コナンさん+快斗君ハッピーバースデー&当サイト3周年記念小説
珍しく。KID×コナンっす

花舞う街で  

6.


「あれ?コナン君今日出かけるの?」

朝からバタバタと相変わらず部活の準備をしていた蘭は同じくゴソゴソリュックに荷物を詰め込んでいるコナンを見て不思議そうに問いかけた。

「うん。今日は歩美ちゃんたちとちょっと遠くの公園までピクニックに行くんだ。」
「それじゃあお弁当がいるじゃない」

大変っ
と慌てて用意しようとした蘭にコナンは両手を振った

「ううん。今日は博士が皆の分用意してくれるっていうから手ぶらでいいんだ。」
「そうなんだ。そう言えば今日は阿笠博士のお宅に泊まるって言ってたけどそのまま行くの?」
「うん。だからこのリュックにお泊りセットが入ってるんだよ」

ニッコリ背中のリュックを見せれば蘭はようやく納得したように微笑んだ。

「あんまり阿笠博士にご迷惑かけちゃだめよコナンくん。」
「うんっわかってる。蘭ねーちゃんこそ、この間みたいに『心配になった』とか言って夜中に博士の家に押しかけちゃだめだよ」
「あ、あれはー・・・・」

夜中にふと飛び起きて突然に心配になったのだ。
家の中にコナンの気配が無いことに。本当に博士の家にいるのかしら?
まさか新一みたいに突然消えちゃったりしてない?

そんな不安にいてもたってもいられなくなり、一人で夜中に博士の家まで走っていったのだ。
コナンは夜中に蘭が一人で出歩く危険のほうが心配で心配でたまらない。

「あんな時間に女の人が一人で外にいたら危ないんだからねっ」

だから口調も思わず強いものとなってしまう。

「平気よ。変な人が出てきたら撃退しちゃうんだから」
「それでもだめっっ」

怯えない蘭にコナンは必死に言いつのる。
人間相手なら大抵の変質者ならなんとかしてしまう腕前である。
だが多勢に無勢と言うときもあれば、敵が武器を携帯している危険だってあるのだ。
そんな危険なこと絶対にさせられない。

「夜の一人歩きはおじさんが禁止って言ってたじゃない。約束はちゃんと守らなきゃ」
「もー心配しすぎよお父さんもコナンくんも。」

これくらい当然だっっっっっ


それから喧々囂々やりあった後、なんとか折り合いのついたらしい二人はお互い荷物を抱えると慌しく玄関へと急いだ。



じゃ
「「行ってきまーーーす」」


朝っぱらから元気溌剌に活動していたコナンと蘭。
二人の声にようやく起きたネボスケ探偵は煙草をくわえながら

「おーーーー気ぃつけていってこーーーい」

どこへ行くかも知らずに可愛い子供たちに朦朧と返事をした。


ただ今の時刻午前10時30分。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


7.

「おはよーーコナンくんっ」

阿笠博士の家に着く前に出会ったのは歩美だった。
ピンクの可愛らしいポーチを横に掛け、手には小さな紙袋。
ピクニックの為に格好は半ズボンと半そでのTシャツというラフな格好だが、生来のかわいさのおかげで十分愛らしさが際立っていた。


日焼け防止のため長ズボンと長袖を欠かせないコナンは少々暑苦しい格好ながらも薄地な事と、色合いも涼しげな水色であることからそこまで暑苦しく感じない。
歩美からみれば十分かっこ良い、爽やかな王子様的いでたちだった。

「おはよう歩美ちゃん。早いね」
「うんっ。すっごく早く目が覚めちゃったから少しだけ早く出てきたの」

早起きは三文の徳とはよく言ったものだ。
歩美は嬉しそうにコナンの横に並ぶと歩き出した。


「ねぇコナンくん」
「ん?」
「今日ってどこ行くか聞いてる?」
「いや、ちょっと遠くの公園に行くとしか」
「あのね。歩美知ってる。この間哀ちゃんがね、雑誌に載ってたお花の万博の写真見てここにしようかしらって言ってたの」
「へー灰原が珍しいな」
「うん。お花見たかったのかなぁ」

純粋にそんなことを言う歩美を横目にコナンは苦笑する


無いっっそれは絶対に無いっっ


あの、灰原哀が花を見るために遠出?
小五郎が難事件を解くくらいありえない。
↑どちらに対しても失礼(笑)



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



8.


その日コナンが一番最初に見た哀の表情は歩美に向けた優しげな微笑だった。
いや、別にそれが悪いってわけじゃないが、朝からみるにはちょっと・・・・
うん、別に悪いわけじゃないけどな・・・・←歯切れ悪し

二人が集合場所に到着したとき、ちょうど哀は車に荷物を運び込んでいる最中だった。

「おはよう哀ちゃんっ」
「おはよう吉田さん。早いわね。」

荷物を勢いよく車の中に放り込むと歩美にむかってニコリ。
歩美の後ろにいるコナンには挨拶なしである。
ここらへん大切さ度合いが違うのだろうとコナンは思う。
これが一緒にいたのが元太や光彦だったならば三人まとめていつもの皮肉った笑みで「おはよう」の一言。

コナン一人ならば軽く視線を向けるだけ。下手したら不機嫌そうに片眉をあげられるかもしれない。

そんな灰原哀も、相手が歩美ならば柔らかな笑顔で名前を呼んで挨拶である。
うーん意外と分かりやすい順位制度だ。
もちろん、けっして笑顔で「おはよう江戸川君」なんて挨拶されたくないとコナンは思うのだが←裏がありそうで怖いから


ニコニコと灰原に近寄る歩美を見るとコナンはいつも思う。
あの子は意外に大物では?と。
基本的に普通と違う雰囲気をかもしだす哀はクラスの中でも浮いた存在だ。
このグループにいるからそう気づくものはいないが、もし他のクラスに入ったならば間違いなく一人で孤立していたことだろう。

そんな中、女の子もちょっと遠巻きにする哀を哀ちゃん呼ばわり出来てしまえる(許可をもらえた事にも驚きだが)歩美はかなり凄い。

「あのねっ今日ってお花の万博にいくの?」
「あら。良くわかったわね」

哀もあまり表情には出さないが懐いてくれる歩美を気に入っているらしくたまに柔らかな笑みを浮かべたりする。

「やっぱりお花が見たかったんだっ」
その無邪気な笑顔に救われるのかもしれない。
「そうかもしれないわね」


「そうそう。江戸川君。宿泊道具は置いていくんでしょ?」
「ああ。今のうちにおいてくるつりだけど・・博士は?」
「まだ中よ。元気に朝早くから弁当のしたくをしているわ」

まめよね。

「はは。ホント元気だよな」
年のわりに。

ピクニックだ。バーベキューだ。キャンプだっと子供の喜ぶイベントを率先して発案するのはあの阿笠博士である。
それに子供たちが「行くいくーーーー」と叫びイベント発生となるのが常だ。

ま、皆が喜んでるからいいけどな。


「夜はあっちへ行くんでしょう?」
「まー招待状をもらっちまったもんわ仕方ねー。答え合わせのために一応な。」
肩を軽くすくめ一応などとのたまう。
「ま、楽しんでらっしゃい」
「?コソ泥捕まえにいくだけだぜ?楽しくもなんとも・・・・」

憮然とした表情を浮かべ反論の言葉を口にしたコナンは目の前の光景に目を瞠った。
突然言葉を止めたコナンに哀はいぶかしげな視線を送った。


「危ない歩美っっっっ」


次の瞬間、目の前の彼は哀の視界から一瞬で消えた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

9.


え?と振り返った哀の目には一台の車が映った。

その車が歩美へと突っ込むその瞬間を捕らえてしまい、哀は息を止めた。
それは一瞬。

コナンが歩美を突き飛ばすのと車が歩美がいた位置で止まるのと。
急ブレーキのため車体がスピンしたのだろう。斜めになっていた。

数秒でも遅ければ完全に引かれていただろう歩美は地面に倒れていた。
コナンはうまく受身をとったのだろうすぐに立ち上がり車の中をみやる。

運転席と助手席に座る二人の男が青い顔で息をついていた。
二人ともヒョロリと縦長の30代後半ぎみの男たちだった。
助手席の男は引きこもって研究でもしてそうな白い肌ともやしのような細さのめがねの男。
運転手はヒョロリとはしているが、無駄なく筋肉がついていて、よく言えば意志の強そうな顔立ち、悪く言えば悪人面だった。

(ん?)
なにかが引っかかった。
知り合いではない・・・が、見た覚えのある顔・・のような・・・。
それとも単に知り合いに似た顔がいたのかその程度のかすかな記憶。
いぶかしげに二人を見ていると、


「気をつけやがれバカヤローーー!!」

運転手は窓を全開にしてそれだけ叫ぶと車を急発進させ逃げるように走り出した。
いや、まさしく逃げ出したとしかいえない。

場所は確かに狭い道。だが、法定速度の軽く倍は出している車が文句を言える立場ではない。
歩美はきちんと端に立っており、普通の車ならよけられる。
明らかに落ち度は向こうにあった。


去り行く車に射殺しそうな視線を向けた後、哀は自分の足元まで飛んできた歩美の紙袋を拾い砂を払うと、二人に近づいた。

「吉田さんは?」

急ブレーキの音に慌てて出てきた博士や近所の住民たちが未だ倒れたままの歩美を囲むように覗き込んでいた。

「わかんねー頭を打ったのかもしれねーし・・・たんにショックで気ぃ失ってるだけかもしんねー」

慌てていたので突き飛ばすとき加減ができなかった。
倒れた拍子に地面で頭をうった可能性がある。
哀もそれは仕方ないと思う。
あの瞬間コナンが間に合っただけでも奇跡だ。
そうでなければ今ごろ歩美は息をしていなかっただろう。


呼吸が正常なことを確かめると博士が抱き起こそうとするのを手で止めコナンは携帯で救急車と警察へと通報した。



数分後。救急車に担ぎこまれる歩美の姿をちょうど現地へ到着した元太と光彦が目撃し、コナンたちを問い詰めることとなる。




「あいつら・・・許さねー」
搾り出すようなコナンの声と
「・・・・・・・・・・」
無言で震える手を握り締める哀。



二人の怒りはそうとうなものだった。


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10.


歩美が病院に運ばれてから数分のこと。
付き添いは博士と元太、光彦に任せ、二人はあの男達の探索を始めていた。


「灰原。あの顔見覚えねーか?」
車のナンバー照合をしているときコナンは気にかかっていたことをフと口にした。
「どっちのことかしら」
「それがわかんねーんだよなー。なーんか二人の顔見てたらふっと「あれ?」って思ったんだけど」
どっちをみてあれ?って思ったのかすら分からない。

「持ち主が照合できたわ。」

パソコンの画面をコナンのほうへ向ける
さっきの助手席の男だ。
盗難車じゃなかったようで幸い。

「霧島雄吾・・・・・知らねーな」
「そうね。でもこちらの名前は聞き覚えがあるはずよ」


パソコンの画面から哀のほうへと顔をあげたコナンは次の瞬間ひたいをおさえた。


「通称J(ジェイ)。レプリカ作りの天才よ」

「うわあ・・・・」

なんてもんが関わってきやがったんだ・・・・・。


「最近なりを潜めてたのは大物に取り掛かってるからだともっぱらの噂ね」
ため息をついたコナンを他所に冷静に哀は情報を告げていく。

「こいつがJ・・・か。名前ぐれー聞いたことあったけど」
「そうね顔は売れてないわね。商売柄、売るのは名前だけが一番よ」
「そりゃそーだ」

本当は探偵だって売るのは名前だけが一番だ。
下手に顔が売れると不便でたまらない。

「でもそうすると・・・」
「ああ俺が見覚えあったのはこっちだろうな。まずたしかに犯罪犯してるぜ。」
「そんな事顔見ればわかるわよ」
「・・・いや悪人面だからって決め付けるのはーーー」

「犯罪者特有の陰欝な気配が顔に出てるのよ」
サラリと辛らつな言葉を述べればコナンは苦笑して納得を示した。

「ああ、そーゆことな。チョット待てよ記憶さらうから」


やみくもに検索するより早いだろうと目を閉じ頭の中に過去目にした顔を浮かべてゆく。
まるで記憶装置を登載しているかのごとき行動にその頭ホントは機械仕掛けなんじゃないの?と哀は疑わしくなってくる。

(貴方くらいよね。そんな器用なマネできるのは)

呆れたような感心したような不思議な表情を浮かべると時間は有効に、とばかりに自分の
外つけ記憶装置のキィを叩きだした。

それから数分後。
哀のパソコンが走り去った車の現在位置を突き止める前にコナンが目を開き重い口を開いた。


「思い出したぜ。」



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