真実への扉 前編

俺は最初から知っていたのかもしれない真実を。


まだ明日まで2時間ほど残した今日。

小学生である自分は普段なら保護者の蘭にベッドへ直行を命令されているはずだった。

今何故自分はこんな所にいるのだろうか?


「知ってるか?ここって幽霊が出るんだってさ。」

そんな事を言ってる奴らが沢山いた気がする。

でも本当に幽霊が出るか昔試した自分は鼻で笑っていた。

いねーって。



ある病院の裏庭。昼間は木々が光をいい感じにさえぎり患者達が思い思いに

散歩をする明るい庭園だ。

「コナン君っ。」

まだ年若い男の声が聞こえた。自分を呼ぶ声。

こんな夜中に呼び出した奴。

「こんばんは。」

小学生らしく答える。

彼はまだ自分の正体を知らないから。

「こんな時間に呼び出してごめんね。」

「ううん。仕方ないよね。忙しいんだから。」

「ごめんね。本当に。君しか頼る人がいなくて・・。」

この間知り合ったクラスメートの兄。

彼は医者だ。まだ若いから医者になりたてなのだろう。

そして俺は彼と秘密を持っていた。

彼の弟の事について。

もちろん、電話とかでいいと俺は思ったのだがそうはいかないらしい。

まあ確かに誰かに聞かれては困る話ではあるだろう。

電話だとそういう可能性もある。

だからといってこんな夜中を指定されても俺は大変迷惑なのだが・・。

「信也は・・弟は見つかりそう?」

「まだ何とも・・。」

聞き難そうに聞く彼に俺も言いにくそうに答える。

捜査は難航。仕方ないと言えば仕方がない。警察にも探偵にも頼れない。

頼みのつなはこんなお子様たった一人。

彼の心境は計り知れない。

家族には夏休みの合宿に参加すると言ってあるらしい。

目撃者の俺と彼ただ二人だけの秘密。

弟の信也君が何者かにさらわれた。

たまたま俺といた時だったため俺はただ一人の目撃者となった。

そして彼に届いた脅迫状。

『医者の道をあきらめろ。』

病院をやめろという簡単な物ではない。

今まで医者になることを夢みて必死で勉強してここまで来た彼なのだ。

もちろん弟にはかえられない。彼は諦めると言い切った。

だがその後連絡の指定がこないためその意思はまだ先方に

届いていない。



信也君がさらわれてもう2日。

おとといの夕方さらわれて昨日と今日。もうすぐ三日目に突入だ。

もちろん警察に連絡しようとした。だが脅迫状には誰か他の人に

このことを言ったら信也君の命はないとかかれてあった。

打つ手なしだ。せめて向こうと連絡がとれれば・・。


「ごめんね。僕なんにも出来なくて。」

「そんな・・。こちらこそこんな事に巻き込んじゃって。」

二人でうなだれる。はあ・・二人で大きなため息をつき顔を見合わせ

小さく疲れたように笑う。早く。早く見つけないと。


さらった男達の顔は俺しかみてない。俺は打つ手はうった。

即座に車のナンバーを照合し、誰の物か調べた。だが盗難車ではどうしようもない。

次に彼のライバル関係者。多すぎる・・なんでこんなに敵をつくってるんだこいつは。

柔和な顔立ちの彼だが実はやり手らしく、そつなくなんでもこなす為か敵は結構いる。

そして結構整った顔のため、女関係での敵もいる。

病院内にもいるようだし、学校時代の友人にも敵がいるようだし、

不思議でたまらないくらい敵がいる。

なんでこんな奴が世の中やっていけるんだ?



「コナン君?」

「あ、え?何?ごめん聞いてなかった。」

「いいよ。眠いんだろ?」

小学生はもう夢の中のはずだ。確かにいつもならすでに寝ている。

他事を考えていた俺はめんどくさいからそういうことにしておく。

「うん。ちょっと目がしぱしぱする。」

えへ。と目をぱちぱちしてみせる。

そうすると彼は優しく笑い頭をなでた。

「可愛いね君は。」

一瞬危険な目をひらめかせる彼に俺は気づいていた。

ウサギをみるオオカミの目だ。

だからそれに乗る。

「えっとあの・・僕もう帰るね。」

怯えたように彼から離れ近づく手にぴくりと身体をすくませる。

「また明日。」

「・・・・うん。」



当日の夜と昨日の夜と今日の夜。

もう三日続けて会っている。彼がどんな人間なのか俺なりに把握した。

そして、使えるつてを使って犯人を見つけだす前に俺はかなり確信していた。


犯人がだれかを。


「こんばんわ。コナン君。」

「こんばんわ。お兄さん。」

今日も彼にあう。

だがいつもと違う雰囲気の彼に俺は来たな・・と思った。

「君は誰にも言わないんだね。」

「なんのこと?」

いつもより危険な空気をはらんだ彼は俺に近寄り顔を両手ではさみこんだ。

「普通君くらい小さい子ならつい親とかに相談しちゃうんじゃない?」

「それで?」

俺もちょっと空気をかえてやる。小学生から探偵の空気に。

相手も感じとったのかおや?と目を見張った。

「いや。君がぺらぺらしゃべっちゃう子じゃなくてよかったよ。」

優しく笑う。でもお兄さん目が笑ってないよ。

「俺がしゃべったら・・。信也君が殺されるよね。

そしたらお兄さんなんて言う?」

「うーん。不吉なこというなあ。君のせいじゃないよ。って言うかな。」

それはそれはお優しい答えで。

「そうだろうね。お前はこういうんだろ『信也は君が他の人にしゃべって

しまったせいで殺されたんだ。でも君のせいじゃないよ気にしないでいいよ。』

ってね。」

彼の手から頭を抜き、前から吹き上げる風に髪と服をはためかせる。

「君は一体何を言ってるんだい?」

小首を傾げる彼に俺は両手をズボンのポケットにつっこみ最終通告をだす。

「今まで何人をそうやって貶めてきたのお兄さん?あなたは人が傷つくのが好きなんだ。

身体じゃなく心がね。だからこそここまで敵を作ったんだろうな。」

タンタンと述べる。調べた事実を。

「君は・・・」

何者?といいたいのだろうか。今まで彼の本性に気づいたものはいないのかもしれない。

傷つけられて初めて彼がどんな奴か解るのだろう。

相手の目をまっすぐ見つめ真実をつきつける。

「あなたが弟さんをさらった犯人ですよね。東雲信一さん。」

「コナン君新手の冗句かい?なんで僕が?」

まだしらを切るつもりか。

「はっ信一ね。俺と同じ名前かよ嫌になるよな。」

うつむきクっっと笑う。

あまりの豹変に彼・信一はビックリしたらしい。そりゃ可愛い小学一年生を

罠にはめたつもりだもんな。ビックリもするだろうな。



「まあ、唯一の救いは字が違う事じゃないかしら。」

背後から一人の少女がやってくる。

「女の子・・?」

「そうだなまあ、救いといったら救いだが。自分の名を人に呼ぶのって気持ち悪いな。」

背後の少女灰原哀と会話をする。俺と灰原を呆然と見つめている彼からは目を離さないで。

俺の斜め後ろから、チャキと音がする。

「灰原・・ぶっそうなもん持ってきたな。」

「あら単なるおもちゃよ。」

音だけでわかる。本物の拳銃だ。彼女にとってはなじみのあるそれは平和な日本では

まずおめにかかれない物だ。一体どこで手に入れてきたのやら。

「あなたの悪事はもうバレてるわよ。」

「俺に言ってない事あったろ?」

信一は目を光らせる。小学生二人とあなどっているのか。まさか拳銃が

本物とは思っていないのだろう。

「そりゃ全部は言ってないよ。危ないからね君が。」

「・・・そうだな例えば」

「脅迫状が家にも届いてた事・・とかね。」

目を細め灰原が俺の後を引き継いでいう。

「君には頼もしい仲間がいたようだね。」

灰原を見てニコリと笑う。そのくらいで犯人にされちゃ困るよと言わんばかりに。

「あなたは、弟さんをさらって俺の傷つく顔を見たかった。

どちらがついでかしらないがどうせ殺すなら家からお金を頂こうと思った。

そうだろ?」

「根拠のない推理はたんなる仮説だよ。君はなんでそんな風に思ったのかな?

僕がそんな事するように見える?」

確かに見えないな。それが彼の武器だから。この顔で世の中渡ってきたのだろう。

悪い事なんか絶対しなそうなこの顔で。

「根拠は・・そうだないろいろあるが一番の根拠はあなたが過去友人達にしてきた

事実かな。」

「すごいなそこまで調べたのかい。この短期間で。」

「俺には仲間がいるからな。」

ニッと笑ってやる。

「君が他の人にしゃべってるなんて思わなかったよ。」

「そうだろうな。あんたの注意は小五郎のおっちゃんと蘭にのみ行ってたからな。」

話すなら家族だ。普通子供というのはそうだろう。まさかこんな重大なことを

友人に軽々しく話すことはない。

それに細心の注意を払って電話では連絡していない。実際にも会っていないから。

パソコンのメールでやりとりをしていた。新一の名前で。

それならどう調べてもつながりは見つかるまい。

「そんな事まで犯人はしていたのかい。よく気が付いたね。」

一体いつまでしらを切るつもりだろうな。

「まあな。視線を感じたしな。」

一応まだ誰が犯人かもわからない段階だったから気を付けていたのだ。

「でも今バレたよね。これでもう僕の弟は帰ってこないよ。」

目を伏せ悲しそうにつぶやく。演技はもういい加減にしろ。

「何故?犯人はあなたなのに?」

「僕じゃないよ。きっと犯人は君が人にしゃべったことにすぐ気づいて弟を・・。」

唇をかみしめる。だから連絡がこなかったんだ。

と悔しそうにつぶやく彼。ここまでされると普通の人なら自分の考えが

間違っていたのかもと心がゆらぐかもしれない。

だが・・・



「いい加減にしなさい。もうバレてると哀君が言ったじゃろ。」

灰原が来た方からもうひとりあらわれる。少し出た腹に白衣。

「博士。あなたは来ないでと言ったはずだけど?」

「すまんな哀君。心配でついきてしまった。」

小学生の女の子に怒られしょげる阿笠博士。まるで孫と祖父だ。

「東雲信一さんじゃったな。あなたのせいでノイローゼになった患者さんが

今大量にいるらしいな。」

「学生時代は登校拒否。はたまた自殺においやり。」

「そして今は弟の同級生を陥れる。立派な犯罪ね。」

実際手を下したわけではないため全て人々からの追求を逃れている。

悪気はなかった。僕は親切でいった。逃げ道をきちんと残した計画的な犯行。

「まったくまいったね。でも弟が戻ってこないっていうのは本当のことだよ。

だって僕にも仲間がいるんだからね。今の状況をみて信也をどうにかしてる

筈だよ。」

ニコと優しく笑う。弟に対する愛情のかけらも見せない彼に俺はむかついてしょうが

なかった。

(このゲスがっ)

「ばーろー。みすみす死なせてたまるかってんだ。」

ポケットに手をつっこみ、俺は信一の背後をみつめた。

「よっ。服部平次ただいま参上やっ。」

「おっせー。」

まさか高校生の友(しかもちょっとはしれた名探偵だ)がいたとは思わなかった信一は

慌てて声が聞こえた背後を振り返る。

(知ってるこの顔。新聞で見た。西の服部東の工藤。高校生探偵だ。)

「まさかこんな大玉が隠されていたとはな。そうか毛利さんのお知り合い

だから君とも知り合いなんだね。」

探偵つながりかとうなづく。

「いんや。俺は個人的に知り合ったんや。なっくどお。」

「うっせーよ服部。だまってろ。」

「なんやせっかく大阪からバイクぶっとばして駆けつけてやったっちゅーのに

相変わらず冷たいなー。」

むう。とする服部に俺は反対にムッとする

(バーロー。この場面で工藤と呼ぶやつがあるかっ。)

「さて、隠し玉も見せて頂いたことだし僕は帰るよ。」

信一はいつもの笑顔をみせるとこちらへとつかつか歩いてくる。

そうはさせるかってんだ。

「だめだよお兄ちゃん。もう一つ本当の隠し玉が残ってるんだから。

それも見ていってほしいな。」

ニコリと天使の微笑み(と皆が呼ぶらしい)を浮かべる。

「まだ?これ以上の隠し玉・・というとまさか毛利小五郎が出てきたりするのかい?」

まさかね。と苦笑する彼に俺もまっさかあと手を振って笑う。

「もっと凄い人だよ。」
    

       

あとがき

前編ですー。さて「もっと凄い人」誰でしょうーー。
ってバレバレっすね(笑)
まあ、お楽しみにしてて下さい。

いやあ。書いてて楽しいわこの話。
最初何も考えず書き出したからどうしようどんな話しにしよう・・
とか悩んじゃったけどいやはや自分が書きたい話に
しあがりそうです。
ようするにお気にを全員活躍させれば気がすむらしい(爆)

ああ。でも自分の欲望のまま書いてるから皆さんついてこれないかも(笑)
一応シリアス目指してみました。初シリアスかもです。

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