恋の罠しかけましょ 4 そんなこんなであっという間にデート当日。 コナンの気分とは裏腹に素敵な快晴。実にデート日和である。 果たしてあの怪盗はどんな姿でやってくるのか? まぁ約束すっぽかすことだけは無いとそこらへんは信じているがなにをやらかすか解らないのがちょっと怖い。 駅前で待ち合わせしていたのだがコナンの方が早くついた。 というのはコナンの主張であり、実際快斗はとっくの昔にここらへんに存在していてちょっと離れた場所からコナンの登場を待ちかねていた。 約束の15分前に到着したコナンの律儀さに感動し、いつもより可愛らしい姿(快斗主観)に感動し。 あれ俺を待ってるんだよな?と現実にドキマギしたり。 大忙しだった。 そんな姿をきっちり15分眺めさせて頂き、それから時間ピッタリに優雅にコナンの背後をとった。 「よぉ、ぼうず」 ハッと振り返る小さな子供。 その瞳は現場の時の様に鋭く青く輝いて、唇が勝手に笑みを刻んでしまう。 「お・・・お前・・・」 一瞬で正体を悟ってくれた子供にさすが名探偵と内心称賛しつつ 「ふっふっふーお待たせしました〜愛しの恋人参上ですよ〜」 ニンマリ笑って右手一本でひょいっとコナンを抱き上げた。 怪盗の時はしたくてもしたくても出来なかったこの行為。今はしてもいいだろう?何せ恋人同士だもんな? たやすく抱き上げられたのにムカついたのか恥ずかしいのかバタバタ暴れるのを簡単に押さえこまれ、余計にムカムカするコナンを見下ろし快斗は微笑む。 ポーカーフェイスの面を被った爽やかな笑み。どれだけの感情を押さえ込んでいるのか目の前の子供は知るまい。 コナンはそんな快斗に余計ムッとしつつも周りに潜むストーカーもどきに聞こえない声でボソボソ文句をつけた。 「なんでその格好できやがった・・・厭味かそれは?」 コナンは可愛いもしくは綺麗な人に変身してこいと言った。 でも『女性』なんてひと言も言わなかったのだ。 (ふふんウッカリさん) ちなみに「厭味」というのはあれか?もしかして『工藤新一』に変装していると思われている? 「おれは女を指名したはずだけどな」 「あら嫌だ指名だなんて。でもぉコナンちゃんったらうっかり『女性』って指定し忘れたのよぉ。」 「言葉だけ女らしくたって意味がないっつーか余計ムカつく。・・・マジで俺言い忘れたのか?っつかフツー言うまでもないだろ?」 (男の俺が恋人役を頼むのだから当然女性・・・。ってそうだよな。 ストーカーは男だもんな。勘違いもするよな。) 密かに内心納得してしまったりするコナンをよそに快斗はうっかり発言を口にした。 「そ・れ・にー実在しない女より身近に存在する男の影のほうがヤローどもには効果的デショ♪」 にっこりのたまったその言葉でコナンはたくさんの事実に気付いてしまった。 「・・・てめぇ」 箇条書で言うなら ・素顔 ・ストーカー軍団に知り合い(はたまたこいつの顔を知ってるヤツ)有り ・この先関わる気満々 瞬くまにフルフル震え出すコナンを見て (しまった・・・) 快斗はようやく気付いた。 そうコナンが名探偵であるが所以。見事な推理力で現状況を把握してしまったことを。 「そうかいつかのあの変装の時・・・」 気になってはいたのだ。中森警部が顔をひっぱったのに変装が破れなかったことを。 「それが素顔だな」 「・・・さぁ?」 軽く肩をもちあげてすっとぼけてみせたがコナンに効くはずがない。 「素顔なんだな。まさか世の中にいる3人の1人がお前とはな・・・皮肉だな」 確かに3人同じ顔の人間がいると言うが 「そこまで似てるかなぁー?」 周りから言われ、よもや当人からも言われるとは思わなかった。 「そりゃカラコンして髪の毛弄ったらあら〜?いけるじゃぁんって思ったけどさ」 おかげで中森警部にヒッパラれた時助かったのだが。 「いけるじゃあんじゃねぇぇぇぇぇ。とっとと変装してこいっっそんでもって降ろせっっっ」 「あはは。まあまあ、俺でもいいじゃん?とりあえずデートコースはバッチリだからね。この快斗君に全て委ねて大人しくしてよーね」 コナンの怒りをかるぅぅくいなして、快斗は次の瞬間耳元に口づけるように囁いた 「な、新一」 こんな町中で、こんなガキにわざわざ悩殺低音ボイス。 黒羽快斗。貴重な時間を一秒たりとも無駄にする気はないらしい。 有り体に言えばなりふりかまっていられない。 (こんな機会もー二度とこねえに決まってるもんな。今日一日でばっちり落としてやるぜ名探偵) 全くもって余裕のない怪盗さまだった 対するコナンはといえば先ほどの声に背筋がゾクッとしてしまい (マジかよ。こいつまさかマジモードで恋人役まっとうするつもりなのかー?) 見事な勘違いでビビッていた(笑) 何だかんだで初デート。 背後にぞろぞろ蠢く半ストーカー集団の気配を感じつつ、コナンは快斗に手を引かれさくさく進んでいた。 まぁいい。 いざとなれば後ろのヤツラを押し付けてもこいつなら何とかするだろう。 そう安心できるから。自分の選択は間違っていなかったと思う。 こいつが怪盗であることは今だけ目を瞑っといてやろう。 ああ、なんて俺は心が広いんだろうな!!←やけっぱちに自画自賛(笑) つづく |
By縁真