学校対抗
     チョーーウルトラスーパー
                バトルロワイヤル24


「ん・・・・」
ふいに目が覚めた瞬間。
まず感じたのは頬の痛み。

ずきずき痛むその頬に手をやり眉を寄せる。

一体何が?
内心首をかしげながら触れた床の感触にまたもや謎が増える。
なんでこんな硬い床に寝転がってるんだ俺?

記憶をさかのぼってみて、ようやく気が付いた。
「そうだ俺変なヤツラにつかまって・・・・・って」

「ようやく目が覚めたみたいだね」
勢いよく上半身を起こしたおれは目の前で覗き込むようにしていた小さな子供姿に心臓が壊れそうなほどビビッた。

「うわぁぁぁっ」

その叫び声に反応するように、周囲からなにやらうめき声が上がった。
「な・・なんだ?」
周りには自分と同じように転がる男ども。

「おーいっ川合っ。無事かー?」
「あー?・・・・るせぇっもう少し寝かせろ・・・」
「や、そんな状況じゃねぇって。」
「・・・・って・・え?なんでお前がここに・・・」
真横に寝転がっていた相棒をゆさぶれば寝ぼけた反応。
こいつ実は寝起き悪いんだなぁ。なんて新発見をしつつも俺はとにかく仲間を求めたかった。

この状況。
つかまっていたはずの自分達が寝転び、捕まえていたはずの青年達が縄で縛られている。
更には目が覚めたときに起きていたのは目の前の子供だけ。


あんまり考えたくない現状の答えが浮かんでくるのだ・・・。
頼むからこういう現実的でない状況は1人では対面したくない。

故意に視界からはずそうとした小さな子供の姿。
小学生だというその子供は明らかに今大会の参加者である。
思っていたよりも小さく華奢なその体。
大きなめがね。
整った顔立ち。

そしてまっすぐな青い瞳。

こいつを敵視していた自分を思い出すとなんだか懺悔したくなるくらいに綺麗な瞳と出会ってしまって居た堪れない気分だ。

「木島?その子供は?」
「なんか起きたら目の前にいた」
「・・・・それって・・・」
どうやら川合にも分かってしまったようだ。
「他に目が覚めてた奴はいなかったか?」
「俺が1番・・ってかどうやらこの子供に起こされたようだ」
頬をつねって、な。

「わーお」
素敵な感想ありがとよ相棒。

「そろそろ僕の言葉も聴いて欲しいんだけどいいかなお兄さん達」
それまで大人しく黙っていた子供はニッコリと愛らしい微笑みを浮かべようやく口を開いた。

だが・・・・俺は気付いてしまった。
その目がまったく笑っていないことに。

「「オネガイシマス・・・」」







「ようこそ」
にこやかに青年は歓迎を示した。
ゴールの部屋にはたった1人しかいなかった。
てっきり大量の仲間を待ち構えさせていると思っていた挑戦者の面々は拍子抜けしたような顔で自分達と同年代くらいの青年を見つめた。

こいつが…犯罪者?

疑問に思うほど青年は普通で、むしろ好青年とすら言える。
だが彼はやはり悪の人なのだ。

「まさかこんなに早くたどり着くとはね」

嬉しい誤算だと青年は笑う。爽やかだが、それだけに恐怖を与える声で。
なんとなく納得してしまった。

ああ。これが犯罪者という生き物なのだと。

「能書きはどーでもええからさっさと人質解放せえ」
「おや。まだ問題は残ってるよ。これが最後の問題」

一見柔和な青年はそっとパソコンの画面を向けてみせた。

「…これはっっ」

探偵2人+怪盗はそれを見た瞬間内心即座にお手上げを確信していた。
無理や。
こんなもの解けるわけありませんっ。
むずかしーいっ。なにこれ信じらんなぁい。3日くらいあればとける…かも?
3者3様に。それでも共通しているのは『これは凄いっ』
という感嘆の思い。
そしてここにコナンがいればっと期待する思い。

あまりに完璧な暗号とパスルの組み合わせに見惚れてしまうほどだ。


「これ作ったのあなたですか?素晴らしい暗号ですよ」
KIDに勝るとも劣らない。白馬がこれ以上ない称賛をおくる。
だがしかしそんな素直な白馬の感想に青年は自嘲気味な笑みを浮かべた。

「あいにくと僕もただの挑戦者でね。」
「では一体誰が?」
青年は何故か思いを馳せるように空を見上げた。
なんとなく誰もがそこを見上げてみたがあるのはボロっちい天井ばかり。

あ…染み…。

なんて思いつつ言葉を待っていた快斗。


「これはとあるホームページに掲載されていたものでね。」

コンと画面を叩いてみせる。

そしておもむろに語りだした。



「そう、あれは…」






「このパズルを作ったのは誰だ?」
それはかつて自分が言った言葉だ。


初めての衝撃だった。
この自分が、2日もかけて挑んでそれでもまだ解けない難敵。

この自分が・・・。


別に己を過信しているわけじゃあない。
他の自分レベルの人間も同様に思うことだろう。


ヒントが足りないわけじゃない。
きちんと考えれば解けるのだ。
きちんと。
最高の頭脳を回転させれば。


意地が悪くて。
狡猾で。

製作者の性格がそのまま投与されたような

でも目を見張るくらいに高潔なソレ。

パズラーにとっては喉から手が出るくらい高度なパズル。


こんなのに2日も貫徹している己がバカだと自分で思うくらい嵌る。



そのサイトを見つけたのは偶然だった。
パズルサイトで知りあった仲間から突然にこれでもかっというくらいに勧められたのだ。

『2日前にできたサイトなんだけど行けっ。今すぐ行けっ。絶対後悔はさせないから行けっ』

いつも冷静沈着なメールをするヤツだったから驚いた。
何事だ?
この男(合ったこと無いからホントかは知らないが)が「行け」と言った理由は分からないまでもまぁ試しにと思った。

行ったら嵌った。
即座に礼の返信メールを打って、更に知り合いのパズラーにメールしまくった。
この楽しさは共有するべきだから。


一日に一つ。
更新されるそれはある日突然パタリと途絶えた。

どれだけ俺たちが嘆いたことだろうか。

サイトには掲示板も、メールアドレスも掲示されていなかった。
連絡のとりようがない。
カウンターすら置いていないのだからもしかするとサイトの管理人が本当に自分の趣味だけでやっていたのかもしれない。


そしてついに閉鎖。
なんてことだ。
まだ最後のパズルの解答が出ていないというのに。

せめてそれだけでも出してから閉鎖しろよ。

この憤り分かって欲しい。








「ってことでわざわざあのサイトの管理人割り出したんだ。探しに行ってみればこれまた何だかよくわからない展開」

肩をすくめる男に快斗はなんだかどんどんと虚ろな瞳になっていった。
「えーっと。どんな展開?」

「そこの家のジジイにプリントアウトしたあのパズルみせて『これ作ったやつはいるか?』」

「いないって言われた?」

「そうだ。」

その後その親父は悲しそうな顔で指を三本立てて突きつけた。

三つだけ。
三つだけ質問を受け付けよう。
うう。と哀しみに耐えているようなしぐさでそんな事を言う。
・・・うさんくさい。

えらく芝居がかったその仕草が癇に障ったが「まぁ、いい」と思いなおした。
「清ーーーきよーーーーー」
と、突然めのまえの親父は叫びだした。
その声に家の奥から若い男が走ってきた。

「なんだよとーちゃん・・・って誰その人。」
「この人がこのパズルの製作者について3つ質問をしたいそうだ」
「3つ?」
限定?
不思議そうな息子に
「うむ。3つで十分だそうだ」

おい。お前がかってに条件つけたくせに何いってんだ。


「えーっとソレ作った子は今はいないんですけど。」
「ああ。聞いている。一つ目。そいつは今どこにいる」
「・・・・すみません。あいにく僕たちは知らされていないんです」

悲しげな瞳。
その表情はそこの親父より信頼にたりた。

「じゃあ2つめ。そいつの本名は」
名前は?と聞かずに本名を問うたのは単純にハンドルネームではない本名を・・と思ってのこと。ネットの住人には普通の質問の仕方だった。
そして答えは簡単に出るはずの・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

申し訳なさそうな顔。
おい。名前すらも分からないっていうのか?

「すみません。お役に立てなくて」

ホントにそいつは実在していたのか?
まさか本当はこれ作ったのそこの親父だとか言わないだろうな?


横でなんでかスリッパで素振りなんかしだした親父を横目でジトリと睨みつける。
暇なら家ん中引っ込んでろ


「もう一つは?」
「・・・・」

なんかあるか?
名前も居場所もわからなくっちゃどうしようもないだろう?

そうだ一つとても気になっていたことがあった


「そいつの職業は?」


その質問に隣の親父は動きを止め。
清と呼ばれた青年は空を見上げた。

な、なんだ?
その反応は。




「あの子の職業は」


ポツリとつぶやき、そして顔をこちらに戻しヒタと瞳を見つめてくる。

そうして


「探偵」




予想外の言葉を述べられた。

研究者だろうと仲間内で噂していた。
それが探偵?

そうか。そんな職業が世の中にあったんだ。
というか、実在していたんだ・・と不思議と感心してしまった。


「有名なのか?」
「さぁ?僕は聞いたことないけど・・・」

「こらこらこらこらっっ質問は終了だっ」
「何で父ちゃんが決めてんだ?この人が聞きたいならいいじゃないか」
「いーーやっ。あの子の事はあんまり人様に教えるのはもったいないっ」
「・・・・・・」
「よって三つと制限させていただいたっっ」
「とーーーちゃんーーーーー」

親父が持っていたスリッパを奪うと勢いよく殴りかかる。

「ふ。甘いぞ清っ。」
「父ちゃんも甘いなっ」

真剣白刃取りをしようとした親父は急激に変化したスリッパの軌道に勢いよく後ろへ飛んだ。

「卑怯じゃないかっ年寄りに何するんだっ」
「こんなときだけ年寄りぶんないでくれませんかぁぁぁ」

たぁぁぁぁっ
とスリッパ。

どああああ。
とよける親父。


二人の力は均衡していた。

「・・・・・・・・・・・・」


たぶん



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最初の予定通り懐かしの父とうじょーーう!
母は出せませんでしたが満足です(笑)
縁真より


05.8.1