学校対抗
     チョーーウルトラスーパー
                バトルロワイヤル11



冬である。
新年であるからして、冬であり、そして、冬であるからしてとっても寒い。
その寒い中、ご苦労な事に仕事をされている大人の方がここにも沢山いらっしゃった。


「銀行強盗ですね。ほらここの窓ガラスが割られてるでしょう。ここから犯人は侵入した模様です。」
まだ20代前半らしき男は、頼りなさ気な表情でそのガラスを指差した。
手には白い手袋。スーツは地味目のグレー。
振り返った相手は茶系のスーツに同色の帽子をかぶり、自慢のひげをちょっと撫でながら、ため息をついた。

「またか」

二人はこう見えても警察の人間だった。
例え頼りなくても、たとえただのおっさんに見えても。
ちゃんと本庁の刑事なのである。
正月からご苦労様です。


「ええ、今回もあわせればここらへんの銀行3つもやられてますね」
頼りない男―――言うまでも無いだろうが言ってあげよう――本庁で一番困った顔が似合うと評判(誰がしているのだろうか)の男、高木は上司、目暮と同じくため息をついた。
事件の内容も暗くさせるし、この後の世間とマスコミの厳しい批判にも今から胃が痛くなる思いである。

「コンビニ強盗が収まったと思ったら次は銀行か・・・」

二人はそろって額を押さえる
それがここ2ヵ月の間の出来事と言うのだからたまらない
ちなみに自分たち(一課)が捜査しているのは当然ながらソレが起こりえたからに他ならない

2件目のコンビニ強盗にて死者がでた

被害者は果敢にも犯人を止めようとした客の一人だった
それから捜査本部が立ち上がり今に至るのだが犯人は未だ捕まらず。悪いことに犯行は未だ続けられている。
そして今回の銀行にて警備員が一名射殺されているのが今朝発見された。

射殺。
いつの間に犯人が銃を手に入れたのかは知らないが、今まで以上に警察陣に衝撃が走ったのは確かだ。

今までで分かっているのはほんの少し。
・犯人は複数犯である(少なくとも3人以上)
・犯人は銃を持っている(何丁あるかは解らず)
・犯人はコンビニ強盗。そして銀行強盗とエスカレートしている。
・犯人は人を殺すことにためらいを覚えていないようである。今回もう一人(二人一組で見回っていた)の警備員も足と肩を打たれ重傷。今治療中である。

そして、今現在誰もが漠然と思っているコト。


・犯人は。これらの全てを楽しんで、ゲーム感覚でやっている。



高木と目暮だけでなく、現場にいる全てのものが思ったであろう。

どこのクソガキだっっっっ!!

おかげで彼らは去年の暮れごろからずっと休み無しなのだ。

「二人め・・・ですね」
「ああ、二人目・・・だ」

次の犠牲者がでる前になんとしても犯人をあげねばな
二人して重いため息をついた
「犯人の行動範囲は狭いです。どこか拠点をおいていると思うのですが」
複数犯。組織とまではいかないまでも結構な人数がいることはこれまでの捜査でわかっている。
主犯核を捕まえねばとかげのしっぽ切りだ


高木は目の下の隈を撫でながら寒空にむかってつぶやいた。
「早く捕まえてゆっくり寝たい・・・・」


「兄ちゃんっ」
「なんだ」
「また成功しちゃったねっっ」
興奮気味な弟に兄は肩をすくめた。

「当たり前だろう。俺が考えた計画だ。成功して当然」
「うんっ兄ちゃんすげーよっ」

素直な弟に気分を良くしながらも兄は他の仲間たちに目を配らせた。
仲間の数は・・20人くらい。
全てネットで集まった人間達である。

だからして誰もお互いの本当の名前は知らない。
全てコードネーム。
A〜Zまでの好きなアルファベットをつけている。

弟はA。
本名が「英吉」だから。
ただそれだけ。
最初弟に向かって
「英」
と呼んだのがきっかけだろうと思う。
彼らが勝手に
英吉の「英」を「A」と勘違いした結果コードネームと言うものができあがったようだ。

そんな彼らのほとんどが10代である。
髪を茶色や金やら青く染めた若者が多数。
たまに真っ黒な髪にメガネをかけた会社員っぽい人もいたりする。
彼らの誰もが一時の仲間であり、離れればただの他人である。

「いつもどおりに」

「ああ」
「もちろんだっ。」
「んじゃまた面白いゲームやるときは誘ってくれよっ」

口々に彼らは言う。
誰一人お金の話はしない。
彼らの誰一人として本当にお金を必要としているものはいないのだ。
ただ

退屈。

それだけ。

「そういえばB。あの銃はどうした」
「ちゃんとバラシテ捨ててきたぜ」
「うん。またちゃんと買い揃えておくからもったいながって取っておくなよ。証拠になっちまう」

兄は頷きニヤリと笑った。

「ああ、リーダーの言うこと聞いてりゃ間違いねーからな。」
Bと呼ばれた少年も他の少年も少女たちも誰もがリーダーに従う。
彼が天才的頭脳の持ち主であり、彼が面白い事を発案してくれるからだ。

安全でちょっとだけスリルがあるゲーム。

それが彼らにとってどれだけ魅力的であるか。
リーダーと呼ばれる青年は良く知っている。

「ま、いい加減場所変えてやらなきゃなんないけどな」

さすがにここら辺で遊びすぎた。
単純に良い隠れ家があったから長居していただけだが。
リーダーの言葉に兄弟だけあって思考が似ているのだろう、ほぼ的確な答えが弟から返ってきた。


「こんなにいい隠れ家他に無いよなっ。3ヶ月前に見つけたときはビックリしたよな兄ちゃん。」
「ああ、廃墟寸前。なのに電気は通ってるし、水道も使える。人が生活するのに不自由ない。それに広くて更には隠れる場所が多い。もし追い込まれたとしても裏の森に逃げ込めばそのまま逃げ切れるだろう」

これ以上ないという隠れ家。
最初はありえないと思った。
こんな理想的な場所。
だが3ヶ月住み着いて自分たちの幸運に感謝した。

冬である。
冬だからして寒い。
そんな季節に電気が通ってて、水も自由に使える隠れ家に最適な「家」を見つけられたのは最高に幸せ。
このままここに住んでしまおうかと思うくらいには気に入っていた。


「そろそろ警察が疑いだすだろうしな」

ここを捨てるのは惜しいが。

機械だらけの一室でつぶやく。

元々あった機械。
そのどれもが使えるし、更には良くわからないが色々な設定がしてあった。
たとえば

この館。
というか大学の校舎のような建物のいろんなところを監視できるモニターとか。
ボタン一つで落とし穴が開くとか(何に使うんだ?)
これまたボタン一つで壁が動くとか(迷路にでもする気か?)

犯罪者の隠れ家に向きすぎていて。
もしや本当に大きな犯罪組織の隠れ家かも・・・と密かに思っている。
そうなると鉢合わせする前に去るのが一番である。


「じゃとりあえず今日は解散。また適当にな。」

いつもどおり帰りたいやつは家に帰り、帰りたくないやつはここに残る。
暇ならここに遊びにきて。
暇じゃないならこのまま永遠にサヨナラ。

自由に。
自分勝手に。
また明日の朝日を拝むのだ。

次はどんなゲームをするかな。

一人の少年からは「兄ちゃん」と呼ばれ、他の人からは「リーダー」と呼ばれた20代前半らしき青年はきどったサングラスをくいと持ち上げ唇を一舐めした。








「え・・・っと」
「ここでいいんだよ・・ねぇ?」
コナンの戸惑いに同じく快斗も首をかしげた。

渡された地図。
それには大雑把にそれでいてカラフルにここを指していた。

「廃墟・・・に見えるんだけど」
「それにしか見えませんよね」
青子の言葉に同じく白馬も呆れたように建物を見上げる。


「ってか黒羽先輩。俺たち何しにここに来てんですかね」
「お前の数学の内申のタメだ」
「いや乾それは置いといて」
「それ以外の何がある」
「だからーーー!」
辰巳と乾の言い合い(一方通行な気もするが)を打ち切るかのごとく


わざわざ昨日の場所から持ってきたのだろうか朝礼台に朝日を背に乗った男が昨日のごとく頭を光らせ集まった人々に向かって叫んだ。

「よーーーこそっ超ウルトラスーパーバトルロワイヤル第二段へ〜〜」

は、恥ずかしい。
そんな名前の大会に出ている自分が心底恥ずかしい。
コナンは思った。
朝礼台の隣には相変わらず無理やり連れてこられたのだろう藤堂がげんなりと立っていた。


(ああ、不幸な人を発見)
ご苦労様です。
心の中で合掌をした。



「本日ももちろん昨日と同じく知力・体力・時の運!!三拍子揃ったチームを見極めるべくゲームがバッチリ用意されております〜。まず最初のゲームは。」



   ハチマキ取りましょ合戦〜〜〜!!


なんて言うか、もう突っ込む気にもなれなかった。



用意された赤いハチマキ巻いた体育会系の男軍団。
汗臭くて近づきたくない。
そしてスタートラインにたたされた自分たち。
一人ずつ持たされているのは白いハチマキ。


遠くにはゴール。

説明されるまでも無いだろう。
やることは一つ。

ハチマキ奪ってゴールへGo!!

んで二人ともハチマキ奪われたら失格〜

うーん単純明快。
もちろん筋肉マッチョなお兄さん達からハチマキを奪うのは至難の業。
なーんて解っちゃいる。

けどな。


ジャキっと取り出すは、スケボー。
あのリュックに2つに折りたたんであったにせよどうやって入れていたのだろうか。
そんな疑問は大きいだろう。
そこら辺は企業秘密。


てっきり一回戦同様コナンを抱えあげて走るのだろうと思っていた面々は
背中から取り出したソレに目を丸くした。


「重かった」
しみじみ言うコナンに

「確かに重かったなぁー」
快斗もしみじみと

「これでこそ苦労した甲斐があったってわけだ」
「ほとんど俺がもたされてた気がするけどね」
「この俺がこれ背負って走れると思うか」


「むり」
「そうだ」

偉そうに自分の非力を肯定された。

「疲れるのはおまえの仕事。楽すんのは俺の仕事・・・だったよな」
「はい〜」

胸を張って言われた言葉にただひたすら快斗は良い子のお返事。
それにコナンは満足そうに頷く。

そして

「はーい。それじゃあ準備はいいですかーよーーーいドーーン!!」
時田の暢気な掛け声がかかった。


「さて」

コナンがキュッとハチマキを締めて不適に笑えば

「行きますか〜」

相方もこのうえなく楽しそうに返してきた。



「「勝負!!!!」」


同時に駆け出した。



次の瞬間コナンは跳んだ 

勢い良く青空へ

「よっと」

掛け声とともに人の波を抜けただひたすらゴールをめざす。
もうひとりは自分の足で地を駈けマッチョの波を擦り抜ける。
人の波を潜り抜け器用にスケボーを滑らせる小さな少年をはじめは呆然と見てたがそのうちマッチョ軍団が参加者のハチマキを奪うべく向かってくる。

「ま、いっちょ行きますか」

掛け声とともに重心をおとしてグッとカカトに体重をかける。
勢いよく左へまがったりして前へ進む。

そして後ろ足を踏み込んでジャンプしながらヒョイと赤いはちまきを奪ってゆく 


「あ、結構できるもんだな」

己の技術に感心しながらコナンはまっすぐゴールへと向かった



「ちょっと快斗っコナンくん一人じゃ危ないじゃないっっ」
先行して走り出したコナンを見て青子が快斗を叱り飛ばす。
「あ?大丈夫ジョブ。ほら俺たち今勝負中だからジャマしちゃダメよん」

ヒョヒョヒョーイとかるぅぅくハチマキを奪っていくのはやはりスリは大得意の少年。

「え?」
「勝負って言ったでしょ。」

口にはしなかったけど、お互いに通じている勝負内容。

「まだまだコナンちゃんには負けられないからね〜」

片目をつむり青子を白馬に任せ全力で走り抜ける。

そう、これはスピードと技の戦いなのだから。


どちらが早くゴールに着くか。
どちらが多くハチマキを奪うか。


勝負っっ




ダダダダダダダドドドドドド

快斗は走る。
走る走る。

何でソレほどまでに?と自分で疑問に思ってしまうほど必死に走る。
コナンに負けたくないから?
いや違う。
コナンと対等でいたいから。
自分がコナンと同等でいられると確信したいから全力で走る。

きっと今頃コナンも必死。
快斗に負けるなんて悔しいから。
全力で走って全力でハチマキ奪って。

同じところへ向かっている。
だからこそこの足を緩めるコトは決して許されなかった。

だいたい、こんなに勢いよく走ったのって中学生の時知らないおっさんに「君の携帯番号教えて」と語尾にハートマーク付けて言い寄られたとき以来だと思う。
あの時は怖かった。
恐怖だった。
心構えができていれば裏手拳の一撃くらい食らわせたコトだろう。
あの時は非常に油断をかましていたのだ。
だって水族館だったのだ。
青子に無理やりつれてかれて、いやいやってーか魚見ないように一生懸命上とか下とか見て、そんでポーカーフェイス装って

「うわーこの魚カワイーー」
とか騒ぐアホコに
「はいはい」
とか適当な相槌うってそろそろゴールだっ
お土産売り場だっとほっと一息ついていたときだったのだ。

気配?
そんなん探ってたわけねーじゃん。
突然背後に近づかれて耳元でボソリ

一瞬で鳥肌たったね。
んでその瞬間見たくなかった魚みちゃって後ろの気持ち悪いおっさんみちゃって頭ぱにっく。

うわーうわーうわーーー

青子置いて猛ダッシュで外へ駆け出しちまった。

あん時は後でえらい青子に怒られたよなー
走り出した理由なんて素直に言えるはずもなく
「お土産売り場なんてチャラチャラしたところに入れるわけねーだろ」
なんて、言い訳して。
ああ、俺って不幸。
・・・・嫌な記憶思い出しちゃった。




げんなりしていると、あと数百メートルでゴールなのが見えた。
よしよし、いい調子。
少し離れたところにコナンの気配を感じほくそえむ。



ゴール手前で審判が手を振る。
「二人一緒じゃないとゴールできませんよ」
それに快斗は溌剌と笑った。

「やだなぁいるじゃない俺の相方♪」
スピードを緩めることなく一人で走り続け
そのままゴール


ジャジャジャァァァ

ほぼ同時にスケボーが滑り込んできた。

驚く審判に片目をつむりガッツポーズ。
コナンちゃんを侮るなかれ!!
もちろん白いハチマキは無事。
右手に赤いハチマキ握り締め、かっこよく登場したコナンの姿に思わず見ほれちゃいそうだった。


「ピッタリかんかん〜。俺達ってちょー仲良しさんだよねぇ」
「うっせ。ハチマキみせろよ」
「ふふん〜自信ありそうじゃないのー」
「まあな」

「「せーーの!!」」


「「13本!!!!」」


バッと差し出す。
それから同時にお互いを見上げた。

「ぷっ」
「なんだよ一緒かよ」
ケラケラ笑い出した。



トップでゴールの二人は
26本という最多の量のハチマキを握り締め審判と時田と藤堂に向かってVサインを示した。





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ああ、更新遅いですよね。
うう・・ごめんなさい。心から反省してます。
でも改善は見られません(涙)だって文書くの下手な上に遅いんだもん。
今回は、ようやく進展です。
やっとここまで来た、と感慨深いものです。
ちゃんとこの話も今までのように事件物の予定でした。
たどり着くのが遅かったけれど。一応ちゃんと事件物。
ラストまで書けると思うのですが、・・うーん頑張ります。


2004.3.1