恋の罠しかけましょ  3



「実は先週学芸会で眠り姫をやったんだ」
「ああ」
頷いてからしまったと思った。
「・・・ナンデ知ってやがる」

いやぁん目が据わってらっしゃるわ〜
「少々風の噂で」
「どこどんな噂が発生してやがんだっ」

内容によっては潰しておかねぇと・・・などと喚きながらつかみ掛かられた。
何故彼はそこまで嫌がる?ってかなんか怖れてる感じ?
キッドに言わせればたかが女装。

「母さんに知られたら・・・」

ああ、それでしたか。
あの面白いことが好きそうなあの母親ならばきっと怒り出すことだろう「何で教えてくれなかったのーー」と。

「時間の問題じゃないか?」
「・・・・・だよな」

どうせいつかバレることだろう。
こんな写真が出回っているくらいなのだから。
とKIDは胸ポケットに入っている「眠り姫」に扮したコナンの写真を思い浮かべた。

「くっそ園子のやろぉ・・・」
どうやらあの写真は園子嬢が撮りまくったあげくバラまきまくったらしい。
それが巡り巡って自分の手元にやってきたわけだが。
自分の所へやってきたときすでにとんでもない値がつけられていた。

とりあえずそいつが持っていたコナンの写真を根こそぎ買い取り(他人が持ってると思うとムカつくし)ついでにこの写真の出所が気になったのでたどっていくうちに彼女に辿り着いた。
そこでこっそりコナンの母に変装して「息子の学芸会の写真」をゲットしたのだ。
おかげで蘭がとった写真とか小五郎が撮ったビデオ(当然ダビングだが)までゲットできた。
もちろん「私が見たって知ったら恥ずかしくて拗ねちゃうから」とコナンには内緒にしてもらっているので裏工作もバッチリ。
完璧である。

ついでに「知らない方があの子の写真を持っているのはちょっと不安ですわ・・・」
とかなんとか言っておいたから園子嬢もそろそろ自粛してくれているはずだが・・・。



「あの写真のせいでよくわからねぇヤロォどもに最近追い掛け回されてんだ」
ええっっ。
写真のことを知ったのがつい最近の快斗はそこまでは知らなかった。
もちろん園子が誰に売りつけたかは調べるつもりだったが・・・・。
追い掛け回されている?
なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

最初は遠くから見ているだけだった。
「なぁんか見られている気がするなぁ」
と思ってはいた。
まさか組織か!?とか警戒したりしてた。

だがある日少年探偵団と分かれたコナンは一人の男に呼び止められた。

「君」
「はい?」
「えっとこの間学芸会で眠り姫をやった子だよね?」
「は?」
なんで知ってやがるんだ?
そんなに有名かあれ?

「この写真・・君だよね?」

「・・・・・・・」

まぎれもない。江戸川コナン消したい過去トップ3に入るほどの嫌な思い出が写真に閉じ込められていた。←まだ数ヶ月しかその名を名乗っていないというのに(笑)
思わず20代前半らしき青年からそれを奪い取り勢いよく破り捨てた。
「ああっっ」
青年が嘆きの声をあげるが知ったこっちゃない。本人の許可なくそんな写真を持っているほうが悪いのだ。


「僕じゃないよ」

その上でニッコリ笑ってそう言ってみせた・・が。まあ今更だよな。破り捨てた時点で説得力の欠片もないっつーの。

「良いっ。素敵だっ俺の眠り姫っっっ」
「・・・・・・」

頭おかしいのかこのヒト?
あの鬼畜な態度がこの人の何かにヒットしたのか、それとも笑顔のせいか?

彼は猛烈に興奮すると勢いよくコナンの両肩を掴んだ。
そうして何度も何度も深呼吸すると勇気を持って禁断のワードを口にした。



「ぜ・・・・ぜひっぜひ俺と・・・・つっっっ付き合ってくださいっっっっっっ」


や・・・ヤローに告られた・・・・。


コナンにとってかなりの衝撃である。
新一時代あれだけ綺麗と騒がれてはいたものの、ヤローからのアタックは一度もなかった。
有る意味周りに女性が群がっていたから恋焦がれていた男性陣が近寄れなかっただけかもしれないが。


「僕男ですけど」
「それでもいいんだーーー」
「僕はイヤ」

キッパリ切捨てれば青年はガーーンと地面に倒れこんだ。

「じゃあねお兄さん。不毛な恋は諦めて現実的に可愛い女の人と仲良くしてね。」


コナンにしては最大級の慰めの言葉をかけ、颯爽とその場を去った。
本当なら猛烈ダッシュでこの場から去りたかったが逆にその方が追いかけてきそうな気がして怖かったので(笑)毅然とした背中を見せ付けて悠々とさる。

まあそんな事がここのところずーーーーっと続いていたのだ。
男に告られるのにいい加減なれてしまった。
逆切れされないような振り方も憶えてしまった。
こんな事憶えたくなかったよ俺は・・・。

「・・とまぁ、そんな訳で、それを見ていた蘭が言い出したわけだ」


『誰かとくっついたフリしたら?』


「ってな」

蘭の考えではくっつけばそのコナンに恋する男達は「諦める」はたまたその誰かに「攻撃」。
確実にコナンにアタックする人数は減ることだろう。
その「誰か」はいわゆる人身御供というわけである。

蘭に言われた瞬間コナンの頭に浮かんだのは白いバカ。
蘭としては人の好い服部を使う気だったらしい。←東京まで来させるのがめんどくさいから却下。だがKIDが使えなかったら迷いなく使用予定だった(笑)



「はぁなるほど読めて来たぜ。俺を使って追い払おうってか。」
「ああ、お前にぐうの根も出ないほどの美人に変装してもらってイチャこいておけばこれでオッケーだろ?」

だから俺がご指名なのですね。
くすん。



「なんだよその不満そう顔は。たまには世界に貢献しやがれ犯罪者。」

「世界ってめっちゃ個人の事情じゃないですカ。」
何を言ってるのやら。そう突っ込めば

「あ?俺を助ける事が巡り廻って世界の為になるんだ。」
胸を張ってそんなことを堂々と言われてしまった。

すっげぇこんな盛大な事言っても誇張に聞こえねぇ。


思わずそう思ってしまった自分が怖い。


「って事でデートは?」
「・・・・ありがたくお受けしますよ名探偵」

このチャンスを逃すはずもなく、また、自分がやらなければ他の誰かがコナンとデートするのだと思うと腸が煮えくり返りそうなのでちょっと辛いけど引き受けますとも。
ええ、ええ。
演技だけどイチャこくよ。
ウソっこだけどラブラブしてやるさ。
あー結構辛いよなそれ・・・・。





つづく



By縁真