『ナイトメアと呼ばれる宝石を知ってるかしら?』
そんな事を聞かれたと相方は言っていた。
(お前がまさしくナイトメア(悪夢)そのものだと思うけど)
とはそれを伝え聞いたときの紛れも無い俺の本音。
『あたしはそれを探してるの。あなたと同じようにね。
もーホント嫌になっちゃうことに1ダースもあるのよ?信じらんなーーい。』
(はぁ?12個だあ?)
『でも野放しにしちゃったのはうちのせいだしー。』
(そうかお前か、さすがナイトメアの名を持つだけあるな)
『ま、世界の平和を守るため立ちあがったラブリーキュートな戦士って感じ?』
(ポケ●ンか?)
なんて忠実に奴の言葉を再現してくれた快斗に着々と突っ込みを入れまくる俺。
そろそろ簡潔にまとめてくんねぇー快斗?
なんて視線を送れば
うっかり伝えそびれがあったら大変でしょ?なんて笑顔で会話の再現を続行
しやがった。
『とりあえず3つは見つけたから後9つ。長いわねぇ本当に。
あ、あなた達ならよく解らないその悪運でぶち当たりそうだから言っておくけど』
(悪かったなよく解らない悪運でっっ)
『ものすっっごく嫌ぁぁぁな気を感じるわよその宝石が近くにあると。
なんか変な電磁波でも出してるのか、脳に影響を及ぼすらしいのよ。
幻覚とかー妄想とかー。
ものすっごく厄介な宝石なのよね。
だから見つけたら即回収して欲しいの。』
(厄介なもん押し付けんじゃねーーっつーの)
なんて暢気に思っていたあの時が懐かしい。ホロリと涙が出そうなくらいにな。
彼女のおうちとやらへ辿りついたのは真夜中だった。
ひっそり静まり返ったその小さな島。
決して大きいとはいえない城は、華美では無い物の、年代を感じさせる立派なも
のだった。
しかしコナンはうろんな目でそれを見上げた。
「・・・まさしく今っっ嫌ぁぁぁな気を感じてる俺ってなんか・なんか・・。」
奴の思う壺!!?
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誘拐された次の日、コナンがまず最初にしたことは。
朝食を終え、のんびりしていた中森警部に遠慮なく麻酔銃をぶっ放すことだった。
「おはよーございます。」
かなりの早起きさんらしい中森警部はとっくに起きて元気にラジオ体操をして、
朝食を食べ終えていた。
すでに今は食後のコーヒー中。
コナンはと言うと明け方まで少々調べ物をしていて、ちょっと遅めに目が覚めた。
「おお、おはようコ・・・・」
ほがらかに挨拶を返してくれた中森はこちらに振り返ろうとしてそのままバッタ
リと椅子から落ちた。
慌てたのは傍で一緒に食事を取っていたルビーとサフである。
「なっどうかしたのかっっ」
「いきなし倒れられましたが、彼は何か持病でも?」
あまりの早業にコナンが麻酔銃を撃ったことに気づかなかったのだろう。
あえて死角をつくよう気をつけたのも勝因だろうが。
「うーん?わかんない。でも丁度いいからこのまま日本に送り返しちゃえばいいん
じゃないかな?」
ニッコリとその笑顔から出たとは思えない言葉を何度か頭の中で反復して、ようや
く2人の主従は理解した。
「そっか。今がチャンスじゃのう!」
と頭が良いのうお主っっと褒め称えたルビーと、
「・・・」
疑わしげにコナンをみるサフ。
この場合サフの態度が一般的であろう。
「彼は危険な状態とかではないのですね?コナン様」
解らないといったはずの子供に確認をとるサフはコナンが何かしたと薄々ながら思
っているのだろう。
「たぶん大丈夫だと思うよ。中森警部ってものすごく健康な人だからさ。」
ニコニコとあくまでも態度をくずさないコナン。
しばらくコナンを見つめ、それから小さく首をかしげたサフは椅子から落ちて放置
しっぱなしの中森警部を運ぶべく動き出した。
「あ、ねえサフさん。僕のことはコナンって呼び捨てでいいよ。」
「・・それは。」
「様づけで呼ばれるのって物凄く違和感があるんだ。」
ダメかな?
中森警部を横抱き(お嫁さんだっこともいう(笑))にしたままサフは困ったよう
にコナンを見ていたが
「私のことをサフと呼んでくだされば・・・」
「うん。解ったーその話し方もどうにかして欲しいんだけどな僕は。」
「それだけは譲りません!!」
「あはは。うんそれも解ったよ。これからよろしくねサフ」
「ええ、こちらこそよろしくお願いしますコナン。」
小さく頭を下げあい、友好を深めた様子の男たちにルビーは唇を尖らせた。
「サフばかりずるいぞわらわの事もルゥと呼ぶがよいっっ」
「へ?」
「ワラワの父上達がそう呼んでおったのじゃ。」
愛称なのだろう。
「いいのかな?」
彼女はこの国の未来の女王様である。いわば一番地位の高い人。
いくら子供同士とはいえ、そんな気軽に愛称なんかで呼ばせて大丈夫なのか?
チラリとサフを視線で伺えば彼はコックリ頷いた。良いらしい。
まぁ彼が同意しているのならきっと・・たぶん大丈夫なのだろう。
「ん、わかったそうするよ。よろしくねルゥ」
「うむ。ワラワこそ宜しく頼むぞコナン。」
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