愛しい人
<1>
ベッドの上で寝返りを打ちながら時計を見る。
まだ2時を回った所だ。
「はぁ〜」
大輔は大きな溜息をつく。
本当なら今日は太一とサッカーをする予定だったのだが、大輔の家族が皆留守にし、
荷物が届くから家に居て欲しいと言われ渋々太一に電話し予定を断った。
楽しみにしていたサッカー。
窓の外は良い天気。
なのに…。
「ちぇっ!」
舌打ちをし、またベッドの上をゴロゴロする。
いつの間にか寝てしまったのか、チャイムの音で目が覚めた。
「あ…荷物」
背伸びをしながら立ち上がり、眠たい目を擦り欠伸をしながら玄関に向かう。
その間もチャイムは鳴り続ける。
「…うっせぇな〜! ハイハイ…」
面倒くさそうにドアを開ける。
ガチャ…
目の前には会いたかった人の顔が…
「よ! 大輔、めちゃくちゃ素晴らしい歓迎の仕方だな」
引きつった笑みを浮かべた太一が立っていた。
「え? た、太一先輩!?」
大輔は驚いた顔を向ける。
「なんだぁ〜? 来ちゃいけなかったのか?」
「そ、そんなことないです〜!!!」
大輔は慌てて頭を横に振る。
笑みを浮かべながら大輔の頭を撫でる。
「とりあえずよ、寒いから中入れてくれよな」
「あ、すんません!!」
急いで中に太一を招きいれた。
「うひゃぁ〜、お前の部屋暖かいな… ん? チビモンはどうしたんだ?」
「ねぇちゃんに連れられて出かけました…」
マグカップに温かいコーヒーを入れ、太一に手渡す。
「あ、サンキュー …って、事は今、俺たち二人っきりか…」
カップに口をつけながら太一は何気なく言う。
二人っきり…その言葉に大輔の顔が赤くなる。
「ん…?」
大輔の反応に太一の心が揺れる。
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