学校対抗
チョーーウルトラスーパー
バトルロワイヤル26
「な・・にを・・・」
言葉がまともに出てこない。
完全な恐怖。
今ここにいない大切な人。
大切な人がいる方向から聞こえる爆発音。
それは―――――
「あ・・・・・」
「黒羽っ」
「黒羽君っ」
「快斗!?」
「「黒羽先輩?」」
突然ガタガタ震えだした快斗に周りは驚愕した。
「ど・・しよ・・・また・・・・・」
あいつを失うかもしれない。
もしかするともう会えなくなるかも・・・・。
息が・・・・出来ない・・・。
「黒羽っあいつは無事や。そんな事でくたばるような可愛えー奴やないっ。あいつより先におまえがくたばってどないするんやっ」
服部が必至に快斗の肩を掴んでゆする。
「そうですよ。コナン君はスーパー小学生なんですから激しい爆撃の中笑顔でサッカーボールを蹴り続けるような人なんですっ余裕でここまで来ますよ」
それはどうかと・・な白馬の心からの言葉に服部は思わず快斗を放り出して白馬に向き直った。
「や、一応それは否定しとくで」
「なんですか?あなたより僕の方がコナン君について詳しいんですよ。」
むむんっとこんな場合じゃないのに胸をはって対抗する白馬。
それに呆れながらも服部も抗議を示した。
「あの坊主の親友は俺や。ポッと出のホームズフリークがでしゃばらんとき」
相棒や恋人という立場はそこのヤローに譲ったがこれだけは譲れない。
服部としては聞き捨てならない言葉であった。
「僕は探偵として彼との友情が・・・」
言いかけてようやく白馬ははっとした。
「そういえばうっかり流してましたがもしやあなたも探偵・・・ですか?」
思わず誰もが一瞬呆れた。
さっきまで言ってたじゃん。聞いてなかったのあんた?
もちろん服部も当然ながら呻いた。・・・というか闘争心が一気に萎えた。
見事な天然ッぷりである。
「・・・・・うわ。ごっつ今更やな。あー・・・服部平次やよろしゅう」
「はぁ。白馬探ですよろしくお願いします。・・・えーっとそれでもしやコナン君ともお知り合いで?」
いきなり和やかに自己紹介を始める探偵たち。
おいおいそこで蹲ってる男はどーでもいいのか?
なんて疑問はきっと天然な白馬の頭には残っていなさそうだし、服部はあえて未だトラウマ引きずっている困ったちゃんから目をそむけているような気もする(笑)
「せやから言うてるやろ。俺はあいつの親友や、て」
そして困っちゃんを置き去りに2人の会話は続行中。
なんだかうわぁぁなんてうめき声を出すのがはばかられる雰囲気になってきた。
「すみません。てっきり知らないくせにコナン君を語るなんて悪人め・・と思ってました」
「あいつ語ったら悪人かいな」
妙に和やか。穏やか。
ほのぼの。
「じゃあ改めてどうぞよろしくお願いしますね服部君」
「ああ、よろしゅうな白馬」
手を握り合う探偵たち・・・なぜだろう。
こんなに美しい光景なのに・・・・
場違いだと感じるのは。
「あー・・俺無視されてる?もうちょっと構って欲しいんですけど・・・そこで暢気に友情芽生えさせないでくださいよー」
いや、この場合場違いなのは蹲っている快斗のほうだろうか?←(笑)
そんなこんなで感傷に浸っている暇もなく快斗は現実に呼び戻されてしまった。
なにやらほのぼのとコナンについて語り合いだした2人の探偵たちのせいで。
「あの時の小僧は凄かったでー。」
「いえっもっと凄いこともありましたよっっ」
「おおっそうや、そういえばこんな事もっっっ」
「あのぉ俺も混ざりたいですコナンちゃんトーク・・・・・」
おずおずと快斗が願いでたその言葉は
「あ?なんやて?トラウマってる人間らしくそこで大人しく震えとけや」
「そうですよ。無理することはありませんからね」
笑顔で却下された。
「うわ・・皮肉?これ皮肉だよね?」
約一名本気で労わっている気がするがむしろそちらの方がダメージがくる(笑)
そりゃトラウマですよーだ。
自分で気づいてるし、どうしようも無いことも分かってる。
震えは今もまだ止まってない。
でもさ、信じないと・・・・コナンちゃんに怒られちゃうし。←重要らしい
もう約束絶対破らないってそう言ってくれたから。
信じるって俺も誓ったから・・・。
「へーきだもん。コナンちゃんはすぐに来ますー。ケロリとした顔でさ、下手したら何か手土産持参でねっ」
指の先が震えてるのにそれでも自信満々に口にする。
言っているうちに、本当にそんな気がしてくるから不思議だ。
あーコナンちゃんならやるよね。
うんうん。
ヘラリと笑ってみせて。
不敵な笑みを浮かべる小さな子供を思い浮かべる。
それだけで、心が満たされて、自然と笑みが浮かんでくるし、強張った体がほぐされる。
突き上げる衝動。
世界中に叫びたくて仕方ない。
「だって俺のコナンちゃんは世界1だもん!!」
その声にダダン!!という激しい音がかぶさった。
「だぁぁぁれがお前のだってぇぇぇ?」
通風孔から来ると思われた小さなお子様は、行儀悪く扉を蹴破り登場した。
「っつか・・・扉壊れてねぇか乾・・・?」
「見ないふりしとけ」
完全破壊された扉はお子様怒りパワー炸裂でキック力増強シューズの強で蹴られたサッカーボールの結果である。
決して人様には向けてはならない威力の武器であることを快斗はしみじみ確認してしまった。
「あー・・・派手な登場やな」
「やることが一味違いますよね」
呆れた服部と感心している白馬。
後は誰もが呆然としている中、堂々登場の江戸川コナンは両手で抱えていた大きな荷物を快斗に持たせ、
「コナンちゃん。無事でなにより〜」
「トラウマは?」
「だいじょーぶみたい♪」
「ふうん」
荷物の重みと共に小さく囁かれた言葉。
多分心配してくれたのだろう。
そむけた顔がほっと緩むのを快斗は見逃さなかった。
「で?」
「問題はあのパソコンのやつ。んでもって今回の騒動の犯人はあれね」
あれ呼ばわりされた青年はその声に弾かれるように扉の残骸から視線を動かした。
あまりの派手な登場に度肝を抜かれていたらしい(笑)
「君が・・・人質を解放したと・・・?」
モニターで見ていたより小さいように感じる。
「あ、うん。そろそろ外に着いてると思うけど?」
小首を傾げ、ニッコリとお子様スマイルで対応するコナン。
やはりこんな子供が?と思ってしまっても仕方あるまい。
「そうそう。僕お兄さんにヒッジョーーに文句があるんだけど」
「え?」
パンっと小さな紅葉のお手々を叩いてコナンはニィィィッコリ笑う。
「通風孔ほふく全身しても汚れなかったってのに、さっきの爆発のせいで煤がねぇ・・・この服にたいっっりょーーに付いちゃってこの有様なんだ。とっても不愉快なんだけど?」
確かにコナンの服は汚れていた。
顔もところどころ黒い。
てっきり通風孔の汚れと思っていた快斗達はコナンが爆発に巻き込まれ事を知った。
そしてあの扉破壊はその怒りから来ていることを知ってしまった。
「ちょっとコナンちゃん怪我は?」
「無い。かすり傷すら無いから安心しろ。手近な人影に隠れておいたからな」
ふんっと胸を張って言い切った人としてどうかというお言葉。
ちなみにこの人影というのは縛り上げた犯人達である。
「さすがっ。」
ちなみに言わせてもらえば、コナンは最初通風孔で直にここへ来るつもりだったが電話の最中で考えを変え、先に2つ隣の部屋へ、とあるブツをゲットしに行っていた。
そしてそこから戻ってくればいきなりの爆発。
爆破現場は通風孔のどこか。
もし寄り道をせずあの中を這っていたら間違いなく爆発に巻き込まれていただろうコナン。相変わらずの悪運である。
通風孔からもれでた爆風によりその部屋に縛り上げていた青年達は少々怪我を負ったりした。
そんな彼らの影にヒョッコリ隠れていたおかげでコナンはこの通り汚れ程度の被害で済んだというわけだ。
だがしかし、直通の通風孔が使えなくなってしまったせいで遠回りの廊下を使ってこの場までたどりつくというめんどくさいことをさせられた事もお怒りの原因の1つかもしれない。
「ったく誰がこの服洗うと思ってんだ」
「うちのお母様・・・でしょ?」
「そうだっおばさんに迷惑がかかるだろうがっっ」
「・・・・コナンちゃんってさー・・・うちの母さんほんっと大好きだよねぇ」
母に対する愛の10分の1でもいいから分けて欲しいと思う快斗。
「うちの母さんがあれだからな。母親というものに飢えてんだ俺はっ」
なんだか微妙に哀れな理由を叫ばれた気がする。
そしてアレな母を知っている快斗は。
(あーなんか納得。)
してしまうのである。
コナンちゃんは今始めて世間一般の母親を満喫しているわけだ。
朝おきたらご飯があって。
服汚したら洗ってくれて。
寝坊したら叱ってくれて。
そんななにげない事をしてくれる存在を。
そんでもってきっと・・・俺の母さんだから。
・・ってうぬぼれかな。
でもきっとそうだと思うから。
快斗は思わずヘラリと笑ってしまう。
「だからコナンちゃん好きーー」
「は?」
1人脳内で幸せ完結した快斗の思考を読み取れるはずもなくコナンはいきなり抱きついてきた男を不振な目で見下ろした。
「まぁとりあえず。あんたがこの訳のわかんねぇゲームの中心人物で、そんでもって最後のボスってわけだな?」
「・・・・まぁそうだね」
腰に見てくれはなかなか美形であるはずの青年を引っ付けたままの子供にいきなり尋ねられ、リーダーの青年は一瞬言葉に詰まった。←仕方ないって
「で?その最後の問題とけたら大人しく警察に捕まってくれるわけ?」
「そうだね考えなくはないよ」
あまり信用性のない笑顔でそう言えるのは見事な度胸であろう。
これだけの人数の敵を相手に(1人はドアまで破壊した怪しい子供(笑))たった1人の立場でサラリとうそ臭い言葉を口にしてしまうとは。
「なんにせよ、別に解かないで強制的に刑事さんに突き出しても僕は全く気にもしないんだけどね、気にしてるのは」
とコナンは背後を振り返り据わった目で2人の探偵を見た。
「平次兄ちゃんと探兄ちゃんみたいだね」
「い・・いや。その、な。やっぱりスッキリ解決したやろ?」
「そうですよコナン君っ。相手を完璧に打ち負かしてから逮捕。それでこそ完璧な探偵というものですっ」
「僕は完璧じゃなくてもいいからさっさと帰って寝たいけどね」
「・・・・コナンちゃんに一票」
辛辣な言葉にそっと快斗が便乗する。
そんなやる気の無い二人に白馬はむんっとこぶしを握り声をあげた。
「探偵たるもの謎があったら解かなくてはなりませんっっ」
じゃぁ自分で解けよ。
もう何度目だろうって言葉をコナンと快斗は同時に胸に抱いた。
小説部屋 次へ
|