コナンさん+快斗君ハッピーバースデー&当サイト3周年記念小説
珍しく。KID×コナンっす

花舞う街で  

11.


時刻は夕方。
まだ明るいとはいえ、予定外の事に少年は少々焦っていた。
足早に裏家業専用に使っているとある建物に向かえば予定していた準備はほぼ済んでいた。

「ぼっちゃま。ハングライダーの点検終了いたしました」
「サンキュージイちゃん。いや〜まいった、まさか朝からアホコに付き合わされるとは・・・」

頭をかきながら滞った準備がないか視線をすべらせる。
口調は軽いもののその顔は真剣そのもの。

「うん。あとは花が届いたら積み込んで終了っ」

よしっと一つ頷くとスッと右手を上げパチンっと指を鳴らした。
と同時に、手のひらにどこからともなくトランプ銃が現れた。

手品師でもある寺井から見てもやはり彼の腕前は見事の一言に尽きる。
どこに隠し持っていたか、どころではなく、いつの間に取り出したか傍で長く見てきた自分でさえ全く分からないのだ。
白い魔術師と呼ばれても無理はない。

一振りで観客を沸かせる最高の魔法使い。
確実にやってくるであろう未来に思いを馳せ寺井は胸をわき躍らせた。


そんな寺井の感動にも気づかず快斗は一枚の紙をズボンの後ろポケットから取り出した。
紙を放り投げ数回トランプを打ち出せば、見事壁に紙ごと突きささる

「よしよし。微調整もいらないな。」

満足そうに頷き寺井に振りかえる

「帰りにちょっと下見してきた。さすがに中森警部張り切ってたなぁ。」

壁に張りつけた紙はチェックを入れてきた警備の薄い場所、逆に厚い場所。意外な盲点と手品がしかけや
すい場所。
快斗の頭にはすべて入ってるのでこれは寺井の為のものだ。

「一応みといて。連絡は入れるつもりだけどアクシデントはつきものだから臨機応変にね。そこらへんはジイちゃんの判断に任せるよ」

寺井を信頼しているからこその言葉に思わず胸が震えた
「はい。ぼっちゃま」

絶対にその信頼こたえてみせます。



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12.

「いい加減にして欲しいものだわ」
「いや。俺に言われても・・・」

憤慨した哀は八つ当たるようにコナンにとげとげしい言葉を投げかけた。

「なんでこんな二人が関わってくるのよ」

哀の怒りはごもっともで、コナンだって『んな馬鹿なっっ』と何度だって思った。

方やレプリカ作りのプロ。
方や・・・・

「テロの残党・・・だもんなぁ」

ああ。なんでこんな所でそんなタッグ組んでるわけだよ。
ものすっげーー怪しくて疑わしくて、関わらないわけにいかない二人はため息を禁じえない。


「それで?ほかに情報は?」
「それはそっちで調べたほうが早いな」

肩をすくめあごで哀が操るパソコンを示した。

「そう。警察の情報に入っているのね」
「ああ。要注意リストに入ってるはずだ」

警察署内の極秘資料をハックすることを二人はまるでちょっと電話番号分からないから電話帳で調べようかしらの調子で口にする。


「日高成治(ひだか せいじ)。爆弾テロの幹部の一人。・・・・って爆弾?」
「そうだ。以前俺もそいつらの爆弾でひどい目にあったぜ」

新一の時代だ。
たまたまとあるオフィスで殺人事件が起こり駆り出された新一。
そこに偶然テロが爆弾を仕掛けたのだ。

事件体質とは恐ろしいものだ。
更に言えば新一の悪運のおかげでオフィス内の人間は運良く死者は出ず避難できた。


「よーするにこいつも爆弾つくりのプロってことだ」
「この人が作るの?そんなこと書いてないわよ」

「あ?駄目じゃんこの情報使えねー。俺は現場にいて情報とか聞きまくってたうえに仕返ししてやろうと思って調べてたからな。
結構凝ってたぜ。実行犯締め上げてとりあえず爆弾作りの人間は全員吐かせたそうだからな。」

「あなたが?」
「いーや。それは警察の仕事。俺は攻略法を教えただけ。」
「攻略法って。貴方が裏で刑事を操ったようなものじゃないの」
「人聞き悪いこと言うなよ。まぁ、そんなわけで作った奴はあいつ以外は捕まってるはずだ。まだ逃げ切ってた奴がいたのに俺は驚きだ」

ずいぶん前のことの上に、古い顔写真一枚見せられただけの新一がよくぞ覚えていたと言ったところだろう。



「そんな人間が・・・Jと一緒に何をしているというのかしらね」
「さあな。とりあえず俺らはあの二人をとっ捕まえてそれなりの報復をしねーと気がすまねー。ちょうどいいじゃねーかついでに警察に裁いてもらえるんなら殺人未遂も追加しといてやろうぜ」

「どうせ事故で片付けられるわよ」
「ふん。俺とお前がなんとかすりゃ殺人未遂になるんだよ」

フフンと鼻で笑ってみせれば
しばし考えた末に哀も頷く。

「・・・・・・・・・・・・・・・そうね」



二人はニヤリと実に悪魔的な笑いを浮かべた。


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13.

「まったく。こんな時にっ!!」
腹立たしそうに舌打ちを繰り返す運転手に助手席の男はまぁまぁと手でいさめる。
「あんな道にガキどもがいたのが悪ぃんだ。」

あーむかつくっ
イライラとハンドルを叩く。

「ほら。そんなにイライラしてると事故るよ。今死んだらそれこそ心残りありまくりで死に切れないでしょう?」
「ああ。分かってる」

相棒ののんびりした声の調子にようやく落ち着きを取り戻したのか男はハンドルを握りなおし頷いた。

そうだ。せめて死ぬなら明日。

計画がつつがなく終えた後なら喜んでその運命受け入れてやろう。

悲壮な決意をする彼とは裏腹に、助手席の男は手に握り締めるようにもったジュエルケースに目を落とし微笑む。

「まぁ私の場合、これが終わった所でまだまだ未練は山ほどありますけど」
作りかけの宝石が多々あるのだ。
あれらを完成させ、裏ルートでさばく。
はたまた誰かと手を組んで本物とすり替えても楽しい。

とにかく自分の作り出したものが素晴らしいと評価されればそれでいいのだ。



「お前は何度誘っても俺たちのグループに入ってくんなかったもんなぁ」
そのおかげで一斉検挙から免れたのだが。

彼の断り文句が振るっていた。

「私は神を信じてませんから」


いや。俺たち別に宗教団体じゃねーんだけど。

「人が集まるとそういった宗教めいたことになる。私はそれが非常に嫌いなんです。まぁ孤独な一匹狼とでも思ってください。」
言ってることはカッコいいのだが、本人のナヨナヨさとのギャップにあまりにも笑えて、
思わず「そうかそれなら仕方ない」とか頷いちまった。


「あーあ。今回の作戦が成功してもお前はまた一匹狼に逆戻りかー」
「ええ。大勢の人間とつるむ気にはなれませんね」
「まぁいいか。そーゆーのは無事に事を終えてから考えりゃ」
「事が終わっても考えが変わることはありませんよ」
「あーはいはい。てめーは狼。俺は哀れな子羊ですよー」
「・・・・・・」

その柄の悪さで羊もなにもあったもんじゃない。
と思っているのがありありと分かる表情で助手席の男は黙った。

「なんだ?なんか言いたいなら言えよ」
その沈黙に眉を寄せ、そう口にすれば、では遠慮なくとぺロリと内心を吐いた。

「・・・爆弾なんか作る危ない人間を哀れな羊なんて認めませんよ私は」
そりゃそうだ。


ぐうの音も出ないお言葉に、言わなきゃよかったと運転手は思った。


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