愛と感動のひと騒動 其の7
「まあ。まあまあまあまあまあまあまあまあっ。隆さんも私と同じような状況にっ」
手紙を開いた第一声。
コナンはそのまま去ろうと思っていたのだが何故か綾子に無理矢理引き留められソファに埋もれていた。
(帰りたいのに帰れないぃぃぃ(涙))
ちょっと散歩に出ただけなのにーー
「まあ伊集院隆様とおっしゃるのね。私まだ名字教えてませんのに。親切な方。
あら。スリーサイズまで。あ・・思ったより重いんですわね。まずは文通から始めませんかっですって。まあまあどうしましょう。恥ずかしい」
清き正しき男女交際。
どうも時代錯誤な二人にぴったりと言うかなんというか。
「ああ大変そうだね彼女。お父様が厳しい方みたいだよ。ふーん。それは可哀想に。ケーキを勝手に食べてしまうなんて酷いよね」
・・・・・。
「あれ?これは写真。ほら見てごらん黒羽君。これが彼女の顔だよ。おっと惚れちゃだめだよ。僕の大切な人なんだからね」
・・・・。
「なあ。」
「おや?見ないのかい?こんなに素敵な女性を拝見する機会なんてなかなかないよ」
「なあっっ。俺は帰りたいんだ。もういいだろう?」
「ダ・メ」
「・・・・・・ぐぁぁぁぁぁ。何故だっ」
「彼女に僕の写真を届けて欲しいから。ほら住所は書いてあるから名字はわからなくとも大体わかるだろう?」
「俺に探せってか?」
「うん。」
あっさり言ってくださるぜこのお坊ちゃん。
「やだ」
「ダメ」
「いーーやーーだーー帰るーー」
「ダァァァァメェェェ」
二人でぐぐっとおでこをくっつけ会いにらみ合う。
「ぼっちゃま旦那様がお呼びで――――――――――きゃぁぁぁぁぁぁぁくせ者っっっ」
くせ者?
あまりに時代劇かかった言葉に快斗はそんな場合でもないのにブハッと吹き出してしまった。
であえであえーーと手をパンパン叩けば完璧なのに。
と暢気に思っていたらその女性。乳母は本当にやった。
「であえであえっっっくせ者じゃぁぁぁ」
まてぇぇぇぇぇぇここは何処だっっ21世紀じゃないのかっっっ?
いやその前に逃げるべきだな。
「っつー事でさらばだおぼっちゃんよ」
刀を持った侍が登場するまえにその部屋の窓へと足をかける。
「ダメって言ってるだろう?黒羽君?」
優しげな声が背後から聞こえた。
だが声とは裏腹なまたもやキンキンに先がとがった鉛筆が跳んできて快斗は心底怯えた。
なにせ避けなかったら当たっていた。
本気で。
その鉛筆は開いた窓から外へ飛び出し近くの木へとぶつかった。
そのまま落ちるかと思いきや木にぶっささった。
こ・・・怖い。
木に負けない威力。
窓が開いていなかったらきっとガラスにヒビをいれただろう。
「ぱあや。彼は僕の客人だくせ者なんかじゃないから丁寧に歓迎してあげて欲しい」
「それはテメーにいいてーよっっ」
どこの世界に客人に鉛筆なげる奴がいるかっっ。
「うるさいなぁ。まだまだ鉛筆はあるからね。言葉に気を付けた方がいいよ」
紛れもなく脅しだと快斗は感じた。
だが言った本人は事実を述べたまでであり、脅しなんてほんのカケラも思っちゃいないだろう。
「帰らせてぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「お・・お父様。いつお帰りに?」
「今だ。綾子さあ来なさい」
「どこへですか?」
「お前に服を買ってやろう。」
「まさか誘拐?」
「お前を誘拐してなんの利益が私にあるのだ?」
「いえまるで飴をあげるから付いておいで・・と言われたような気がしたもので。突然にどうしたんです?」
「なんとなく服を買ってやりたい気分になっただけだ」
「嘘ですね。ドけちなお父様に限ってそんな事この家に怪盗KID様が侵入する確率より低いですわ。」
「そちらの体勢は万全だと言ったはずだが?100%確実に奴はこの家に入れないっっそれより低いと言うことは奴が侵入する確率は0%どうだっそれより低い確率と言いたいのかっっ」
「ええ。ようするにお月様が西から登ったとしてもそんな事はありえないと言いたかったのですわ。」
「お前知らなかったのか?太陽は東から昇るが月は西から登るんだぞ」
「・・・・・面白い冗談ですわね。昔の私なら引っかかっていたでしょうけど今の私は違います。日々あなたの嘘にきちんと対応できるよう鍛え上げてますから」
「つまらん。とりあえず来い。服を買うというのは建前でもう買ってきた。これ来て飯食いにいくぞ」
「はい?」
「そうそうそこの坊主も見張っててくれたお礼に夜ご飯をごちそうしてやろう。」
「ていっちょうに辞退します。それより帰りたいんだけど僕」
「そうか?残念だな。それではさらばだ少年」
とても残念そうに見えない顔であっさり手を振られ、コナンはまるでスキップでもするかのような弾む足取りで部屋を飛び出した。
その瞬間。
「婚約ですって?何を勝手な事っっっっっっっ」
「ちっがうよーん。後はこの書類に判子押せば婚姻完了っっ。婚約すっとばして結婚でーす。」
悪い虫が付く前にこういうことはしないとねぇ。
「っていうかかなり昔に一度言ったはずだが?お前には一応婚約者もどきがいると」
「ええ。伺った記憶はありますけど信じておりませんでした。とりあえず私気になる方がいるのでこの話無かった事にさせて頂きます」
「ダメだ。」
「嫌です。」
にらみ合う父と娘。
それを扉の外から聞いてしまったコナンは帰るに帰れず立ち止まってしまった。
どうしてもはずせない用事というのはこのことだったのか。
もしかして先方宅へ行って結婚を早めるよう頼み込んできたのかもしない。
しかし今日今からって・・なあ。
たとえ後で式をするとは言っても顔も見たことのない男と突然籍を入れてうまくやっていけるはずがない。
「お父様は私の事が可愛くないんですね」
「可愛いぞ。」
「嘘です」
「なんでだ?どこぞの馬の骨に捕まって貢がされたあげくポイ捨てされでもしてみろ。お前なんかすぐに世を儚むだろう?そうなる前に手を打っただけだ。父の愛がわからんかっ」
いや綾子さんなら世を儚む前に復讐に燃えるだろう。
「わかりませんね。全く。」
「ええぃっ。とりあえず来いっ」
「嫌ですっっ」
「高峯。高谷。高屋敷。三高トリオこいっっ」
「「「はい」」」
「綾子を車に押し込め」
「「「承知致しました」」」
よもや最初に言っていた誘拐ののりである。
しかし三高トリオって一体。
三人ともビシッと紺のスーツを来て眼鏡を掛け、オールバックだ。
綾子さんの踏ん張りも効かずあれよあれよという間に車に押し込められた。
そして三高トリオの一人が何を考えたのか扉の外にいたコナンまでヒョイと抱えあげ一緒に車に押し込んだ。
しまったぁぁぁ帰り時を逃したっっ。
あまりの事態にうっかりしていた。
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