時間は遡ってまだお昼。
狸か狐かともいえる校長との対決も終わり、快斗は悠々と最愛の相棒が待つ公園へやってきた。
ちなみにテストはまだ用意されていないとかで明日か明後日の都合の良い日に行くということになっている為まだ油断は出来ない。
しかし、それでも校長は工藤新一をあきらめ切れないことだけは間違いない。
これは収穫である。

うふふ・・これでコナンちゃんに怒られない〜明日パパっとテスト受けてさっさと面倒ごとは終わらせちゃおーっと。

もし彼に尻尾があったらきっとパタパタ上機嫌に振られていたことだろう。

俺頑張ったよね?ね?褒めて褒めて褒めてぇぇぇ♪

そんな気分でルンルンと公園へやって来たのだから。

だがしかし

「んまっあの気まぐれ子猫ちゃんったらお疲れ様な快斗君を待っててくれないなんて!!」

その公園はもぬけの殻。
人っ子一人おりやしない。

ほんの・・そう、ほんの数十分前まではとんでもなく可愛らしい子供が2人、それにくたびれた様子のおっさんが1名いた筈のその公園。

そこには冷たい風が吹きすさぶのみ。

だがしかぁぁし。


「ふ、予想の範疇でぇぇっす」

コナンがマイペースにゴーイングマイウェイに、己のしたい事しかしない主義であることを快斗は知っている。
誰よりも。
この世で一番邪険に扱われているのだから!←力説?(笑)

「いいもんいいもん。帰ったら甘えてやるー」

ぷくぅと膨れっ面になりつつもこの時点でもちろん快斗はコナンの状況なんて知るはずがない。寒さに負けてとっとと黒羽宅に帰ったと思い込んでいるのだからこれまたスキップしそうな勢いで楽しそうに家への道をたどるのだった。


赤いバラが咲いた小国 4


意識が浮上した瞬間、彼は果てしない自己嫌悪に陥った。

誘拐と言うものには工藤新一時代嫌というほど関わってきた。
そのほとんどは探偵としてだが、被害者としての関わりも実は少なくない。

(わぁ久しぶりだなぁ)
なんて思える程度の余裕はある。
しかし今回はどー考えても自分をさらったメンバーに子供がいる。
いや、認めたく無いが自分はその子供に騙されてさらわれた・・・としか思えない。

(あのお茶だよ、あの。)
半強制的に押し付けられたお茶は良い茶葉を使っていたのだろう。舌が肥えたコナンですら(うむ、美味)と思ったくらいなのだから。


そうさ。だからうっかり全部飲み干してしまったさ。←灰原さんにバレたら冷たい笑みを浮かべられそー

あんな良い茶葉使う人間に悪いやつはいない!・・・はず

と訳の解らない持論を胸の中で喚きちらしながらコナンはうう・・・と呻いた。

(子供に誘拐される探偵なんて)
情けねぇ


「そろそろ起きたかのぅ?」
「・・・」
「むぅあっちの殿方も熟睡しておるし」
薬が強すぎたか?
と、物騒な言葉をはく姫言語を操る少女


(殿方・・・)
そんな場合じゃないのにあまりにも聞き慣れない言葉に衝撃を受けてしまった(笑)

それにしてもこの子供。日系らしき顔はしていたが、どうやら違うのだろう。
もう一人現れた男性の声との会話はコナンにとって聞きなれない言語。
どこの国に行っても大抵は何とかなる程度に言語を覚えてきたとかなり自慢たらたらな自負を持っている(←それだけ苦労したからなbyコナン)コナンは、ちょっぴり動揺しつつ、
(どこかの小さな国の言語だな)
勝手に心の中で決め付けた←(笑)


とりあえず体に悪影響は出ていなそうだ。
一番心配している発作も起きていないし、薬を使い慣れていなそうな子供の様子に少々ドキリとしたが、まぁ俺の強運なら問題ない。とあいも変わらずの楽天的な事を思い、コナンは2人の母国の言語を聞き流しつつゆっくり目を開いた。

自分はソファのようなものに寝かせられているというのは感触で解ったのだが・・・・
何度か目を瞬かせながら見回せばどこをどーー見ても

「飛行機?」
「おお、起きたようじゃの」
「ここ、飛行機?え?」
「うむ。我が国の専用機じゃ」
国?
専用?
って事はそれを利用できるだけの立場にこの子供は居るということか。

「なんでそこに僕がいるわけ?・・・って中森警部!?」

ありえない。なんてありえない人がいるんだろうか。
こんないかにもこれから騒動がおこりますぜ。しかも確実に渦の中心部に突入間違いなしですぜいっっってな場所に何故熱血KIDバカの貴方が・・・・。

目の前の少女の向こうにいた中森は、多分うまくイスに納まらなかったのだろう。床に赤い布を敷いてその上に大の字になって寝ていた。わー狭そう。そんでもって固そう。
それでも平気で寝ている彼はなんて図太いのだろうか。ささやかに羨ましいなんて思ってしまう。


「お主の名はコナン・江戸川。間違いないか?」
「・・・・・・」
「ワラワはルビー。家名はすまぬがおいそれと口には出来ぬ立場でのぉ」
答えないコナンを気にするでなく、少女は・・ルビーは日本語を操る。
「後ろにおるのはサフじゃ」
「勝手につけた愛称を教えないでいただけませんか。私の名はサフィネルと申します。どうぞお見知りおきを江戸川様」

さ・・さま?

「よいではないか。そんな長い名を呼ぶのは面倒じゃっ」
「・・・ルビー様。名とは人を表す一番大切な言葉ですよ。」
「ふん。ワラワは心を込めてサフと呼んでおるからそれでいいのじゃっっ」
自分の3倍ほどありそうな長身の男に膝をついて諭され少女は唇を噛み締めながらそっぽを向いた。

いや、あのさ、そこで麗しい主従関係を披露してくれなくていいからさ。俺無視してくれてもいいけどさ。
なんかあのー。
居心地悪いんですけどー。

「という事で、こやつはサフじゃ」
「ルビー様・・・」
譲らないルビーに諦めたような苦笑をもらしたサフ。
それにコナンはフと違和感を感じた。

(あれ?この人・・)
ひどく、従者がするとは思えない暖かな笑み・・・・・あ、もしかしてロリコン?
それやだなぁ。
大変大変失礼なことを考えつつも、それでも世の中にはこんな年齢差カップルは沢山いるのだからと、納得することにしてコナンはとりあえず話しをとっとと進めることにした。


「よく解らないんだけど、僕は誘拐されたの?」

どーもイマイチ現状が掴みづらい。
子供を囮に自分を誘拐したと言うのなら、こんなに堂々とこの少女が現れるのは不可解である。
むしろこの少女の偉そうな態度から考えると

「あの子が欲しいーはないちもんめー」並みに気軽にテイクアウトされた気にもなってくる。
・・・被害妄想か?

「ゆうかい?」
だがしかし少女はコナンの言葉にキョトンと首を傾げ

「勘違いされては困るのう。わらわはお主にお願い事があって一緒に来て貰っただけなのじゃ」

(何が「だけなのじゃ」だ!!)
それを世間一般では誘拐と言うんだっつーのっっ。

「お茶に何か入れて人のこと眠らせて、その上で本人の断り無く連れ去ることを一般常識的に何て言うか知ってる?」
この頭のネジがゆるんでるとしか思えない困った少女に懇切丁寧に説明してあげるのはめんどくさい。

だがしかし

「わらわはお主を我が家に招待しただけじゃ」
むんっと胸を張ってゆるぎない返答をなさる少女。彼女を説得しない限り帰れないなんて・・・。
きつい。かなり難題である。

「未成年の場合は特に本人と保護者の許可が無い限り、これは誘拐以外の何物でもないって事を・・・せめて君の周りの大人の人は解らなかったのか?」
普通解るだろ?普通気づくだろ?
それとも何か。この少女の周りは常識やら暗黙の了解やらを全く知らぬ大人ばかりだと言うのか?

「この計画は全てわらわが立てた。たしかにサフは止めたがわらわにも事情というものがあるのじゃ」

サフとやらは一応常識を持っているらしい。一応・・・本当に一応って程度かもしれないけれど。
でもそれを発揮して下さらなかったのなら意味はない。何故っっなぁぜー従者生命を懸けてでもお嬢様の奇行を止めてくれなかったんだ!!
と、被害者のコナンは叫びたかった。

「じゃあせめてその事情を説明してから僕に招待を受けるか断るかの権利を与えて欲しかったんですけどね」
「・・・うむ。すまなかった。あまりに偶然会えたものだからわらわも逃すわけにいかん!と焦ってしまったのじゃ」
それがあの強引なお茶の押し付けでしたカー。←貰ってしっかり飲み干した自分も悪い。

「笑って許してあげるほど心広くないんだけどね・・・とりあえずまず最初にーーーー」

あのお茶に入っていた薬の成分表をください。


俺の命に関わりますから。
そう、せめてそれぐらいはしておかねば・・・あのマッドサイエンティスト少女と、コナン専用過保護&心配性魔人の怒りを削ぐことができん。

二重の意味の命の危機に笑みが引きつるコナンだった。







  つづく  小説部屋

今回はまじでお久しぶりすぎて申し訳ないです。
ものごっつ進みません。やっぱり構成がおおざっぱ過ぎました。
下手に風呂敷広げないように工夫しながら模索中です(笑)
何が問題ってお姫さんの言語が・・予定ではあれです彩雲国のとある方々・・
解る人だけ解ってそんでもって心ん中で「全然ちゃうわっ」と突っ込んでつかぁさい!

2006.12.17
By縁真