恋の罠しかけましょ 5 「まずはデートの定番。映画ねー」 「は?」 「え?遊園地よりマシでしょ?動物園も今日は天気いいから人で一杯だろうし」 「・・・確かに」 人ごみが苦手なコナンにとって映画はありがたい。 何せ混みあっていない。更には涼しい。ついでに疲れない。 「いいのか?」 「ん?」 「だってお前動く方が好きだろ?」 「あー。別にジッとしてるのも嫌いじゃないよー。」 そりゃ遊園地のほうが個人的に楽しめるけどね〜無理して行くほど好きな訳ではない。 というか気を使ってくれちゃったのですか名探偵!?←驚愕(笑) 「ってゆーかすでに前売り券はゲットしておりました♪」 「手抜かりねぇなお前。」 「デショ♪恋人に最適〜ついでにコナンの好みも把握済みっっですからこの通りっ」 「・・・・・おおっっっっっっ」 密かに見たかった洋画である。 推理仕立てのアクション映画。 DVDになったらこっそり買って工藤家で見ようと目論んでいたその映画のパンフレットにコナンは目を輝かせた。 先週公開というその映画は今のところ評判は中々である。だがしかし 「混んでそうだな・・・」 「ふ、もちろんそこら辺も抜かりありません!見よっこの見事な手際をっっ」 ビシィっと突きつけたのは 「あ。先取り。そっか最近ネットで席まで予約できるようになったもんな。」 「便利だよねぇ。って事でこの時間までに行かなきゃ駄目だからね」 「ああ、余裕だな。久しぶりに良さげな映画がある時でよかったなー」 腕時計を見て映画館の距離を考えれば快斗の組み立てたプランが完璧であることが伺える。 デートの定番として背後のヤツラも文句言えないだろうし、何より自分が楽しめる。実に良いタイミングでこんな事態が起こったものだとちょっぴりラッキーと思ってしまうコナン。 「あんまりいいの無かったら映画じゃなくて美術館とかテーマパークでも良かったんだけどね」 ほら陶芸とかを体験とかできるところあるじゃない?と名を挙げてみせた場所はどれも興味深く 「今度行こうか?」 と尋ねられたときコナンは思わずコックリ頷いてしまう。 なんだこいつ。ここまで俺の好み把握してくるとはやるじゃねぇかっっっ。とはコナンの心の叫び。 インドア派のコナンではあるが、アクション映画は好きだし。絵画を見るのも嫌いじゃない。 やったことの無い事に挑戦するのも大好き。 知らない人は多いが結構多趣味なのだ。 「って訳で後ろが付いてこれる程度のスピードで動くからちょっと早いけど映画館に向かおうか?」 「おう」 思わず頭から抜け落ちていた背後のヤローども。 そうだった。あれが居たのだ。 意図してではなく、自然に手を繋ぐ2人に背後から嫉妬と絶望交じりの叫び声が聞こえるがもちろん前方の2人が気づくはずも無く。 のんびり歩きながらウキウキとお互いに取り留めない話を始めたのだった。 「くぅぅぅ。やっぱ面白かったーーー」 「うんうん。予想以上だったねー。これならもう一回みてもいいな」 「確かに。やっぱDVDは買いだなっっ」 「あ、買ったら貸して〜」 「いいぜ。ってかうちで見ればいいし」 「マジ?よーしそん時は快斗君が腕を振るってご飯を作ってさしあげましょーぅ」 「店屋物よりかはマシそーだな」 「あんなのと一緒にしないでちょーだい」 久しぶりにヒットした映画のおかげで2人の気分は高揚していた。 探偵と怪盗。なんて縛りも 小学生と高校生。なんて隔たりも 全て吹き飛ばして2人は赴くままに語りまくる。 そのままの流れで昼食をとりにハンバーガーショップへ向かう。 「コナン何にするー?」 「ん。このセット」 「おっけ。コーヒーでいい?」 「ん」 先にそれだけ確認して席取りをコナンに任せ長蛇の列に並ぶ快斗。 自然な流れで大変な役割を持っていく快斗にコナンは気づくたびに溜息をつきたくなる。 (どこまで完璧なんだあいつは・・・) 顔もよし(自画自賛か?) 頭もよし(怪盗なんか出来るくらいだし) 運動神経もよし(人外なほどにな) 性格は明るくて気配り上手。 一緒にいて全く疲れないコナン(新一)にとって非常に珍しい相手。 「あいつ女だったらなぁ」 心底惜しいと呟いてしまう。 だが女だったらそれはそれでコナンの方が気を使ってしまうのだろう。 男の自分が動かなくては、と。 って事は俺が女だったらベストだったってことか? そこまで考えてムムッと嫌な気分になる。なんで俺がわざわざ女にならなきゃならねーんだ。 「お待たせーって何変な顔してんの?」 「いや、さんきゅ。そーいやチケット代金も払ってなかったな。清算は最後でいいか?」 「別にこのくらいおごるよ?」 「却下」 「はいはい」 憮然とした顔のコナンに苦笑しながら頷く快斗。 こんなところもムカつくくらいに優しい。 俺だったら・・多分ムリヤリ奢る。ああそうさ。わがままで悪いな。俺はお子様に金を出させるっつーか出してもらうのは嫌いなんだーーー。たとえ体が小さくなっただけだとしても。きっちり子ども扱いして「俺が払うよ」とニコヤカに言うさ。←己を良く知っている(笑) それを目の前の男はきちんと同じ年の男として扱ってくれて、自分の自尊心を尊重してくれるのだ。 サラリと。何気ない態度で。 悔しい。本気で。 「なぁんでコナンちゃんはいきなりぶすくれているのでしょうねぇ」 「自前だっ」 「あはは〜いつもはそんなほっぺた膨らましてませーん。コーヒー美味しくなかった?」 「ファーストフードに期待はしてない」 「ま、ね。後ですっげー上手いコーヒー屋さんに連れてってやるからさ。な、機嫌なおして映画の感想話そうよーー」 まだ話したりないとばかりにウキウキしている快斗にそれ以上1人で怒ってるのもバカらしくなり 「だな。ってかあれ続編でねぇかな」 「んー難しいねぇ。でもあれ本が原作だよね?もしかして続きでてるかも?」 「おおっ後で本屋行くぞっっ」 「らじゃっ」 2人して本が気になって急ピッチに食事を進める。 そんな互いにフイに気がついて顔を見合わせ笑ってしまった。 「本屋は逃げねぇぞ」 「同じ言葉をお返ししまーす」 つづく |
By縁真