学校対抗
チョーーウルトラスーパー
バトルロワイヤル28
興奮が覚めてしまえば沸き上がる疑問の渦。
視界のど真ん中に存在する小さな存在。
彼はただ眉を寄せ先ほど解いた問題を見つめている。
解いた自分を誇るでもなく、むしろ不快そうな顔で。
感動と、もやもやの消えた爽快感と、あまりの素晴らしいパズルに対する高揚感。
それらを掻き消すほどの存在にようやく気づいた青年は小さく息を呑み、
「君はいったい・・・」
何者なんだ。
新たな難問をぽつりと呟いた。
それにコナンが言えるのは1つだけ。
ゆっくり瞬きをしてそれから
青い瞳を微かも揺らさず、まっすぐまっすぐ見つめて不敵な笑みでいつもの言葉。
「江戸川コナン。・・・探偵さ」
さんざん白馬達に喚かれたから今更な気がするとは言え、それでも大人びた表情と落ち着いた声音はかっこよすぎた。
「どういう理由があるにしても貴方が犯罪を犯した事に変わりはありません。大人しく罪を償う義務があります。」←自分が原因かとちょっと疑い中(笑)
他の誰が言っても反発しか出てこない言葉をこの子供が口にすると不思議と酷くいたたまれない気分を抱かせる。
その真っ直ぐな瞳のせいだろうか。
さっきのパズルのように完璧な感動すら抱かせるそんな存在感のせいだろうか。
フイに青年は思い出した。
あの変な親父と血のつながりがあるにしてはまともに育ったなと感想を持った、あの息子の言葉を。
「あの子の職業は・・・探偵」
そう。彼らは常にその存在を小さな者かのように口にしていた。
気にはかかっていたが特に重要とも思わなかった。しょせん言ってたのはただの親父とその息子だし。←まぁそうだが
だが
今、繋がった気がする。
ばかな、と。
理性が叫ぶ。
それでも
もしかすると。
期待がほとばしる。
彼が・・・
「君は・・・君の本名は?」
零れ出た声は驚くほどかすれていた。
緊張と期待で。
聞こえたのはきっと小さな子供と、傍にいた工藤新一もどき(←失礼)ぐらいだろう。
そんな言葉をうけハッと息を詰めたコナンは青年の顔を見てしまった。
よく解らないが本名が別にある事を確信した瞳。
(なんでこいつ知ってんだ?)
だが快斗を新一と間違えたくらいだから江戸川コナンと工藤新一はイコールでは結ばれていないのだろう。
それだけ解っていれば充分なのだ。←全然充分じゃありませんーーBy快斗
1秒に満たない間にそれだけ思考を回転させると、さきほどの昔話を知らないコナンは迂闊にもバッチリヒントになる言葉を口にしてしまった。
慌てて止めようとする快斗に気付かず。
ちょっと茶目っ気を出して。
「It's a top secret」
自信満々に言い切ってしまった。
迂闊者の本領発揮である。
完璧な発音とその内容に青年が驚愕の表情を浮かべ次いで歓喜を表した。
不幸中の幸いは2人の会話が背後の面々に聞こえていなかったことだろう。
快斗は間に合わなかった手の平(←口を封じる予定だったようだ)を地面にペタリとつけガックリ肩を落とした。
「どうした快斗?」
「いいえーちょっと衝撃が大きかっただけー」
なんのだ?と首を傾げたコナンにやけっぱちにカラ笑いをみせた。
「いいの。俺は今からフォローの鬼っ。」
「は?」
いきなり叫んだかと思えばポトリと何かを落とす。
快斗の袖口から落とされたそれの正体に気付いたコナンは慌て目をつむり息を止めた。
「ゲホッケホケホっっ」
なんなんだ快斗!
叫びたかったが煙直撃のコナンはそれどころでは無かった。
白い煙に紛れ動いた快斗は手拍子1つで、コナン同様涙を流しながら咳込む青年に暗示をかけた。
「今この時から遡って30分の間の記憶をすべて忘れろ。」
めったに使わない強制的な暗示。
受けた者の脳に障害が出る可能性があるから使わない技。
紅子がいれば忘れ粉貰うんだけどな。貴重すぎてくれないかもしんねーけどさ。
だが暗示にかけたのはたかが30分の逆行。それに曖昧な記憶にしたのでは無くただの封印。だからまずたいてい大丈夫だ(たぶん)
障害出たら(ちょっと)罪悪感だしなぁ。
コナンちゃんに怒られちゃうしなぁ(これ重要ねっ)
そんな事を考えながら(カッコ内がどうかと思うが)朦朧としだした青年の首に軽い首刀を落とした。
「次に目覚めた時、あんたはあいつを知らない」
警察陣に正体を問い詰めることもないだろうし、万が一シャバに戻ってきた時にコナンの元へやってくることも無い。
フウと額の汗を拭い満足そうに微笑んだ快斗の足に強烈な蹴りが入った。
「めちゃめちゃ煙いんですけどねぇーー」
恨めしそうに睨み上げるコナンの姿。
目は潤んでいて、たまにケホケホ咳をしている。
煙の一番近くにいたのだから仕方ない。
「ん?犯人逮捕のご協力感謝しますよ名探偵」
ニッコリ、夜の口調でごまかしてみたらもういっちょ、今度は容赦無い蹴りがきた。
顔には出さなかったが実はかなり痛かった。
ああ・・誰のためだと思ってるのやら・・・。全然むくわれない・・・。でもいいの。コナンちゃんの為なら俺は無償の愛を大量に発動させちゃうもんね!!
「いやービックリしたぁ。こいついきなし白煙筒投げ付けるからさ慌て気絶させちゃったよ〜」
ヘラリと漏らした快斗のセリフに誰も疑わなかった。
(ってか探偵組っっ何故頷いてんだ!)
快斗の裏の顔を知っていながらそれでいて騙されているのか、それともフリなのか。
「黒羽君が近くにいてよかったですよ。きっと僕でしたら煙に紛れて逃げられてました。」
((おいおい))
白馬お前本気かよ?
「ま、何にせよ事件解決お疲れさんやな。そういや坊主何持ってんのや?」
先程快斗に預け、脱力した瞬間に床におかれた白い箱。
「ああ、これな」
ホレ、と気軽に見せてくれたその箱の中身に思わず見てしまった者達は後悔をした。
「やーまぁ念のために持ってきたんだけどさ」
と軽く笑うコナンの姿。
それ持って結構な距離があるここまでやってきた彼に感心してしまう。
そんでもってよくぞ見つけた・・とも。
箱の中身は素人でも作れてしまうような簡単な作りの爆弾。
それは人質のいた部屋の隣の部屋に無造作に置かれていた。
火薬の量は両隣ぐらいは吹き飛ばせるくらい。
「人質・・・・殺しちゃう気だったのかな・・・」
思わず呟いた青子にコナンは肩をすくめ
「たとえ僕達がゲームに勝ったとしてもそれで脅せば逃げれるからね。」
問題が解けなればドカン。
解けても・・・・・・・爆破したかもしれない。その隙に逃げることも可能というわけだ。
「仲間もいたってのに」
「所詮浅い仲間、だろ。名前すら知らないかもしれないってくらいのさ。」
だからって・・・・。
快斗のドライな言葉に誰もが表情を歪め床に転がった青年を見下ろした。
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