学校対抗
     チョーーウルトラスーパー
                バトルロワイヤル





「どうしました江戸川君。タイムアウトになりますよー。」

審判時田の言葉にさてどうしようかと考えたとき

「審判」
スッと突然手を上げたものが約一名

「何ですか?えーっと85番乾君」
「回答中に申し訳ありませんが一つ質問をさせてもらってよろしいでしょうか?」
「はいはい。どうぞ」
「では失礼ながら。試合中に他人のボタンを押した人はどういう処分になりますか?」


おっと。
予想外のところから手助けが。
その言葉に打てば響くとばかりに時田は返した。

「もちろん証拠があれば妨害と言うことで失格ですよ」

とてもなにが楽しいんだろうってくらい、つるっぱけの審判はニコヤカに答えた。
その答えにギョッとしたのは数名
コナンの目には16人止まった。

(バカな奴らだな)
この程度分かってしかていると思ったのだが・・・
コナン・乾は内心鼻でせせら笑った。←嫌なやつらだ

「実はそこの子供にわざをざいたずらを仕掛けていた馬鹿を数名発見してしまいまして」
「だれですか?今言ってくれていいですよ」
「じゃあ遠慮なく。32番、90番、114番、115番、201番。まぁ僕が見かけたのはこの5人ですね。」

コナンの先ほどからのお手つきの多さ、自分の回答ランプが光った瞬間驚いた顔をしたコナンを審判はしっかり見ていた。
もちろん本人から苦情が来なかったし、自分自身その証拠たるものを見つけたわけではないので見て見ぬフリをしてきたが。
審判は納得するとその彼らに目を向けた

「審判。ウソですよ。そいつが俺らをハメようとしたウソですって。何でわざわざガキにちょっかいかけなきゃなんないのですか」
分厚いメガネをクイッと持ち上げ一人が言うと口々にそうだそうだと同意がとんできた。
もちろん中心となって騒いでいるのは仲間なのだろう。
それは伝染したかのように広がって行き、洗脳されたように人々が口々に
「そうだーーー」
と叫ぶ。
きっと半数以上が意味も分からず叫んでいるのだろう。
冷静に見ていたコナンは集団心理の罠って怖い・・・としみじみと思った。

会場騒然
あわや乱闘かっっっと思われたその時、
乾君が優雅に右手をあげた



「はいっ乾君っ」



藁にすがるつもりで大声で審判は叫んだ
マイクである
当然の事ながらの大音響に騒いでいた人々は口を閉じ、耳を押さえた

「み・・・耳が壊れるぅ」

すでに予想して更には対策とばかりに耳を押さえていたコナン含め傍観者たちはそれを哀れそうに見ていた。

そしてもちろん乾はそんな輩に同情心の欠片も持つはずがなく、さっくり話に入った。

「実は僕ビデオマニアでして」
チャキッと右手に8mmビデオを構えた

「証拠。ありますよ」

お見事です。これにはコナンも心から拍手。
やるじゃん乾ーーー
コナンが自分を見ていることに気づくと乾はフンっと意地の悪げな笑みをみせた。
とてもニヒルに見える。

(うーーん。快斗の後輩って感じ?)
訳の分からん賞賛(?)をすると乾はちょっと巻き戻してカメラを回してみせた。

「実は」


またきた『実は』にビクッとしたもの16名(笑)
乾君はまだまだ何かをやらかしたのか?

「ちょっと音声マイクをしかけといたもんで、そこらへんの声も入ってたりするんだよな」


何故そんなものを!!!!?

と思ったのはきっと犯人だけではなかろう。
だがコナンは知っている。
自分がズルをしないかチェックするタメの盗聴器代わりだったと言うことを。
乾にとっては予定外のことにコナンの手助けの道具へと早変わりしてしまったが、明らかにそうとしか思えない。

多分コナンの近くに潜ませてあるのだろう音声マイクの威力は絶大だった。
青ざめる青ざめる
悪巧みをしていたメンバーは真っ青だ
傍で見ていたコナンは人間の顔が赤から青に変わる様をつぶさに見てしまい
「おお」
とか何とかつぶやいた

「後でこれ提出しますね」
「ご協力ありがとう乾君。ではとりあえず最初の5人は失格と言うことで、あと小学生の彼、
江戸川君のお手つきのことですが、もちろんそのままで行きますよ。今回分と合わせてお手つき4つ。邪魔された自分が悪いと諦めてください」

時田さん容赦なしです。

敵も味方もなく、ただ中立の立場をあくまで貫くその姿はいっそ気持ちがよいほどだ。

「うん。分かった」

コナンはもちろん不服一つ述べず了承する。
それに満足気に頷くと時田はニッコリ微笑み相変わらずのノンビリしゃべりで爆弾をポトリと落とした。


「皆さんも簡単にバレるような妨害はしない事です。バレなれければいいんです。バレなければ。」


時田さん。
妨害を歓迎しているようなこといっちゃあかんでしょう

「他に何か不満や意見のおありの方は手を上げてくださいねーーー」

はいはいはいはいはーい
手があがる

「しんぱーん。そいつの行為は妨害じゃないんですかっ」

音声マイクをしかけられた彼らはいっそ道連れにと思ったのか乾を指差した。


「なりませんね。マイクしかけだだけで妨害にはなりませんよ。はーい。意見聞き入れしゅうりょーーう。時間ないから
次行きまーーーーす」

ちゃきちゃきブーイングを無視して進める審判時田。
その潔さはこぎみ良く、コナン、乾、それにその他のギャラリーと化した人々は思わず全員で盛大な拍手を送ったほどだった。


「いやはや照れますねぇ」
鳴り止まぬ拍手の中、審判はとぼけた口調で頭を掻いた




一方そのころ体力組では。
命を懸けた戦いが始まっていた。
それはもう、呆れるほど。


「ほらっ走って走って。コナン君はクリアしたのに貴方がクリアできなかったなんて事になったらコナン君に怒られますよ」
白馬の言葉に反論できずただ頬をふくらませる快斗。

ぶぅぅ

隣で会話を眺めていた辰巳は
(先輩・・・どうかしちゃったんですか!!?)

失礼なことに頭の心配をしていた←ホントに失礼


だがしかし
「仕方ねーな」
と走りだしてからの快斗は辰巳が尊敬する憧れの男性像そのもの
軽く走ってるようにみえるが恐るべき速度だし、それを持続するだけでなく楽しそうに白馬をからかう余裕まである

すばらしすぎだ

「さすが俺の黒羽先輩・・・・」
感動のあまり辰巳は指を組み合わせて恋する乙女祈りでうっとりそんな快斗を眺めた。

「ってーか、結局早くゴールにたどりつきゃぁいーんだろ?」
楽勝ラクショー
かなりこの大会を舐めているとしか思えない発言が快斗の口からもれた


ハッキリ言おう。
コースには罠が沢山ある。
すでに作動した罠には多くの人間がかかっていた。

「おお。大漁大漁」
降ってきた網に捕らえられた人々がぶらりんと宙吊りにされているのを眺め暢気な声をあげたのは当然ながら快斗である。

「まるで地獄絵ですね」
「うわっ落とし穴めちゃ深いっすよ・・・」

何メートルあるのだろう穴の底には何やら呻く人々がごろごろと。

罠には引っかからなかったものの、周囲の敵との死闘を繰り広げたのだろう傷だらけの人間が粗大ごみのように山盛りにされていたりしていた。


まさしく地獄絵。

「うわお。」

自分たちより先に行った人間の半分以上は再起不能となっている模様。
ついでに仕掛けられた罠もほとんど発動済みの様子。


「あ、辰巳そこ飛べっっ」
「へ?」
「その色が違う床、スイッチだから」

床を見れば確かにかすかに色が違う。
辰巳は踏みそうだったそこから足をどけひょいと飛び越えた。

「はぁ・・あれは・・・気づきませんよフツー」
「そうですか?僕は気づきましたけど」
「じゃぁ白馬てめーが先頭走れよ」
「いやです。罠回避は黒羽君のほうが得意でしょう?もしうっかり引っかかってもヒラリとその持ち前の運動神経でよけれるでしょうし」

「なぁぁんかお前頑丈な腹してんだから毒見しろやって言われてる気がすんのは俺だけか?」

サラリと一番危険な場所を押し付けられた快斗は空に向かって情けない声を上げた。
白馬に言っても糠に釘だと分かっていたからだ。


その後の快斗は次ぎ次ぎと危険地帯を避け、罠を外し、猛スピードで先頭との距離を詰めていった・・・とは言うものの、先頭がある地点で立ち往生していたおかげなのだが。


「ふはーー。かなり罠が発動し終えてっから楽だったなー」

ヘラヘラと本気なのか笑いながら述べた快斗に辰巳は引きつった

「いや、十分大変だったっすよ・・・・」

小回りの利く辰巳だからなんとかここまでついてこれたものの、もう少し鈍重な人間だったら数多回避してきた罠の数個か数十個には確実にはまっていたことだろう。


ああ・・・すばしっこい自分に感謝・・・


快斗は当然のことながら余裕しゃくしゃくでうっかり辰巳が発動させた罠を回避したりしていたが、その後ろの白馬もこれまたかるぅぅぅくよけていく。

この二人といると自分の運動神経がものすごく悪いように感じる。
今まで自分の運動神経はかなり良いと思ってきたのだが自信が思い切りぐらつく。

(いやいや。きっと気のせいだ。あの二人が凄いだけ・・・・だよな?なっ?)

人外の二人と比べちゃいけませんよ辰巳君。





「あーらら・・・」

前方数十メートル先の騒動を見て三人はげんなりした。

多分先行く人は全てあそこで止まっていると思われる。
巨大なおしくらまんじゅうが始まっていた。

「なんだあれは・・・」
「多分戦っているんじゃないですか?」
「いやそれは分かるけど」

快斗の呆れた声に辰巳も首を傾げて答えたが、それはだれが見てもわかる事実だった。
手当たり次第に周りに攻撃をしかけているらしいのは分かる。
新たに来た人間に一斉に走りより輪の中に詰め込むとまたおしくらまんじゅうが始まる。

ああやって雪だるま式に人数が増えていったのだろう。
そしてそこかしこで死屍累々と転がるのはすでに破れた人々。


あそこに巻き込まれたらおしまいと言うことだ。

だがその道を通らねばゴールへはたどり着けない。



「「・・・・・・・・」」




快斗と白馬の視線が一瞬交錯した。



「辰巳。お前俺のためなら命懸けるよな?」
突然肩をつかまれ真剣な顔で聞かれた辰巳はワケが分からないまでも

「もちんですっっっ先輩のタメならたとえ火の中水のなかっっっっっ」

うっかりそんなことを条件反射のように口にしてしまった。
それにニンマリ微笑むと



「いいな白馬?」
「ええ。」

二人は目で通じ合った。
聡い白馬には快斗が何をしたいのか即座に理解できたのだ。
それが一番てっとりばやくここを通る手段だろうことは自分も気づいていたから。

   

「え?」

次の瞬間辰巳の体は上半身を快斗が、足を白馬がもち勢いよく振られた。


いっちにっのさん、はいっっ

「「そぉぉぉれっ」」



「どわぁぁぁ」

人々のまん前に辰巳がほおりこまれた
一斉に新たな犠牲者に向かって人々は突進する。
この先は何人たりとも通さんっっっという意気込みがヒシヒシと感じる勢いだ。
その隙に快斗、白馬のご両名は人々の死角をスルリとすりぬけた。
二人の持ち合わせる絶妙なタイミングとスピードがあるからこそできた芸当ではある。
だが一番の勝因は生け贄とする人間が手元にいたことだろう。


「おまえの犠牲は無駄にしないぜ辰巳っっ」
ううっっという、わざとらしい快斗の涙声がなぜか隣を走る白馬の笑いを誘った。

しばらく走ったころ後ろを少し振りかえり

「なんかちょっとかわいそうでしたね」

申し訳なさそうに白馬がつぶやいた。

ちょっとどころではない

っていうか手をかしておきながら今更なことだ。
あの時はああするしか手は無いと分かっていた白馬だが、時間をおいてみると人間として何かが間違っていたような気がしてきたらしい。
罪悪感が少しずつ芽生えてきたらしい白馬に快斗はニヤリと笑い


「いや、あいつは今頃黒羽先輩の役に立てて幸せですっと思ってるに違いない」
力強く言い切った。


「・・・そうですか?」←うたがわしげ 

「違いない」

きっぱり頷けば

「そうですか」


意外にもあっさり納得した


(すげーこいつマジで納得してるよ〜)

快斗は笑いをこらえるために横っ腹が痛くてしかたなかった。



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快斗「成仏しろよ辰巳っ
白馬「死んでませんよっっっっ」

03.12.12