72時間の奇跡〜幽霊の事情〜 其の9 「はぁぁ。頑固だからなぁ工藤君」 高木は目暮警部の苦々しい表情を思い浮かべてもう一度頭を振った。 だいたいムチャクチャなのだ。 探偵とはいえ、ただの人間。 怪我だってするし、恨まれれば良い気分なわけがない。 それをわざわざ自分から・・・・ 何を言っても来るの一点張り 危ないと言っているのに聞きゃしない 責任感が強いとかそういう問題じゃないと思う 否定し続けても勝手に一人で動くに違いない。 分かっているから目暮は自分を派遣したのだ 彼の暴走を食い止めるお目付け役として(かなり頼りないと自分でも分かっていけど) ピーンポーーン お願いだから 僕が辞表を書くようなことだけは勘弁してね工藤君・・・・ 情けない祈りを込めてチャイムを押した 「はーーーい♪」 中からは未だかつて聞いたことのないほど明るい工藤君の声・・・・・? そして満面の笑みで自分を迎える工藤君・・・・? え・・エプロン姿の工藤君は初めて見たよ僕。 そしてその後ろから 「かぁぁぁぁいぃぃぃぃとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」 もう一人工藤君が見えて僕は・・・ふふ・・・・思わず座り込んじゃったよ。 「ああ、ドッペルだぁぁ」 「「聞き飽きたっての、その言葉はっっっ」」 驚いたことに彼はドッペルゲンガーではなかった ちゃんとした生身の人間だった しかも血縁関係ではないとか んじゃどんな関係ですか? 聞いてみれば 二人してあいまいな笑み 「ま、友人?」 「一応友人?」 なんでハテナが付くわけよ? まあ、なんだかんだで結局二人は高木が乗って来たパトカーに乗り込んだ。 (ん?二人?) 後ろを振り返れば同じ顔が二つ。 「なっっなんで君までっっっ」 「ほらな黒羽。高木刑事が駄目だといってるぞ」 勝ち誇った顔で口を開いたのは内容からしてきっと工藤新一。 それに対するのは唇をとがらしてそっぽ向く黒羽快斗。 「驚いてるだけじゃん。ま、だめって言われても降りる気ないし〜」 「お・り・ろ!!」 「や・だ・ね!!」 同じ顔がまるで鏡のように向かい合う。 「・・・どっちでもいいけど車だけは破壊しないでね・・・・」 今にも窓ごと快斗を外に放りだしそうな新一に 背もたれにしがみついてイスが壊れても俺は動かないよ姿勢の快斗 先に負けるのは車だろうと密かに高木は思っていた。 「どうゆーことだね高木君」 「は・・・いやその・勝手についてきてしまいまして・・」 着いたとたん目暮警部のズモモーンとした暗黒オーラの襲撃をうけた哀れな高木刑事。 「彼が言うには敵の目をくらませるのに有効・・とかなんとか・・・」 「工藤君一人守るより、工藤君そっくりの彼と本人二人守るほうがこちらは負担だと、思わなかったのか!!」 「いえ・・・その。はい。最初はそう思っていたはずなのですが・・」 いつの間にやら言いくるめられていたらしい。 たよりない部下に泣きたくなってきた目暮警部は力なく頭を振るとチョロチョロ勝手に動き回る双子のごとき少年たちを うつろな瞳で眺めた。 「とにかくあの二人を守ること。それが先決。もちろん戸倉をとっ捕まえるのも 大切だが、第一優先は民間人の命だ。分かっているな高木君」 「はい。もちろんです目暮警部。」 ヒョッコリ覗き見していた幽霊快斗は思わず高木刑事に両手を合わせて謝っていた。 『ごめんーー高木さーん。まさか俺が付いてきたせいでこんなに怒られているなんて知らなかったよーーう(涙)』 生身の快斗と新一はちょっと離れたところで楽しそうに(?)口げんかを繰り広げていた。 それを見て幽霊は悲しそうに叫んだ。 『俺のお馬鹿さーーーん!!』 それは多分瞬く間の出来事だった。 戸倉が逃げ出したという人波のある道路。 この間蘭や、服部たちと出逢ったコンビニの近くの道路に二人はいた。 もちろん警察は付近に隠れ、あくまで囮としてである。 そう見えないのは、二人があまりにも堂々としているせいと、周囲に気を払った様子も見せず喧々囂々と口げんかを繰り広げているからに他ならない。 あれを演技と見抜けたらそいつはきっと大物だろう。 美形2人組に注目する人々は多いが、やまない喧嘩に誰も近寄ってはこない。 「だからお前は大人しく高木さんたちと一緒に隠れてろって言ってんだろ」 「だから俺はその案は却下って言ってんじゃん。隠れるなら新一が隠れててよ」 「はぁ?ワケ解かんねーこと言ってんじゃねーよ。お前には関係ないだろ」 「あっあっっ。今禁句言っちゃいましたね新一君!!関係ないなんて失礼な言い方っっっっ」 「なんだよ。ホントのことだろ。これは俺の問題だ」 「んーでも、ここ最近ガードしてもらってた恩とかあるしぃー。こんくらいしてもいいと思うわけよ俺は」 「明日以降なら喜んで身代わりしてもらうよ」 「ざーんねん!!俺は今日したい気分なのよ」 ヘロリと返され新一はムっと怒りの表情をあらわにした。 「誰も頼んじゃいねーよ」 「うん。自主的行動でっす♪だから諦めてちょーだい」 隠れろという男に対し、 あくまでここにいると言い張る男。 話し合いはどこまでも平行線だった。 「ちなみにどっちが工藤君なんだね」 草むらに潜む目暮警部は眉をたれ、情けなさそうに隣の高木に尋ねた。 「・・・・青いシャツを聞いてるほうです。」 (たぶん) 服でしか見分けられない自分がちょっぴり悲しかった。 「そっくりの奴連れて目くらましのつもりか。工藤新一メイタンテーくん」 こんな大騒ぎの中じゃああわられまいと思った犯人は以外にもすんなり出現してくださった。 もちろん悪人らしく見事な対抗手段を手に。 片手にはどこかで手に入れたのだろう鋭利なナイフが。もう片手には・・・ 「どっちが本物でも俺はかまわないけどな。片方こいよ」 ボーボーに伸びた無精ひげと卑屈そうな笑み そして暗い暗い闇を映す瞳 右手にはナイフ 左手には 「そしたらその女性は解放するか?」 さきほどまで野次馬と化して新一たちのじゃれあいを眺めていた一人の若い女性がのどにナイフを突きつけられ、顔を引きつらせていた。 「考えないでもない」 鼻で笑う。 明らかに不利なのはコチラ。 「わかった」 慎重にうなづくと黒のティーシャツ姿の少年が歩き出した。 「おい」 青シャツの少年が慌てたように止める 「うるさい。勝手に付いてきたお前は黙ってろ」 (おい、青が工藤君じゃなかったのか?) (確かそのはずですが・・・) 自信が一気になくなってくる高木。 「ほーー麗しの友情っやつかい」 あざけるような声に 即座に二人は反応した 「「違うっっっ」」 激しい否定 「趣味だ」と、黒服が 「友なんかじゃねーー」と、青シャツが それから二人は顔を見合わせ 「「なんだそれはっっ」」 気が合うのやら合わないのやら 「んで?どっちが来るわけだ?」 どうでも良くなってきたのか戸倉 「オレ」 即座に手を上げたのは反射神経の塊、黒Tシャツの快斗だった。 とめようとする新一を振り切りゆっくり近づく。 そして 「人質を放せ」 そんじょそこらの一般人なら凍りつくほど睨み付ければ、戸倉はあっさり 「いいぜ」 緊張のかけらも見せず了承した。 さらには 手を伸ばせば届きそうな距離の快斗に向かって腕の中の女性を投げつける乱暴ぶり。 「わっ」 慌てて受け止めた快斗は次の瞬間舌打ちした 「悪いなぁ偽者さん」 声の方を振り返れば戸倉の背中が・・・ 「しまった!!」 もちろん草葉の陰では 「すごい・・見分けついてたんだ」 「感動してる場合かっっっ」 目暮警部にぶん殴られた高木がいた 「ははっやるじゃんあんた」 幼馴なじみですら混乱するほどそっくりの二人を判断してしまうとは さすが逆恨みパワーは違うってか? 「標的はしっかり定めないとな」 「そうかい」 迎え撃つ体勢の新一 慌てて飛び出す警察陣 そして それらを見て取り攻撃の一手を放った戸倉。 「新一ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 獲物はナイフ それは恐るべきスピードで新一の心臓めがけて飛んできた 何本かはなんとか避けたり、足で蹴り飛ばしたりしたものの、立て続けの攻撃にバランスが崩れる。 (やべっよけきれねー) 目前に迫る鋭利なナイフ。 覚悟して目を瞑ったその瞬間 ドンッ ナイフのものではない衝撃が体に響いた え? 開いた瞳に移るのは 黒一色 「な・・・に?」 そしてそれがズシリと自分に覆いかぶさっているのに気づき (まさか) ようやく思い至ってしまった 「くろ・・・・ば?」 まさか という思いと なんで という思いと どうして という思いと いろんな思いが入り混じって 声にならない叫びが新一の口からもれ出た 新一は知らない 快斗が普段から好んで黒い服を着る理由 でも今黒い服を着てたところでなんの救いにもならない。 新一の手のひらは快斗から流れ出た血液で染められていたのだから 怪我をしたのを隠すなんて不可能 いやそれよりも もっとひどい状況 (やっべーどじった) かすれる意識のした能天気にそんなことを思う 「黒羽黒羽黒羽黒羽黒羽黒羽ぁぁぁぁぁ」 耳元で錯乱したような悲鳴を聞き、重いまぶたをこじ開ける 視界には驚きすぎて涙も出ない様子の新一 青ざめて今にも倒れてしまいそうな新一 でも (よかった怪我ねーみたい) 自分はそれどころじゃないのに馬鹿みたいにそんな事にほっとしてしまう 守れてよかったと思う あのまま新一が怪我でもしたら、いやあのままなら間違いなく即死。 そんなこと考えるだけで心臓鷲掴みにされるような気持ちになる。 本当に現実にそれがおこったら 自分は犯人を殺して死んでしまうかもしれない 分からないけどなにをするか想像つかないくらい錯乱するのは明らかだ だからこの選択は間違ってないと胸を張って言える。 「快斗っっ」 ふっと意識をもっていかれそうなところを何度も新一の声に引き戻された 「俺なんかかばってーーこの馬鹿っ!!」 はいはいごめんなさいねーおばかさんで 「死んだら許さないからなーーー」 いやーしんぢゃうでしょーこれは 心の中でいちいち突っ込みを入れつつ最後になるかもしれない新一の顔を目に焼き付けておく (ああ、やっぱ綺麗だな。んでかわいい) すると新一の肩口から自分を覗き込む少年に気づいた 新一にそっくり んでなにやら透けている ん? まさか ・・・・・あれがオレの幽霊かっっっっ!!? 驚きのあまり凝視していると目があった 『ごくろうさん』 そいつはにっこり微笑んだ 満足そうに 悔いは無い言うように それですべてが分かった気がした。 思わず唇の端を少しだけもちあげた。 ああ、そうだったのか きり番部屋 10へ |
そんな簡単に死んでどーする快斗!!
ってか長かったですねーここまで。
次で最終話です。
ダラダラ長引いてすみませんでした