心の行方
<1>
「ねぇ、大輔くん」
猫なで声で大輔を呼ぶ。
それに対してイヤそうな顔を向ける大輔。
「なんだよ、気持ち悪い声出しやがって」
「気持ち悪いなんて失礼だなぁ〜」
笑いながら答えるタケルに呆れる大輔。
「あのね〜、キスしていい?」
「なっ!!!!」
大輔は唐突な発言に顔を真っ赤にする。
「お前、自分で何言ってるのか分かってるか?」
笑いながら頷き返される。
「あのな〜ココは学校だ。 時と場所を考えろ!」
いいな!と、タケルの顔に向って人差し指を向け叱咤する。
それでも、ニコニコと笑顔を向けている。
いい加減疲れを覚えてくる。
何考えてるのかがわからなくて。
いつも、タケルの言動に戸惑うのは自分ばかりで悔しい思いをする。
タケルの笑みに、大輔は大きな溜息を零すのだった。
好きだと言われ、徐々にタケルに惹かれていき大輔も好きだと自覚したのは
つい最近の事だ。
だが、好きだという事は今だ伝えてはいない。
言うのが悔しいのだ。
タケルに言われて、好きになったみたいな気がして。
でも、言わなくても好きだという事はバレているのかもしれない。
キスをするという行為を大輔は拒まなくなったから。
タケルからのキスは心地いい。
離れられないのが事実だ。
ふと、タケルの顔を見ると一瞬だが悲しい笑みを浮かべているのが目に入るが、
大輔と目が合うといつもの笑みに戻る。
「なに?」
「何でもね〜よ」
そして、いつもどおりの会話をする。
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