Step up4

「ごめんパタモン、チビモン連れて向こうで遊んでてくれないかな?」
「うんいいよタケル。」
「けんかでもするの?だいしゅけ?」
「あ?違う違う真剣なお話合いってーやつだよ。つまんねー話だからチビモンお前あっちでサッカー鍛えてこいよ。ボール取るの下手だぜお前?」
「うるさいやいっだいしゅけのバカーー」
捨てぜりふと共に去っていったパートナーを見送り大輔君はハハハと腹を抱えて笑っていた。
苛めて楽しいのかな?
まあいいや。今は真剣なお話合いってーやつをするらしいし。

二匹が完全に声が聞こえない所まで遠ざかったのを確認すると僕はさっきから消えることのない腸の煮えくり返った胸の内を一気に吐き出した。
「なんであんな事したのっ」
「あんな事って?」
「サッカーボールだよ。あれわざとでしょ?」
「ん。まあな」
「せっかく僕が説得してたのに全部パーだよっっなんで邪魔するのいつもいつもいっっっつもっっっ」
「・・・・・」
こんなに怒鳴ったのって小さな頃以来かもしれない。
そのくらい叫んだ。
力の限りに。
「だってむかついたし」
「だからって感情くらい抑えてよっ」
「なんだよ。だって俺達こどもだぜ?素直に感情だして何が悪いんだよ」
「時と場合を選べって言ってるんだっ」
相も変わらず悪びれることのない大輔君が恨めしい。
しかも開き直ってるように見える。

「そんなん出来るかよ。大人になったら嫌でもやんなきゃなんねーんだろ?子供のうちくらい感情のまま生きればいいじゃねーか。そーゆーの子供の特権ってゆーんだぜ」
「特権じゃないっそれは我が儘だ」
「そうか?でもさデジタルワールドに子供しかこれねーのって子供のそーゆーとこ必要だからじゃねーの?じゃなかったら大人を選ばれし子供にすりゃいいじゃん?せめて高校生とかさ」
「それは・・・」

話題をすり替えている気がする。
「いいじゃねーかさっきの事だって。俺は何一つ後悔してないぜ。あれでよかったと今でも思ってる。」
「なんでそんなに自分勝手なんだよ大輔君は」
「は?おい、いい加減にしろよタケル。なんで俺がそこまで言われなきゃなんねーんだ?だいたいな、怒ってんのは俺の方だぜ?」
「は?」
なんで大輔君が怒らなきゃいけないわけ?
眉をよせる。
「なんでさっき・・膝着いてたんだよ」
「それは・・・」
「土下座すれば通してくれるって?そんなん嘘に決まってんだろっあいつの目みりゃバカな俺だって解るぜ?」
解ってはいたけど
「他に方法がないんだから仕方ないじゃない」
「そう言う問題じゃないっっっっ!!!」
勢い良く襟首をつかまれ僕はビックリした。
何をそんなに怒っているのか解らないけど大輔君は真っ赤な顔で詰め寄ってきた。

「なんで一人で・・どうして仲間だろ俺達?」
仲間?
首を傾げる。
「なんだよ。そこで首傾げるか普通。同じ選ばれし子供なんだろ俺達?そんじゃ仲間じゃねーか。」
まあ確かに。
でも僕には同じじゃない。
守るべき存在。
「お前解ってない。」
「なにが?」
「土下座するのはいいよ。別にさ。そんで通してくれんならムカツクけど俺だってする。でもな」
唇をかみしめ大輔君は悲しそうな目をした
「一人ですんな。俺達何にもできないかもしんねーよ?こっちの事何ひっとつ解ってねーし、足でまといかもしんねーでもな、一緒に土下座するくらい出来るんだよ。」
それはそうだろうね。
でもこれは僕の問題だし・・・
さすがに一緒に土下座してくれなんて言えない
「言えよバカッ全部俺達に言えよ。なんで全部自分だけで・・いや光ちゃんと二人だけで解決しようとすんだよ?」

解ってたんだ。
へー意外だな。

「仕方ないじゃない?さっき言った通り大輔君達こっちに詳しくないし」
「そ・・そうだけど。確かに俺はバカだし。絶対役に立たないって自信っつーかなんっつーかその邪魔になるって解るぜ?でもな京と伊織は違うだろ?京はパソコン得意だし、伊織は戦略とかたてんの意外に上手いんだぜ。そりゃゲームの話だけどでもやっぱりそーゆーのってこういうときも役立つと思うんだよ」
「現実とゲームは違うよ」
残念だけどね。と付け加えると大輔君はギュッと唇を強くかみしめた。今にも血がでそうでみていて痛そう。
「京と伊織が落ち込んでんだ」
「え?」
「自分たちは居ても役に立たないって。」
「そんな事は・・」
「戦闘では役立つって?それはチビモン達が闘ってくれるからな。俺達の力じゃねーよ。」
デジモンがいてようやく仲間と認められるのか俺達は?
「そんな事ないよ。進化させるのは大輔君たちのパワーだし」

「違うっそう言う問題じゃない。あーなんて言えばいいんだろ。」
大輔君は一生懸命視線を当たりに彷徨わせ適当な言葉を探しているようにみえた。

「確かに俺は邪魔ばっかりしてるぜ?自分でも自覚してるからお前にのけ者にされてもまあ仕方ねーんだよ。でもせめてあの二人は参加させてやれよ。絶対役立つから。」
「でも聞いてもわから無いじゃない?」

何を言ってもこれ以外にいえる言葉はない。
だって聞いて答えられないなら可哀想じゃないかな?
今も、この先に行く道がないんだどうすればいいと思う?って突然聞いたら皆困るよね?
だから親切のつもりなんだけどな。

「そうだけど・・・でも・・お前なら解ると思ってたのに」
だから何がだよ。
そんなおおざっぱに言われても理解できない。

「お前はさ。昔太一さん達と旅しただろ。タケルも光ちゃんもちっちゃかった。だから俺達の気持ち解ると思ってた」
小さいから解る?
大輔君達の気持ち?
意味が掴めない

未だ不思議そうな顔をする僕に大輔君はようやく手を離した。
ちょっとあげていたかかとが地面につき、ホッとする。
大輔君は手近な石に疲れたようにどっかりすわった。
ぐしゃぐしゃと苛ついたように髪をかき混ぜると大輔君は砂の上の枝を一本拾った

「あのな。」
地面にビーーっと横に少し長い二本の線を引いた。
間がちょっとあいている。
大輔君は二本の線の間に丸を書いていった。

「これが太一先輩とヤマトさん」
「?」
「丈さんにミミさんに光子郎さん、空先輩。そんでタケルに光ちゃん」
「ああ。前の選ばれし子供だね」
「そう」
綺麗によこ一列に並んだそれに僕は頷いた。

「そして」
今度はそこから少し後に新たな丸が二つ書かれた
「これ今のタケルと光ちゃん」
「うん。」
そしてその丸の後に丸が三つ。



「これ俺達。京。伊織。俺」
「これが何か?」

「違うだろ?何かさ」
「どうして?それのどこがおかしいの?」

「・・・・・なんで分かんないかな。」


「え?」
「ここまで言っても解らないとは思わなかったぜ。」
突然に大輔君はザッと立ち上がった。
大輔君は怒ったような・・それでいて泣き出しそうな顔で僕をキッと睨み付けた。
そして持っていた枝を僕になげつけると
「・・・・なんで気付かないんだよ。もーいいっ帰るっっっ」

きびすを返して走っていった。

なんなんだ一体。
僕の胸の当たりにあたって所在なくぽとりと落ちた枝をジッと見つめる。
腹立つというよりも呆然としてしまった。
さっぱり訳がわからない。

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