少し大人っぽい薄緑のTシャツに深いグリーンの半ズボン。
俺の赤いボーダーのTシャツとは着こなしとかも全然違う。
考えたくないけどやっぱ元が違うからかぁ?
なんでこいつって同じ歳なのにこんなに雰囲気が違うんだろうなっていつも思う。
背だって俺よりちょびっとだけ高いし・・(いや本当にちょびっとだぜ?)
髪なんかさ、茶色っぽい金髪だし目も少し灰色がかった青で、すっげーうらやましいよな。
外見だけでも十分ずるいのに精神面でもむちゃむちゃ大人でいつも笑ってかわせるような余裕がある奴。
どうやったらこんな奴が育つんだろうな。
神様って不公平。
始まりの気持ち
「どうして?一週間も前から約束してたのに?」
悲しそうに尋ねられさすがに俺も罪悪感を感じた。
そりゃ悪いとは思ってるんだけどな、でもいつもと違って今回はちょっと訳有りなんだ。
誰もいなくなった教室。
タケルに一言謝ったらすぐに帰ろうと思ってたのにすでに下校時刻はとっくに過ぎてしまった。
なんでこんなことに・・・・そう思いながら問いつめる口調ながらも何故か笑顔のタケルに手を合わせ頭を下げながら言う。
「ちょっと用事があるから・・・。」
「どんな?内容によっては諦めてあげるよ?」
仕方ないなぁと笑った雰囲気が空気の和みを伝えてくれて俺は今がチャンスとばかりに息ごんだ。
「ホントか?あのなっ賢が―――――」
「駄目。」
とってもとってもとぉぉぉっても爽やかな笑顔で却下された。
なにがそんなに嬉しいんだ?ってくらい楽しそうな顔だったんだけどそれがまた俺には怖かった。
なんで笑ってるんだよこいつっっ。
「なんだよっ最後まで聞かないで駄目はないだろっ。」
「駄目。」
「糠に釘」はたまた「のれんに腕押し」。そんなことわざを思い出した俺を誰か誉めてほしい。
まさしく今のタケルはそんな感じだった。
確かこの二つのことわざってそんな意味だったよな?
ちょっと自信ないけどまあ心の中で考える事くらい間違っててもいっかぁ。
この・・無邪気そうに見える笑みがくせ者なんだよな。
ここらへんがちょっと光ちゃんと共通するところかもしれない。
いや光ちゃんがくせ者ってわけじゃないぜ?ただなんというか・・うーーん。
得体が知れないってのも変だな。
うーーん不思議な人って形容詞が似合う感じ?
掴めないんだよなこういう時の二人って。
自分がむかつくときはそのまま顔にだす性分だもんでそんな時に笑顔を見せられる光ちゃんとタケルがよくわからない。
たまに光ちゃんも笑顔で
「大輔君それ以上いうと私怒るよ?」
とか冷ややかな言葉を言って俺の心に杭を打ってくれる。
あれは痛い。怖い顔で言ってくれたらごめん・・とか謝れるのに笑顔だと「はい・・。」
としか言えない。
だって背筋が冷えてくるんだ。
って自分の考えに没頭してる場合じゃなかったな目の前のタケルをどうにかしねーと。
「え・・とな。だからな。ごめんってーー。」
とりあえずひたすら謝る作戦に出た。
だって俺が悪いのは確かだしな。
「ごめんですめば警察はいらないよね?」
いや警察出るほど大事じゃないと思うんっすけど―――――。
なんて反論が出来るような空気ではない。
ブリザード。
教室が冷え切ってる。
なんでだ?人間がこんな空気を作り出せるのか?すげーよタケル。
夏にやってくれたらとってもありがたいけど。
いや駄目だまた現実逃避しようとしてるな俺。
「だってあのな。賢の奴初めて自分から誘ってくれたんだぜ?
あの賢がだっ。いっつも俺が無理矢理さそって仕方ないかって感じでついてきてくれてたようなあの賢が―――――」
「・・・・うるさいよ。」
怖かった。
すぅぅぅっごぉぉぉぉぉぉく怖かった。
笑顔のバックにおどろおどろしいオーラが見えた。
笑ってるのに声はいつもより2トーン低い。
やだーー逃げたいよぅぅ。
チビモン助けてーー。
廊下に待たせてあるパートナーに心の中で助けを求める。
だがあいつには話が終わるまで廊下で待ってろと言ってあるから例え心が通じたとしても助けに来てはくれない気がする。
変なところで融通が利かないから。
「だいすけがまってろっていったから、ここでまってなきゃ。」
そんな事を言ってそうだ。
いやそんな一途な所もとっても可愛いけど。←親ばか
「大輔君。今回ばかりは許さないよ。」
超怖かった。
今からこめつきバッタのごとく誤りたおしたあげくにそこら辺に埋まってしまいたいほどに。
お前そんな顔も出来たんだなってほど口は笑ってるけど目が笑ってねーーー。
「な・・・なん・・」
「怖い?僕が」
コックリ頷けるはずもなく(そんな怖いこと出来るかっっ)詰め寄ってくる相手からジリジリと引きつった笑みで後ずさる。
やめろっ壁際に追いつめないでくれっ。
せめて扉の方か窓際だったら脱出も可能なのに・・・後が怖いけどな。
「だってなっこれ断ったら賢の奴ますます殻に閉じこもったりしそうじゃねーかっそれにもう誘ってくんないかも―――――――――――――――」
ダンッッッ!!!
言い終わる前に壁に押さえつけられた。
背中と頭をしたたかに打ち付けられ猛烈に痛い・・・。
やべっ頭クラクラする。
なんだよこれ目の前真っ白になってきたし、はっこれがあの有名な貧血?
それとも病弱美少女がやるという、かの伝説の立ちくらみとか?
病気とはまったく無縁の俺が日射病以外でこんな風になったのは初めてだ。
そんな事を考えていたら左の肩をさらにぐっと壁に押しつけられた。
「・・・・・・。」
「何で抵抗しないの?」
不思議そうに尋ねられるが俺は反応する事すら出来なかった。
違う違うしないじゃなくて出来ねーーのっ。
頭も身体も朦朧としていて自分の意志では動かせないようだった。
さっき打ったせいもあるだろうけどこいつの毒気に当てられたせいでもあるかもしれない。
それとも・・この目。
最初からずっと俺の目を見つめるこの怖いけど澄んだ瞳に射すくめられたのかも。
深い湖のような蒼。
やっぱこいつって外人さんの血が混じってんだなぁー。
こんな時にどーでもいー事を考えてた。
「大輔君?・・抵抗しないと僕好きなようにしちゃうよ?」
何するってんだ?殴りたきゃ殴ればいーだろっ。
どーせ約束破った俺が悪いのは事実なんだし。
目をそらさない。いっそ潔く自分の罪を認めてしまえば気は楽だ。
怒りたければ怒れっ。
全然からだとか動かないけど俺の意志はこれだけで伝わるはずだ。
なんでかそう思った。
そうしてどのくらいたっただろうか?
もう時間の感覚が麻痺してたった30秒くらいが5分にも10分にも感じられるほど空気が息苦しくなったころようやくタケルは目をそらした。
「・・・やばいかも」
空いてる手で口元を押さえ俺の肩から手を離す。
かなりの強さで押さえられていたため多分俺の左肩は真っ赤になってると思う。
今は感覚が麻痺して解らないけど後で痛むだろうな。
タケルを見やると俺に背を向けて窓の方へと歩いて行った。
外を見るというより単に俺を見たくないって感じだ。
なんだよ感じわりーー。
そう思いつつ、押さえつけから解放されてホッとした俺はクラクラする頭とガクガクしている足のため、まともに立っていられなかったらしく、重力にまかせて壁に背を預けズズッッと床に座り込んだ。
ちょっとして振り返ったタケルがそれを見て慌てたような声をだした。
「どうしたの?大輔君。」
「ちょっと・・立ちくらみみてーなのだと思う・・・」
ぼそぼそとか細い声で答えると目をつむって額を手のひらで熱を計るかのように押さえる。
「え?もしかしてさっき頭うった?どうしようただでさえ大輔君のおつむ出来が悪いのに。」
悪かったなぁどーーっせ俺はバカだよっ。
心配してんなら余計な事言うんじゃねー。
どうせこれじゃあ今日は遊ぶの無理だしな。
D3で賢の奴に断りのメール入れるか。あーあ。今日の夜にでも電話して謝っとこ。
ポケットを漁りD3を取り出す俺にめざとく気づいたタケルは剣呑な瞳をみせた。
今度はなんだっ。
「それで何する気?」
「賢にメールするに決まってるだろっ。仕方ねーじゃねーかどーせこんなんじゃぁサッカーなんか無理だしそれにしばらく動けなさそーだしな。」
足を投げ出し、やけくそ気味にハッと鼻で笑うとタケルの奴は複雑そうな顔をした。
まったく訳の分からない奴だなぁぁ。
「なんだよ一体っ!お前の望み通りだろ!?嬉しくねーのか!!!」
怒鳴ったら余計に頭がフラフラしてきた。
ぐわんぐわん耳元でなんか鳴ってる・・・。
俺悪い病気かなんかか?盲腸だったらどうしよう(大輔にとって最大級の病気らしい)
あーだめだ車酔いしてるみてー。
「違うよ。・・いや違わないか。でも大輔君にそんな顔させたかった訳じゃないんだ。」
そんな顔ってどんな顔だよ。怒鳴りたかったが声が出せなかった。
頭を上向け壁にこんっと後頭部をひっつける。
あー早くかえりてー。
「・・・・」
「・・・・」
沈黙が空間をつつむ。
やだなぁこの静かな空間。今腹鳴ったらすっっげぇぇぇ恥ずかしいじゃねぇか。
タケルの奴俺の返事待ってるのか?
でも声だすと気持ち悪いからなぁ。
おらっなんとか言えよっ。
そう思った瞬間あいつは口を開いた。
しかも衝撃的な一言をはきやがったんだ。
Next 小説部屋
|