学校対抗
チョーーウルトラスーパー
バトルロワイヤル27
「まぁ・・これで挑戦者は揃ったわけだ。そろそろこれを解いてくれるかな探偵君たち」
無理矢理話題転換した気がするが多分彼は今、自分のペースを取り戻すべく頑張っているのだ。
たった1人の幼児にかき乱されてしまったのは予想外のことだろう。
最後の1人が揃ってからがボス戦だ。
そう言ったのだから今からが本当の勝負の始まりなのだろう。
たかが1人、こんなちびっ子が増えた程度で何が変わるというんだ?
なんて3分前までコナンを知る探偵、怪盗コンビ以外は思っていた。だが今ならなんとなく分かる。
この1人が重要で。
こいつさえいなければ・・・・きっと後で犯人はそう思うのでは・・・・と。
そんな空気を感じつつも青年はあくまでこの状況を楽しんでいた。
まるで大好きなゲームで遊んでいるかのような気楽な態度。
「さぁ。解いてもらおうか。誰が代表になる?別に全員で挑んでもいいけど。」
あごをクイッとあげ口元をもちあげる。完全にバカにした体勢のそいつに
快斗も、平次も、白馬も。
勝算を確信した笑みを浮かべた。
パズルの作成者を知っている快斗はともかく平次と白馬の「コナンならできる」の思い込みは凄いものである。
三人は迷うことなく1人の人間を心に浮かべた。
「さぁ誰にする」
男の言葉に一斉に三人が顔を動かした。
「どうするコナンちゃん」
「どうするくどー」
「どうしますかコナン君」
「・・・・・・・・・・・・・」
大の男が何故子供に聞く?
とはここにいる他の人間すべてが思ったことであろう。
「はは。まさかその子供が司令塔とか言うんじゃないだろうね」
そこまでレベルが低いとは思いたくないんだけどな。
「名探偵と名のつくやからが三人もそろって何だっていうんだ?」
あれ?なんで知ってんだ?
コナンと快斗そして服部が内心眉を寄せる。
「ねぇ。ロンドン帰りの白馬探。西の高校生探偵、服部平次。そして・・・・・・・・・」
もう一人誰の名を呼ぶ気だ?
「工藤新一」
ひたりと見据えられたその視線の先は
「え?うそっ違うっ違うっ勘違い。俺、工藤新一じゃないって。」
「その顔は工藤新一だ」
「あー似てるよねーよく言われる」
思わずホッと胸をなでおろした三人
今まで確かに2人の高校生探偵より活躍していたのは快斗である。
そう考えると快斗を工藤新一と間違えても仕方ないだろう。
「もう1人の探偵はコナン君ですよ。コナン君はスーパー小学生なんです。僕達が適うはずないじゃないですか」
白馬は朗らかにコナンを示してくださった。
っていうか言ってて大分情けなくないか?と思いつつコナンは良くわからないが白馬に背中を押されクイズに挑むことにした。
「平次兄ちゃんも探兄ちゃんも快斗兄ちゃんも解けなかったパズルなんだよね?僕すっごく興味あるな。でも3人が解けなかったんなら僕でも難しいかも・・・」
今更取り繕ってなんになる?なんて快斗の思いをよそにコナンはニコニコと胡散臭い言葉を並べ立てる。
「見るだけでも見せてね」
可愛く小首をかしげながら尋ねているが、もしかすると彼はお怒りマックスなのかもしれない。もうさっさと帰りたいから話をさくさく進めるべくがんばっているのかもしれない。
そう考えると、この後のコナンの心情を思い快斗は胸をドキドキさせた。
「パズルってこれだよね?」
パソコン画面を覗き込むコナン。
次の瞬間、頭が真っ白になった。
表情はカッチリ凍り、息すらも止まった。
一緒に鼓動も止まったかもしれない。
それくらいの驚愕がコナンの全神経に走った。
最後の最後でこれかよ!!!!
「・・・・・」
その顔はみるみる青ざめ。
(あーコナンちゃん衝撃中ねー)
内心同情してしまう快斗。
「・・なぁ。解けねーんじゃねぇの?」
「それはそうだろう。黒羽先輩でも不可能だったのだからな。」
「そーだよね。コナン君あんなに小さいのに3人して期待しちゃ可哀想だよねー」
後輩と幼なじみの声を背に快斗はニンマリ笑い出したくなる頬をギュッと引き締めるのに苦労した。
(解けるって。だってあれ、その噂の少年が作った奴だしねぇ)
誰もが解けない謎を作り出してしまうなんてさすが名探偵。
(はーこんなん作っちゃうんだもんなー。記憶が無くても新一は新一って事か)
変わらない探究心の塊の探偵に思わず苦笑が漏れ出る快斗。
「この数値をここに嵌め込み・・・・・」
いきなり始まった解説。
その声は思ったよりも冷静で・・てか機械のように抑揚の無いしゃべり方はもしかすると激しい動揺を如実に表しているのかもしれない。
「・・・そうして出てきた素数を更に・・・」
初めは呆然としていた青年はハッと我に返ると真剣に耳を傾け始めた。
願い続けていた答えが出るかもしれないのだ。
聞き逃すわけにはいかない。
それに子供の解説はここまでは自分と同じであり、信憑性がもてる。
「で、これが答えだ」
理路整然とした解説はその場にいた誰もが納得してしまうくらい見事で
「はーなるほどぉ」
などと良く解っていない者までコクコク頷いてしまったりする。
「うーん・・・何故か深く納得したんだけどなんでだ?」
「説明されて解ったつもりになった数式のようなもんだろ」
もう1度説いて見ようとしたら、やっぱりさっぱり解らない。
だがその瞬間は間違いなく理解した気分になっている。
「乾、お前さー」
「ん?」
「解ったか?」
「悔しいが聞いてなるほど、とは思った。あの子供の説明はうますぎる。教師に向いているな」
「っつか探偵なんだろ」
「・・・・・なるほど。解説能力は探偵に必要な術なのか・・・」
「納得してるよこいつ」
あのちびっ子が探偵である。なんて普通誰が信じる?
だが今ならこの場の誰もが信じてしまいそうな雰囲気だ。
辰巳は小さな子供に目を移した。
誰もがわからなかった謎をほんの数分・・見ただけでサラリと解いてしまった。
尊敬する先輩ですら投げ出したというのに。
「・・・・・そうか!僕はここで行き詰っていたのかっっっ」
もしかすると問題自体が欠陥なのでは?と疑ったことすらある。
ここまで解けないということは答えは「無い」のではと思ったことすら。
なのに、今なら言える。
生涯でお目にかかれることすら奇跡なくらいの完璧なパズル。
青年は小さな子供の解説どおりもう1度自分で最初から問題を解いてみる。
「ここに最後のピースを当てはめて。」
そして出来上がる一輪の花。
コナンが胸に秘めている。大切な大切な花。
「答えは『蘭』の花・・・・」
忘れられなかった記憶のかけら。
(ちょっと嫉妬しちゃうよねぇ)
幼なじみなのだから仕方ないとはいえ、快斗はこの瞬間だけ毛利蘭を妬ましく思う心は止められなかった。
「ばぁろぉ。お前に会ってからいろいろ思い出したんだよ。それまで蘭の名前だって思い出さなかったぜ。お前が記憶のかけらを運んでくれたんだよ。」
んな顔すんな。
いつの間にか隣にやってきたコナンが快斗にしか聞こえない大きさでそっと囁く。
(あー・・コナンちゃんが思わずフォローしちゃうくらいひどい顔してた俺?)
ポーカーフェイスはどこ行ったのよ?とちょっぴり自己嫌悪しつつも嬉しさが止まらない。
言われた内容と、心配してくれたコナンの気持ちが。
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