学校対抗
チョーーウルトラスーパー
バトルロワイヤル12
「はーいでは通過者20組の方々はこちらに〜」
まるでバスガイドのごとく手を振る時田に
「え?」
思わず藤堂は振り返った。
「なんです?」
「いや・・・・」
口ごもる藤堂。
それにちょっと首をかしげ、それから吹き出した。
「ああっもしかして以前渡しておいた資料しっかり読んでくれたんですか」
相変わらずいい人ですねぇ
ププと笑いながら言われても到底褒められているとは思えない。
「いやっからかってるわけじゃないですよ。そんな律儀なところが私的にはとってもつぼですので」
からかってる。
からかってる。
絶対にからかってるっっっっ
「おや。憤慨されてしまわれた。心が通じないとは寂しいものですねぇ」
頬に手をやり悲しそうに空を見る。
わざとらしいっ。
「もういい。分かってるなら言う必要ないだろ。言え。」
「はいはい。えーっとですね。20組ですよ。」
ああ。と藤堂は頷く。
そうっそこが引っかかったのだ。
「当初の予定では藤堂が考えているとおり50組でした。」
うむうむ。良くぞ覚えてましたね。
と感心した声で言う。
「でも予定は未定とはよく言ったものです。ほら。予定外の人がお二方ほどいらっしゃいましたでございましょ」
慇懃無礼なほどの丁寧語でそれだけ言うと
701番の二人をちらり
藤堂もそちらをチラリと見て
「ああ」
なるほどと納得
二人で26本もハチマキ奪って行ったどこぞのバカどもがいるのだ。
通過人数が減るのは当然だろう
あれはもう、予定外というより規格外というか
この場にいるのが詐欺だと藤堂は思う。
「いやはや。予定は未定ってことですね」
さすがの私もここまでは計算できませんでしたよ。
お恥ずかしいと頭に手をやる時田。
いやあの二人が予想外すぎただけだろ心の中で藤堂はつっこんだ
規格外すぎたその二人は楽しそうに談笑している。
こちらの苦労も知らないで・・・・・
まぁそれがこちらのお仕事ですけど〜
突発のアクシデントにもきちんと対応できるよう。そんな人間が司会者に選ばれたのだから当然時田は図太かった。
「ふ。このツケはとーーーーーっぜん自分たちで払ってもらいますよ」
時田は新たに付け加えたルールを思い返しほくそえんだ。
基本的にこの大会は司会者が中心である。
校長や、主催者が出張ると、どうしても自分の学校の生徒をひいきしたくなるためだ。
例え「私は贔屓などしないっ」と確固たる意思の人間がついたとしても、周りの人間から文句がでる。
ということで大体関係ない人間がこの任につく。
今年選ばれた時田は、こう見えて教授たちの信任が厚い人間である。
数多いる大学生から一人を選ぶとき、時田は思ったよりすんなり選出された。
その要因の一つにゲーム構成能力。二つ目に臨機応変が得意なこと。もひとつ言えば・・・・・
持ってきたノートパソコンをカチャリと開き。
「機械に強いこと・・・・ですかね」
一人ごちるとキーを叩き始めた。
さぁエンディングへと一直線の最後のゲームの始まりですよ。
「さてと。こんなもんでしょう。設定しなおすのに少々時間を食ってしまいましたが。藤堂皆さんは集まりましたか?」
「ああ」
あまり会話が得意でないのは藤堂の特徴。
口下手でもあり、くだらない会話がうっとおしいというのもある。
なんだかんだ言っても時田は例外といえよう。
何故例外なのかは藤堂本人にも良くわからないが。
たぶん馬が合う。
気兼ねしない。
本当に近づいて欲しくないときはきちんと察してくれる。
だから傍にいても「まぁいいか」と思うのだろうとうっすら感じている。
「最後ですね」
「ああ」
「なんだか感慨深い気分ですよ」
「俺はほっとしてるが」
ようやく開放されると。
「何事も無く終わるといいですけどね。またアクシデントが起こったりして・・・」
「・・・・・・」
「なんかフォローしてくださいよ。言ってて怖くなってきたんですから」
「すまん」
否定できなくて思わず藤堂は謝った。
あの規格外がいる限り、終わるまで二人に安息は無いのだ。
20組。40名が顔をそろえる最後の決戦。
いや、正確には最後から二つ目。
これで残るのはわずか3組である。
最後の締めはもちろん即決で決まるようにしてある。
ここで間違いなく時間を食うだろうことは確かだったから時間の都合上そうした。
それにちょっと面白いと思ったし。
「では説明しますよ。先にここで宣言しておきます。残りのゲームは後二つです。今回のゲームで3組へと絞られます。大いに頑張ってください。」
どよめく。
当初の予定では50組中3組だったのだからかなり勝率は高いのだ。
礼はそこのトンデモナイ奴らに言ってくださいね。
心の中でつぶやき
子供のいるグループへと目をやった。
子供を取り巻くのは相方と相方の友人だろう。
時田と藤堂の目が半眼になる。
そうそこにいるメンバーは・・・・・
類ともなのだろう。
帽子を目深にかぶった男と慈愛に満ちた微笑みを浮かべる少年のコンビ。あそこはハチマキを7本とってきた
ハンサム男と女の子のコンビ。ここは5本。
そして題2ゲームで不正を明かした男と小柄でいながらとんでもないスピードで走っていた少年のコンビ。
ここは・・・・・・4本だったな確か。
なんと言うか。
一応余裕をもってハチマキは用意していたのだ。
通過定員は50組。
だが先着順で・・・・とそういうつもりでいたのであり、決して何本も取って来いなんていった覚えはない。
あの軍団は鬼門だ・・・・・
時田は思った。
あの軍団は変だ・・・
藤堂も思った。
どちらもまさしく的を射ていると思われる。
「今回の戦いは名前のごとくバトルロワイヤルです。
トニカク勝てばいいのでーーす。
周りの人間すべてを蹴落としてゴールまでひた走ってください。」
ああ、またこの人はベラベラ言ってるよ。
慣れてきたのか誰も突っ込むことなくスルーで聞いている。
「細かいことを言うならば建物内にある「ある物」を手に入れて戻ってきてください。
時間制限はありません。」
ふむふむ。
で?あるものって何?
全員の疑問に答えるべく時田は言葉をつづける
「建物内に「ある物」についてのヒントが書かれたメモが隠されているのでまずヒントを探し出してください。」
なるほど。
そうきたか。
「もし持ってきた「ある物」がハズレの場合はここで腕立て伏せ50回してから建物内に戻ってください。あとはー何かありましたか藤堂?」
「昼食について」
「ああっそうでした。あと1時間もすればお昼の時間です。もちろんご飯は持ってきてますよね?お昼休憩はありませんので戦いの最中安全な場所でも確保して各自勝手に食べてください。」
おい。
ご飯すら安全に食えないのか。
「えーっとあとはー・・ああっそうそう。救護班はここにしかいないので、もし怪我した場合、ここまで自力で戻ってきてください」
ニコヤカに。
言ったよこの人。
相方と二人でバタンキューした場合助けはこないものと思え・・・・そういう事だ。
どちらか片方が負傷したらさっさと退避するのが賢い選択なのだろう。
「ではー今から始めまーーーすっ宝物を探せっっっバトルロワイヤルゲーーーーームっっ」
おーーーーっ
元気に腕をふりあげ時田は左手のレポート用紙に目を落とした。
「では最初に出発する組は581ばーん2301ばーん。951ばーん。4103ばーん。91ばーん」
「ハイ?」
「5組ずつ10分おきに出発です。」
はい?
「先ほどのハチマキ合戦で最後にゴールしたグループから出発。はいっ急がないとすでに1分たっちゃいましたよ。出し抜くチャンスっ逃したらもったいないでしょ」
時田の言葉に急かされたのか慌ててその5組は走り出した
呆然としたのは残された15組だ。
こんなことならさっきほどほどに手を抜いて置けばよかった・・・
そう思ったことだろう。
「ハンデ戦・・・そんなのあったか?」
ボソリとつぶやく藤堂に
「ありませんでしたよそんなもの」
にこやかに時田は答える
「おい」
「だってそうでもしないと力の差は歴然でしょう?」
だから独断で付け加えてみました。
ケロリとまぁ
「平等じゃない」
「あの二人がここにいる時点で平等の定義は破壊されてますよ」
時田は揺るぐことなく藤堂の瞳を見つめかえした。
「いいですか。勝負は楽しくなければいけません。結果がわかる勝負ほどつまらないものはありませんからね。」
「・・・・・・・・単に自分が楽しければ・・・いいんだろう」
お前の場合は。
選手のためとか、校長達のためとか、そんなことは関係ない。
ただひたすら
自分の楽しみのため。
「当たり前じゃないですか。この大会の主役は私ですよ。私を楽しませる義務は選手たちにあるんですからこうやって調節くらいしてもいいでしょう?」
「・・・・・」
なんでこんなヤツの友人をやっているのだろうか?
今まで何度と無くよぎった疑問がまた藤堂を襲った。
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