愛と感動のひと騒動 其の5
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「ヘヘーイそこの可愛子ちゃぁぁん。迷子かなぁ?なんだったら僕が
案内してあげるけどー?」
「・・本当にそう声かけたのか?」
快斗の嫌そうな問いかけに隆はへらりと微笑むとコックリうなづいた。
「今時の若者風でしょ?ずっと研究してたんだよね」
若者風っていうか・・・馬鹿者風?
「それで相手の人はどういう反応を?」
「え?もちろん感激に目に涙をうかべて僕を見つめたよ」
・・・・へーすげーなーそれは。
一般的世の女性なら引く。
隆の勝手な思いこみだろうと快斗は決定した。
「それで?」
「えっとねー彼女、駅から地上になかなかでれないって困ってたんだよ。
それで何度もホームに戻ってきて、それで丁度売店で買い物をしていた僕が声を掛けたんだ。
多分5回くらいその売店の前を通りすぎてたからね」
親切だろう。この男まったく下心がみえないから。
だがあんな言葉をかけられてその女性は本当はどんな反応を示したのだろうか?
「本当にそう声かけられたの?」
呆れたというか白けた瞳で綾子を見つめた。
「ええ。私、とっても感動しましたの」
「・・・へー」
感動。どこらへんに感動?
「だってあんな今時風な方が私なんかに声をかけて下さるなんて・・」
・・・・。ちょっと違う気が。
「その方、隆様とおっしゃいました。」
「名字は?」
「え?今時の方は下の名前だけしか教え会わないと隆様に聞いたのですけど?
はたまたあだ名をつけてそれだけを教えるという事もあるそうですね?やはり
昔のように本当の名前は大切と言うことでしょうか?」
「さあ?僕子供だからわかんないや」
分かりたくもないし。
「隆様はとてもご親切な方で、地上までエスコートして下さいましたの。」
「うん。その後は?」
「え?はい、その後はすぐに手を振って別れましたわ」
「ふーん。」
ナンパではなかったということか。
だがこの話の中にはもう一度会う約束がはいっていなかった。
「それで?また会ったの?」
「何故おわかりに?そうですのケーキ屋を探していたのですけどやはりわからなくて、人様におたずねするのにも勇気が足りずまた結局駅へ戻ってきてしまいましたの、そこに用事をすませた隆さまがいらして・・」
「なるほどね」
「隆様もそのケーキ屋さんはご贔屓にしていらっしゃるとかで、簡単に見つかりましたわ。そこで一緒にケーキを食べまして・・・知っていましたか?ケーキやさんの中でケーキとお紅茶が飲めることっ私初めてしってとてもびっくりいたしましたの」
・・ごめんケーキ屋って普通そう言う物だと思ってたから。
家まで配達してくれる方がびっくりしたよ俺は。
「それで?」
「隆様のお優しい事といったら・・・」
感激の余りに震えるこぶしを握りしめ、綾子は言った。
「なんとケーキを分けてくださいましたのよ」
「はい?」
「私持ち合わせが足りず一つしか頼めませんでしたの。でも今まで食べた事の無い種類が他にも沢山あって気になって仕方なかったのです。そしたら隆様が半分こにしようと。素晴らしい案です。一度に二度美味しい。」
私考えもつきませんでしたわ。
「・・・・」
そろそろ笑みをつくるのにも限界を感じてきたコナン。
「しかも隆様は2つ頼まれたのに二つとも半分下さいましたの。なんて心の広いかたでしょう」
「それで約束したの?」
「え?言いましたっけ私?」
「うん最初に『隆さんとの約束がぁぁぁぁぁぁぁぁっ』って髪を振り乱してたし」
「あらお恥ずかしい。それで帰り道に家が近いということを知りまして、
それでまた会いましょうと約束したんです。あの大きな木の下で」
「あの大きな木?」
「平和の木ですわ。とても大きくてまるでお相撲様のようにゆったり構えていらして、心の落ち着くあの木の下で」
「ああ。平和の木ね。うん知ってる」
「よかった。では是非そこへ行ってくださいませ。」
「・・・は?」
ませときたか。断る余地もないほどに決定づけられコナンは目を丸くした。
「よろしくお願いしますねコナン様」
「という訳で頼むよ黒羽君」
同じころ同じ運命にあっていた男。
このまま逃げ帰ってもいいのだが、何故かこの男にはバレて執念深く追いかけられそうな気がして恐怖を感じる。
「この手紙を是非綾子さんに渡して欲しいんだ。」
渡された手紙を本人の了解も得ないまま勝手に読む。
「・・・・」
意図はとてもわかる。
中には手紙というより自分のプロフィールがずらずらと書かれていた。
そして電話番号と住所、自分の写真も同封してあった。
快斗のとりはだを誘ったのは最初の文句『愛しい人へ』
・・・すっげーよあんた。
「それで?綾子さんってどんな人だよ」
もう疲れてさっさと引き受けて終わらそうと思った快斗。
だがそんな事を聞いてしまった快斗は延々と時間ぎりぎりまで綾子さんのすばらしさを聞くはめになってしまうのだった。
「彼女は可憐で妖精のようで――――――――――」
「私がここを出ると警報がなりますの。多分コナン様なら大丈夫。窓からなんとかでれるとおもうのです」
俺に窓からおりろとこのお嬢様はおっしゃるわけね。ふーんこれだから金持ちってやだな。金持ちの息子はそんな事を思う。
「それでこれを隆様に」
渡された手紙には自分がどうしていけないか・・やら父の悪口がえんえんと書いてあった。封筒には律儀に自分の名と住所がかいてある。
「それで?隆さんってどういう顔してるの?」
断ると髪で首を絞められそうな気がするのでとりあえず受け取り、尋ねた。
「そうですわね・・・仏様の様な人・・でしょうか」
うっとり空を見つめる綾子をよそに残念ながらコナンの頭に浮かんだ仏様は死体だった。
仏=亡くなった人
しょせん探偵なんてそんなもの。
ごめん隆さんあなたの顔想像つきません。
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