Step up2

そう、あの写真は本当に最初の頃だ。
まだ大輔がタケルに反感をバリバリ感じていたころ。
タケルが大輔の解りやすい嫉妬にちょっといらついて来た頃。
たぶん一番仲が悪かった時期だったとタケルは思う。
(懐かしい・・な)


あのころの自分は全てを背負っている気分でいた。
デジタルワールドの先輩として、皆を正しい道へ導かなければという使命感と、義務感と、切迫感がひしひしと自分を取り巻いていた。
同じ立場の光は、やはり女の子であることと、彼女より自分のほうがこの世界に関しては詳しいと思いこんでいた事から、しっかりしなきゃっと自分に言い聞かせていた。
でも実際、長く旅したからどうだというのだろうか?
あのころの僕は単にうぬぼれてただけだ。
僕にしか出来ないとか。
他の人には任せられない・・・とか



「迷ったのか?」
大輔君の声。
正確に言えば道が解らないだけだ。
でも迷ったとも言うかもしれない。
パタモンがここにいれば飛んで偵察にいって貰えるのに・・・
パタモンとテイルモンとホークモンには先に偵察に行ってもらってしまった(二匹にテイルモンがつるされて飛んでいったのだ(笑))
大輔君と伊織君のデジモンはさっきお菓子を食べたせいか眠いといって鞄の中で惰眠をむさぼっている。

僕はちょっと肩をすくめると光ちゃんに向き直った。
「今の位置がここらへんだから、たぶんこっちに行けばいいんだと思うんだ。どう思う?」
無視された大輔君はムッとした顔をしたが、きっと多分に嫉妬もこもっているんだと思う。
こらっ光ちゃんに引っ付くなっっと今にも割り込んできそうな目だ。
「そうねー皆にも聞いてみて多数決で決めない?」
「聞いても解らないよ。きっと」
ここに来てまだ数回目の彼らに聞いても困らせるだけだろうと思いそう言うと光ちゃんは複雑そうなな笑みをみせた。
「じゃあタケル君の言った道に行ってみましょ」
「そうだね」
そこでようやく傍で控えていた大輔君が予想通り割り込んできて僕と険悪なムードになりかけ、いつものように伊織君と京さんの仲裁で事なきをえた。
まったく困った子だよね。大輔君って。


「道、合ってたみたいね。」
光ちゃんのほっとした声にうんと頷く。
ちょっと悩んだけどどうやら間違った道ではなさそうだ。
きちんと予定通りに進めて息を付く。
こうして一つ一つの事に神経を使っていって昔の太一さん達って凄いなと思う。
あのころは今よりももっと切迫した状態で、食べ物だって余裕ないし、いつ家に帰れるかも解らない、そんな状況下の中の選択だった。
何一つ解らないまま進んでいってそして、道を切り開いた先代の選ばれし子供達。
今のお気楽観光とは大違いだ。

「やっぱりこの前光子郎さんに聞いて置いてよかった」
「いつの間に聞いたの?」
「ん。電話でね。この道多分迷うと思ったから」
「そう・・・光子郎さん何か・・言ってなかった?」
「何かって?」
尋ねるとう〜んと困惑気な顔をみせた。
光ちゃんは頭がいい。きっと何かを示したかったのだと思う。でも僕は思い当たる節がなくて、彼女の満足いく答えを返せなかった。

「なあ京ー腹へったーー」
「だーめっお昼ご飯までまだ歩くってタケル君が言ったでしょ?ちょっとは我慢しなさいっ」
大輔が背負うお弁当が入ったリュックを京はバンッッと勢いよく叩いた。
その拍子に中にいたチビモンがピクリと反応を返し、またすぐに眠りに入った。
「ちぇーー」
「そうですよ。それにまだ12時です。お昼とは言え、朝ご飯を食べてからそんなに立っていないじゃないですか?」
「うーん・・・3時間くらい?」
「あっきれたー9時半集合だったでしょー?」
「寝坊したんだよっそんでパンかじりながら走ってきたから足りねーんだよっっっっ」
「ああ。そう言えばパソコン教室でもアンパン食べてましたね」
「家にあったの根こそぎ持ってきたからなー。菓子パン3個くらい?」
それで足りないと言うのか。と伊織は目を丸くした。
「パンは腹持ちがわりーからな。やっぱ朝はご飯だっっ」
腕をふりあげしょうも無いことを力説する大輔。
とにかく後方の三人は平和だった。

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