「よお、じゃないわよ!何ヶ月連絡無しだと思ってんのよっ」

久しぶりの幼なじみへの電話はとんでもない剣幕で始まった。

赤いバラが咲いた小国 2




言わせてもらえばコナンとて忙しかったのだ。
最後に電話をして決戦に望み、記憶失って数ヵ月。
戻ってすぐに慌ただしく海外へ。日本に戻って昨日まで変な大会に時間を取られていたのだから…。
いや確かに合間合間に時間はあったさ。

だがしかし


『勇気が足りなかった』←(笑)

記憶を失っている間の数ヵ月のブランク。
しかたないとは言え、連絡が出来なかったのは事実。ついでに真っ正直に説明も出来ない。

頭に浮かぶのは怒って怒って収拾が着かないほど怒りくるう幼なじみの少女の姿。
怖いなんてもんじゃない。怒りの波動が電波を通じて辺りを取り巻くのだ。人間技じゃ無いとコナンは思う。
それを恐れてどう言い訳しようと悩んでいるうちに年が明けてしまった。
うう…。

「ワリイ。いろいろあって時間取れなかったんだ。」
『へーいろいろねぇ』
なんて冷ややかな返事だろうか。
当然かもしれないが。

「一応元気でやってるぜ」
『ふぅん。そんな事より聞きたい事があるんだけど』
幼なじみの安否を『そんな事』呼ばわりですか蘭さん。
それが仕返しか?ちょっと淋しかったぞ。

『コナン君なんだけど』
「え?」
思わずドキっとした。
『帰ってきてるみたいなのよね。新一は聞いてない?』
「…さあ?」
何処でそんな情報を?と思っていたら。

『昨日コナン君のお友達が教えてくれたの』

(あ…あいつらぁぁぁ)
そりゃ口止めはしてないさ。わざわざ言いに行くなんて思ってないし。
それに灰原がついているから、なんて思ったコナンが甘かったのだろうか。←そうだな
しかし会ったその日に何故教えに行っちゃうのだろうかあのお子様軍団は。
親切すぎるというか、大きなお世話というか・・・。


『コナン君また日本で暮らすのかなぁ?』
「さぁ?」
『ね、阿笠博士にちょっと聞いてみてくれない?』
「はぁ?なんでだよ」
『だって戻ってくるならうちに来て欲しいじゃない』
「…んあ?」
なんでだ?
と思ったが蘭が寂しがっているのにふと思い至った。
幼なじみは行方知れず、面倒みていた子供は親元へ帰ってしまった。
普通なら開放されたと喜ぶだろうに世話好きの蘭は寂しいのだろう。

あいつコナンを可愛がってたしな。むしろ溺愛。
かなり他のヤツらに自慢してたらしいし。

姉バカ一直線だったしな。

「でもよ。おじさんが嫌がるんじゃねぇ?」
それなりに大事にされていた記憶はあるがまた世話になると言ったら顔をしかめられそうだ。

『あははっ逆よ。私よりお父さんの方がコナン君を可愛がってたもの』
「…嘘だろ」
『本当よ。おかげで最近やる気無しよ』
「いつもの事じゃねぇか」
ソファでごろごろ。最近チマタで噂を聞かないのは事件が解けないせいだと思っていたが。

『この前沖野ヨーコちゃんからの依頼も断っちゃったのよ』
「やべえってそれ。重傷だろ。病院行った方が…」

本気でこれは心配だ。あの。女好きで、綺麗な女性の為ならなんだってしますぜっの小五郎が。
大ファンのヨーコちゃんの依頼を断るなんて。
天変地異の前触れか?
なにか物凄く世界的に怖ろしいことが怒りそうで怖い←言いすぎだ

『だから薬はコナン君なの』
「はぁ?」
『コナン君がいないとお父さんはダメダメなのよ』


よくわからないが。非常に江戸川コナンが毛利家に求められていることだけはよーーく分った。

「あー・・・連絡とれたら取ってみるけど・・・」
『うん。お願いね。』
「ああ。っとやべテレカ切れるから切るな。」
『え?ちょっと。大体なんで公衆電話からかけてるのよ新一っ携帯代金払えなかったとか情けないこと言うんじゃないでしょうねーーー』
「違うって。今携帯充電中なんだよ。マジ切れるからまたなっ」
『新一っっ』
怒鳴る声を無視してガシャリと受話器を置けば言葉通り残数が0となったテレカが出てくる。

「むむ。携帯だと長々話す口実与えちまうからなぁ」
公衆電話ならばテレカ切れを装える。まぁ小銭入れろといわれるだろうが小銭が無いと言い切れば良い。
うむ。良い手だ。
ちなみに工藤新一用の携帯は今は電源をきって背中に背負っているリュックの中で眠っている。

「どーするかなぁ」

どちらにしても黒羽家にお世話になり続けるつもりは無かった。
だから今は客間に客用の布団を借りている。
下手に居場所を作ってしまうと出て行きにくくなるから。

この先どうなるか。コナンは考えていた。
しばらくは日本に居ることになるだろう。快斗が進学できたことだし。
組織の情報はまだ特に入ってきていない。

問題はコナンだ。小学校にまた通うか。それともどこかに部屋を借りて完全に潜伏体制をとるか。
快斗や、快斗の母、それに新一の両親はもう1度小学校に通って欲しいと思っているらしい。
潜伏といえば聞こえは良いかもしれないが、ただの引きこもりだ。
他の人間と出会わず、パソコンとにらめっこ。
そんな生活を送って欲しくないのだろう。

たとえ危険でも、人と触れ合える小学校へ。

「それが妥当か?」

だがそうすると保護者がいる。
元々毛利家にもう1度・・とは思っていたがここまで望まれてしまうと次に出て行くとき申し訳ない気がする。

「むぅ。困ったぞ」

手近なベンチに座りむむっと唸る。
現在コナンは帝丹高校の近くの公園で快斗待ち中だ。一応自分の為に行って貰っているので・・・なんてのは建前で気分転換に散歩代わりにここまで着いてきただけだ。
所詮ゴーイングマイウェイな男である。

天気は良いがとても寒いせいだろうか、公園には人影が見られなかった。
まぁ新年明けだから皆様家で家族団らんをしているのだろう。

だがしかし、そんなコナンの隣に誰かがちょこんと座った。

「何か悩んでおるのか?」
「え?」

まさか話しかけられるとは思っても居らず声に反応して左を見てみれば、小さな少女が首をかしげて自分を見ていた。
赤いチャイナドレスのような物を着ているその少女は愛らしい顔立ちをしており、うっかりしたら人攫いに連れて行かれそうだ。
多分コナンよりちょっと年上くらいだろうその子は足をぶらぶらさせながら口を開いた。
「さっきからずっと唸っておったぞ」
「まぁちょっと。」
「そうか。実はワラワも悩んでおってのお」

「・・・」

なんかこの子・・・おかしくないか?
ここに来てコナンはようやく気がついた。
顔立ちは日本人に似ているようだが明らかに違う。
服装だってそうだ。
よくよく見てみれば瞳の色は赤っぽいし。
髪は黒いけど・・・・・

でも・・この・・言葉使いが・・・


「ワラワ?」
どこの世界の住人だよこの子。
「ん?何かおかしいか?」
「とりあえず"ワラワ"は"私"に直したほうがいいよ」
とても親切に忠告をしてみせれば少女はいささか不服そうな表情で頷いた。
「ううーむ。そうなのか?」

何故『ワラワ』を普通と思うのだ。
大阪弁を操る外人は見たことがある、京都弁だってあるさ。
だがしかし・・


何故に「姫語」?
どこで勉強してきたんだこの子は。
これはヤバイだろ?

激しい動揺をよそに少女はまたもや話しかけて来た。

「まぁよい。ところでお主悩み事があるようじゃが」
「まぁ・・気がかりなことがあってね。」
まさかこの先の身の振り方に悩んでますなんて人生相談をするわけにもいくまい。
適当に濁してみれば少女はうんうんと頷き。

「うむうむ。誰しも悩みながら生きていくものじゃのう。わらわ・・・・わたしもとってもあるのじゃ」
熱い口調でそこまで言い切ると少女はコナンを見つめる。

(聞けってことか?)
あまり聞きたくない気がする。むしろなんか関わらないほうが無難な気がヒシヒシとする。このまま何気なく逃げ出そうかと算段しだしたその瞬間

「お主怪盗KIDとはお知り合いか?」

「はぁ?・・・・会った事はあるけど?」
いきなし何だ?と思いつつ返してみれば
「そうか。実は緊急に頼みたいことがあるのじゃが・・・連絡をとれないかのう?」
藁にもすがるとでもいった表情で、小さな少女がコナンを見る。
何か切羽詰った様子なので野次馬根性ではないのだろうが。

「一般人のボクが連絡取れたら刑事さんはビックリだね」

取れるなんていえるはずがないだろう。
そんなコナンをジッと見つめると少女は
「ふむ・・・」
1つ頷き、おもむろに手に持っていた鞄から水筒を取り出し、トポトポと蓋にそそぐと勢いよくコナンに向かって突き出した。


「飲むがよい」


・・・強制?




    つづく  小説部屋

お久しぶりです。ファンタジー2話目。ようやく書けました。
今回はコナンです。快斗が欠片も出ません。次回は別な人かもしれません。
まじめに考えてますよー快斗もコナンも。
仕方ない状況とはいえ、シリアスですねぇ。シリーズ物は短編と違ってこういう話が書けて好きです。
皆様には必要ないと思われるかもしれないエピソードでも縁真は書きたいです。
そんで悩んだ末に進んだ道で幸せを掴ませてあげたいっっ
なんてただの希望ですけどねぇ。難しいなー

2006.8.20
By縁真