学校対抗
チョーーウルトラスーパー
バトルロワイヤル23
「ほいっと」
トンと軽く足を上げたと思えば前にいた青年が吹き飛ぶ。その足をそのままの勢いで振り下ろし今度は横の青年に回し蹴り。おもしろいほど簡単に決まる技に見ていた面々は一々感嘆する。
「さすが俺の黒羽先輩っ」
同様に戦闘しながらにも関わらずきちんと憧れの先輩の勇姿を視界にとらえていた辰巳のキラキラ瞳はどこまでも付いていきますっと物語っていた。
乾はニヤリと唇を持ち上げ満足そうだし…。
「さっき下げた株をいっきにとりかえしおったな…」
戦闘を快斗とその後輩に任せ暗号解読中の服部はそんな二人の後輩を見て疲れた笑いを浮かべた。
「あれってコナン君と離れた腹いせですよね」
「・・・・・」
白馬の確信に満ちた言葉にきっぱり頷く。あれで少しでも気分が晴れてくれればこの先楽だなぁと期待を持ちながら二人は暗号に頭をフル回転し始めた。
「なんですかこの高度なパズルはっ」
探偵と自負するだけあり根性で解き続けてきた服部、白馬。だがとうとう行き詰まったようだ。
難易度は天上を知らないとばかりに上がって行く。
たしかに癇癪を起こしたくなるほど難解になってきた。快斗ですら感嘆を現すほどの出来である。
(コナンちゃん好きそー)
覚えておいて後で教えてあーげよっと。
「こんな場合でなければ…くっっ」
「ほんまやな。急いでなければこれ以上無い楽しいパズルやっちゅーのに」
確かに今という切羽詰まった状況でなければ謎解き大好きな彼らにとって猫にマタタビ状態であっただろう。
「ねーこれってさ」
ギブアップを言い出しそうな探偵二人に今まで口を挟まなかった快斗がようやく動き出した。
仕方ない仕方ない。諦められたら大変だしー。
「こうじゃない?」
「いや、それやと……あっ」
「確かにここを動かして…出来ましたっ」
快斗のたった一言で完成をみせたパズルに呆然としてしまった二人をおいて
「ん、じゃ次いこうか」
快斗はとくに自慢するでも無く先導する。
その背中を見つめ服部はやるせない溜息をついた。
「あいつ…くどーが関わってなかったら絶対口挟まんかったで」
彼がそういうヤツである事を服部は嫌なくらいよぉぉく知っていた。
結局次からは快斗の独壇場となってしまった。
暗号作成の天才は当然解くのも天才的なのである。
「…せめてコナン君がいればっ」
探偵としての威厳が保てたのに。
くっと恨めしそうな白馬に
「や、小学1年生に負ける方が屈辱的やろ」
実際違うとは言え、他人からみればコナンは子供である。
それならば同じ年の少年に負けた方が言い訳がたつと思うのだが。
「いいえっ彼はスーパー小学生ですからっ」
「…さよけ」
ぐっと拳を握りしめる白馬にそれ以上突っ込む言葉を服部は思いつかなかった。
「ゴールっぽいよ〜」
「ようやっと着いたか。」
「もうっ途中から全然参加しなかったでしょ。へーちゃん」
考えてるフリだけの服部に気がついていたらしい快斗にジィィと恨みがまし気な視線を向けられウッとつまる。
「そ・・そんなことあらへんで・・・・・・・・・・・・・・」
「ふうん」
「・・・・・すまん」
「素直でよろし」
さて一方通風孔ではすでに疲れ果てた少年が一人いた。
先ほど哀から送られたきたメールの最後の一つ。
それがこの通風孔の地図だったのだ。
線のみという単純な図面だった上に、通風孔のつの字も書いていないため、一瞬悩んだが、元々欲しいと思っていた地図だったせいもあり、思い至ったというわけだ。
あれを用意しようと思ったことも、あれを手に入れたこともすべてが拍手ものである。
いやぁありがたい。ありがたい。
さすが灰原哀!と改めて感動してしまった。
それにしてもその図面、さっきのうちに頭に入れておいて正解だった。
とコナンはしみじみと思う。
パソコンを持って這い回るないてありえない。
重いし疲れるしぜってーー壊す。←自信満々。むしろ重過ぎて破壊衝動に駆られるのかもしれない。
って事でただいまあれは荷物持ちに任せてある(←当然)
しっかし
「通風孔が掃除されてただけでもめっけもんだな」
そうでなければ今頃コナンの服は真っ黒だろう。
っていうか通風孔に入った瞬間
「やっぱり僕そっちに行く〜」
と快斗達についていっただろう(笑)
こればかしは、きっと小学生が参加するからと予測して掃除しておいてくれたのだろうあのつるっぱげ(←やっぱり名前を覚えていない)に感謝しよう。
そんなことをつらつら考えている間にようやく目的地に到着した。
疲れた・・・まさか通風口でほふく前進するとは予想もしてなかった為(してたら凄い)無駄な体力を使った気分のコナン。
あー明日は確実に筋肉痛だな。っつかすでに今から腕と足がピキピキいってやがる・・・。
若いしょ・う・こ♪なんて言っている場合じゃないが、工藤新一ならもう少し体力があったのに、と悔しく思ってしまう。
「ま、あの体じゃここに入れねぇけどな」
苦笑とともに吐き出し、コナンはよっこらしょと背負っていたリュックを手元に下ろした。
「さてと」
下を覗けば大量のヤロー共。しかも縛り上げられてるし。
あーすっげ見てて楽しくない光景。
ひいふうみいと人数を数えて捕虜メンバー30人きっちりいる事を確かめたコナンは今度は見張りの数を数える。
見える位置に5人。
うーん。
小さく首を傾げる。
通風孔の編目から目を覗かせているだけなので確定はできない。
それから音を立てないように編目から距離をとるとリュックから手のひらサイズの丸いものを取り出した。
(ま、これでなんとかなるだろ)
リュックをもう一度背負い直し、そっと網を取り外す。
どれだけ丁寧に触ろうとカタンと鳴るのは仕方ない。
気付かれないように祈りながら僅かな隙間を開け、そこからさっき取り出した丸いものをおもむろに落とした。
ポトン。
軽い落下音がしたのと同時に白い煙が発生する。それは決して狭くはない室内に数秒で充満した。
煙発生から2分経過。腕時計でそれだけ確認したコナンは口を覆っていた両手をはずし止めていた呼吸を再開した。
素敵な肺活量である。
スーハーと何度か空気の入れ替えをしてから、下を覗き全滅しているのを確認。
「いやー簡単簡単」
わずかな隙間しか開けていなかった網を完全に取り去り、伸縮自在のサスペンダーを服から取り外す。
網に片側を結びつけ、穴から落ちない位置に網を固定しておくとコナンはもう片方を手にゆっくりサスペンダーをのばしてゆき上からスルスルと地面に降り立った。
「ふむ。6人だったか。大差なしだな。」
縛られていた人たちを解放させ、その縄で見張りの人間を縛りあげる。
なんとも単純で簡単な作業だった。
乱暴に扱われたにも関わらず36人の男たちは起きる気配すらみせない。
(油断しすぎだな。所詮素人ってところから)
普通、玄人でもあんなに狭い通風孔からそんなものを投下されるなんて予想しまい。
「さて。」
それだけ終えるとパンパンと身体中の埃を払い落とす。
「あーこれだけはハゲにほんっっと感謝」
掃除しといてくれてありがとー。
普通毎日掃除された学校の廊下ですらほふく前進したら真っ黒になるであろう服。
なのにほとんど被害なし。
これは相当に念入りに掃除してくれたようだ。
っていうかどうやって掃除したんだこんな狭いところ?
そんな激しい疑問はポーーンとどっかに投げ飛ばし、コナンは床にコロリと転がる丸い物体をひろいあげた。
後で警察に見つかるとめんどーだから証拠隠滅である。
「しっかし凄い効き目だなこの灰原お手製催眠弾。」
なんだか怖い響きを持った武器を片手にコナンは複雑怪奇な鼻歌交じりに手近なゲーム参加者の一人の頬をギューっと抓りあげた。
「早く起きろー。さっさと俺は帰りてぇんだー」
自分が眠らせといて素晴らしい言い草である。
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