光のかけら
プロローグ
「はあ・・・はあ・・」
「大丈夫?歩ける?」
「ああ・・・ありがとう。大丈夫だよ。」
追跡は未だやまない。
誰かに追われるというのはそれだけで神経がすり減るものだ。
森の中。日は暮れ始め、どちらへ向かっているのか分からなくなってきた。
今いるのはどのあたりかしら?道という道もなく、ただ足場の悪い土の上を草をかきわけ
ひたすら自分を信じて歩いている。
唯一の救いは雨がやんでくれた事だけだろう。先ほどの雨のおかげでびしょぬれの
二人は少しずつ冷えていく体に体力を奪われつつあった。
いつも冷静な少女は疲れもあらわな表情で額の汗をぬぐった。
いくら夏とはいえ雨と川の水で冷えた体のせいで力がでなくなってきている。
内心の焦りを押し隠し少女は傍らにいる中年の男性に声をかけた。
引きずる右足には布が巻いてある。先ほど少女が手当をしたばかりだ。
骨折はしていないが、張れがひどい。
これ以上無理をして歩くととても大変な事態になるだろう事を
診断した少女は知っていた。
「もう少し歩こう。僕なら大丈夫だから。あっちに丁度いい洞窟があるんだ。」
30代前半の少しやせ気味の男。20代後半に見間違えるほど若く見える。
上で固めていた前髪は強行軍のためかバラバラと目の前に落ちるため時々うっとうしげに
掻き上げる。
「洞窟・・そうねそこの方が安全かも。」
あごに手をやり少し考える風の少女。
すっと顔を上げるとうなづいた。
「いきましょ。」
「ああ。」
もう少し・・もう少し・・・あの人の所にきっと行けばなんとかなるはずだから・・
side C
「カッレェェェェライーースゥゥゥライーースゥゥゥはうーーまぁぁぁいぃぃぃ。
うーーーまーーいーーーー」
奇声・・・もとい、音程のはずれた歌声が車の中を支配する。
「げんた君。もう少し小さな声で歌ってくださいよ。」
「っていうか歌かそれ?」
人の事を言えない音痴のコナンはあきれた顔で自作の歌をけなす。
「歌っていうより思った事言ってるだけですよ。げんた君のは。」
うんうん。と光彦の言葉に歩美もうなづく。
「いいじゃねーかよーーカレー楽しみなんだからよぉ。」
皆にけなされてもへこたれないげんたはウキウキとカレェッカレエエと
歌い続ける。
もはや念仏のようだ。
「呪われそうね。その歌。」
辛辣な一言。もちろん声の主は灰原である。
「なんだとぉ。カレーをバカにすんのかっ」
そういう問題ではない。
「・・・・」
さしもの灰原もげんたのこの対応に返答する言葉もなかったらしい。
「くっくっく・・」
負けてる負けてる天然にはさすがの天才少女も勝てないらしい。とコナンは
一人受けまくっていた。
「げんた君ってばどうせなら皆が歌える歌にしてよ。」
「えー?んじゃあれ行くか?昨日音楽の時間に習ったやつ。」
「いいですよ。僕は完璧に覚えましたよ。」
「歩美もほとんど覚えたーー」
(もうとっくの昔に覚えてたよ。)はは・・と据わった目のコナン。
「でもコナンは歌うなよ。お前はずれるからなっ」
音痴の自覚のないコナンはムッとする。だが特に歌いたいわけではない。
むしろそんな子供子供した歌を一緒になって歌う自分というのは
かなり嫌かもしれない。
「もうっそんな事言ったらコナン君可哀想じゃないっ。」
歩美がフォローを入れる。だが音痴と言う言葉を否定はしないあたり
どうやら彼女も同感らしい。
「そうですよ。コナン君は下手ですけどいつも一生懸命歌ってるんですから。」
同感らしい光彦も痛恨の一撃をコナンにくれる。
「子供って残酷よね。」
前の座席に座る灰原は冷静につっこみをいれた。
確かに残酷だ。
普通大人なら言わない言葉を言ってしまうのが子供の怖いところだ。
しかも悪気がない分よけいにきつい。
あまりの言われように怒る気も失せるコナン。
がっくりと助手席の背に頭をうめこむ。
「おまえらなぁぁ・・。」
小さくつぶやいてみるがコナンを傷つけたと気づかぬ無邪気な子供達は
和気あいあいと歌いだした。
「言っても無駄でしょ。」
前からまたもや冷静な一言を頂く。
「そうだな。」
脱力した体もそのままに疲れたようにため息をつくコナン。
(俺ってそんなに音痴か?)
いまだ自分を分かっていない彼は幸せなのかもしれない。
ドライブの朝は穏やかに過ぎていった。
シーズンからはずれていたせいか休日の割に道路も混んでなくスムーズだ。
ゆっくりと軽やかに、車は走る。その先にまっている事件へと続く道をただひたすら
走り続けていくのだった・・・。
あとがき
まだほとんど出来上がってないんですぅぅ(涙)
本当は出来上がってからアップしたかった(訂正がきくもんね)
でも他の話書いてる暇ないから更新記録のためにこれ出します。
うう・・・おわらなかったらどうしよう・・。一応目指せ推理物。
ちなみに次の回から快斗君が出てきます。マジ快キャラを出す予定。頑張れ私っ。
up7/10