(まさか)
と思った時、すでにおそかった。

油断したとしか言えまい。
というよりそれこそ『まさか』だろう。
こんな子供が・・・・なんて。

「うむ、思ったより簡単じゃったのぉ」
そんなノンキな声を最後にコナンの意識はとだえた。




おや?
と銀三は思った。日々怪盗KIDを追いかけ、追いかけ、追いかけ。それを人生の楽しみにしている。
そんな彼、中森銀三。

彼は本日早番で昼過ぎに職場から退散してきた。
いつもならそれなりに忙しく予定通りにこの時間に帰れるなんてありえない。大抵は何だかんだで結局定時。はたまた夜遅くになったりするのがこの職についた故の哀しき現実である。

しかし今日は違った。

どーにも暇で(いい事だが)暇すぎて、おかげで朝から暇をもてあまして目暮警部の元へ行き延々昨日の事件に対するグチをこぼしていた始末。

すまん目暮。暇だったんだ。

と内容が内容だけに邪険に出来ず困った顔で付き合ってくれた目暮に今更内心謝りつつ、銀三は帰路へとついていた。

この時間だとまだ青子は帰っていないな。
そう考えると家にまっすぐ帰ってもちょっとつまらない。
どーせなら笑顔で出迎えて欲しいなぁと思っている父は娘が帰ってくる時間までどっかでフラリと時間をつぶそうかとすら考えていた。

どこでつぶそーか?と考えている時公園が目に入ったのだ。
小さな公園だ。
さすがに寒いからか子供の声は聞こえない。
しかしそこで銀三はとんでもないものを目撃してしまったのだ。



赤いバラが咲いた小国 3


『青子ね何となく解っちゃった』

娘は昨日までへんてこな大会に参加していた。
よく解らなかったが学校の威信をかけた闘いらしく、その選手に選ばれるのはとても名誉なことらしい。
ホントか!?ほんとーにそうなのか?
何度も尋ねたが娘は天真爛漫にニッコリ頷いた。

しかも事前に渡された誓約書は目眩もの。印鑑押しといてね♪ってお前ちゃんとコレ読んだのかぁぁ!?

「大丈夫だって。おおげさに書いてあるだけだよきっと。」
その脳天気っぷりに親として娘の将来がいささか心配になってしまっても仕方なかろう。

青子の強い意思により結局ハンコを押してしまったがとりあえず無事帰ってきた今はもう何も言うまい。
ああ言うまいさ!

「快斗がね、優勝したんだよ〜。」
凄かったんだから!!

だがしかし
意気込んで説明してくれる言葉を聞いているとどうやら・・・

めちゃめちゃ危険な目あっていたらしい

昼間に目暮がバタバタ忙しそうに走っていたのは知っていたがアレか?あれなのかーー!!

「なっなっなんで俺を呼ばなかったんだ目暮ぇぇ」
八つ当たりである。


「快斗とコナン君が悪いヤツをやっつけちゃったんだよ」
だから大丈夫っ
「コナンくん?」
「うんっ快斗のパートナーで参加してたの」
快斗君、あの大会に子供連れてったんかい。
しかも優勝したとか言ってなかったか?

さらに犯人逮捕に2人で協力(協力ってか2人でどうにかしたのだが)したというのだから。
一体どういう状況だったんだ?
とてもつもなく疑問である。


「青子ね、わかっちゃった。快斗のとっても大切な人。」
「え?」
「快斗すごく楽しそうだった。いっぱい怒ったり叫んだり落ち込んだりしててね。その気持ちが全部その人に繋がってるの、見ててすっごく解るの。」

寂し気に笑ってみせた娘が痛ましいがそれでも青子は強い。だから心配はしていない。

「これで肩の荷が降りたって感じ。いちおー心配してたんだぁ」
普段から泣き言を言わない幼なじみを。
だれが助けてあげれるのだろうかと。
青子なりに心配してた。

男の子だから自分には見せてくれないのだろうか?
泣く事だけじゃなくて、怒ることだって。
きっと本気の喧嘩だってしたことない。

喧嘩するとき快斗ってどんな風?
コナンに聞いてみたら。

『・・・僕たちの場合は冷戦が多いかな。全くしゃべらない。あ、でも1回もの凄い殴り合いの喧嘩にまで発展したこともあるや。』
あはは。
と軽く笑ってみせたコナン。

静かに怒る快斗なんて青子には想像が付かなかった。
人に手を上げる快斗なんて思っても見なかった。

でもきっとそれが快斗。
本当に心を許してるから。
コナンにはそんな態度がとれるんだと思う。

だから。
正直、寂寥感(せきりょうかん)よりホっとした気持ちのほうが強いのだと青子は言ってのけた。

「まぁいっか・・・って思ったんだ」
コナンと一緒にいる快斗を見て。


「快斗ね、笑ってた」
凄く楽しそうに。

「青子解っちゃったんだ。コナン君が快斗を解ってあげられるただ1人の人なんだって」
「・・・コナン君が・・・」
「お父さんも見ればわかるよ」

絶対ね。
綺麗に笑ってみせた青子。
コナン君が快斗君のただ1人の人。というのにはいまいち納得がいかないが。
それでも青子がそれで満足していて、気持ちをきちんと整理したのだろうスッキリした顔をしているので銀三は胸をなでおろした。


本当に強くて優しい娘に育ってくれたと男泣きしたい。

「そうか。」

ただ一人の存在で、快斗は変わった。
あのボロボロの姿の快斗(KID)を見た時、憔悴しきって絶望しか無いとそうあの声音が語った時。

KIDの正体の方に気をとられてそんな快斗に優しい言葉一つかけられなかった。←どっちにしても声出せなかったけど

あんなにも死にそうな声をしていたのに。
きっと顔が見えたら酷く傷ついた瞳をしていたことだろう。

「今が・・・幸せそうなら」
ソレについてわざわざ謝るのも変な話しだよな。

銀三は少しだけ残る後悔に今はフタをすることにする。胸に突き刺さる痛みと共に。


今度。彼に・・・快斗君の大切なあの子に会ったらお礼をしよう。
それくらいは許して欲しい。

そう思いながら。





「中森けえぶ?」
「う・・・うう」

青子かー?もうそんな時間か?

「起きてー」
「んむー朝か?寝足りないぞ」

ゆさゆさと揺すられて頭の中身が少しだけ覚醒していく。
うう、仕方ない仕事だしなぁ。・・あれ?今日は休みだった気がするが。はて?

「もう夕方だって。夜寝れなくなっちゃうよ」
「そうか夕方・・・・・・って夕方か!?」

思わず跳び起きた。
あまりの驚愕に慌てていつものようにパジャマを脱ごうとしだして・・・


「んん?ネクタイ・・・」
何故わたしは背広を着て寝てるんだ?
首をひねってから


「ここはどこだぁぁ」
周りの状況に気がついた。
とてつもなくトロイ。
更には

「飛行機の中だよ」

「うわぁっこ・・・コナン君?」

ど・・・どうなってるんだぁぁぁ!!



    つづく  小説部屋

ハイペースでトロイです←おかしな造語(笑)
どうしようマジ遅いね。中々うまく纏まらないよぅ。
って今回は中森警部でしたー。次回はコナンさん・・だと思いますっ。

2006.10.27
By縁真