・・しちゃいました?」 「はい正解。さすが新一の幼なじみだね」 ピッと人差し指をたてて顔の前で振る。 気づいてくれて嬉しいわ♪ まぁ青子ですら混乱したんだから仕方ないのかもなー 「何?いったい何の話よ蘭二人だけで通じあわないでくれない?」 「人違いってどーゆー意味?蘭ちゃん?」 「っちゅーかもしかして―――――ああっっやっぱりやっ。工藤がもう一人おる。」 コンビニをのぞき込んで幻覚がと平次はうめいた 「えっえーーどこっっ!!?」 何故か意気込む園子嬢はキョロキョロする間もなくターゲットを発見!! あんなに目立つ人間はそうそう居るものではない。 「あーー本当だっいつの間に分裂したのよっ」 「「してません」」 顔の前で手を振ったのは快斗と蘭。 息はぴったり 「どっがホンマもんの工藤君なん?」 「あっちやろ。纏っとる空気が全然違うわ」 「へー数回しか会ってないのに分かるんだ?」 「まぁな」 照れくさそうに笑う平次 皮肉で行ったはずなのに全く通じなかった。 「でも新一にホントそっくり。親戚とか・・じゃないよね?」 同年代のいとこがいるなんて聞いた事ないしと幼なじみは首を傾げた。 「まったくきっぱり赤の他人。ついでに何でお前らここにいるんだっっっ」 口を開こうとした快斗はその声にパクリと閉じた。 後ろを向けば待ち望んだ人物がコンビニの袋片手にかけよってくる。 「あ、本物が帰って来たみたいよ」 「園子本物って別にこの人が偽物なわけじゃないんだから」 「でもそっくりさん大賞で一等とれるくらいホンマに似とるなぁ」 しっかり新一に会ったことが無く、いまいちピンとこなかった和葉は双子のごとき二人を並べてようやく納得したようだ。 「なんでこんな面白い事黙ってたのよ新一君っ」 「お前に言ったら大騒ぎになるに決まってるだろ。」 つめよる園子に顔をしかめうるさそうに耳をふさぐ新一。 「当たり前じゃないっこんなに似てるのよ?しかもいい男が二人。 写真に撮らなくてどうするの?」 どうするのって言われてもねぇ 園子がカメラを買いに行く間に二人はその場を逃げ出した。 それはもう颯爽と。 蘭も平次も和葉も引き留めない。 むしろ早く逃げた方がいいと勧めてくれる次第だ。 っていうか後々文句を言われるのは新一なのだが。 「あー怖かった」 「まったくだ。あいつに捕まったら最後だぞ」 「ホント気をつけとこっと」 その日怪盗KIDの心のメモ帳の 要注意人物リストに一人の名前が追加された。 きり番部屋 7へ |
良かったね園子。
怪盗KIDに名前覚えてもらったよ(笑)
しかもなんかリストに載ったし
その他大勢で無くなった事だけは確かだねっ