Step up5

「あーあ。泣かせちゃった」
フイに背後から声が聞こえて僕は驚いて振り返った。
「光ちゃん」
「なんで解らないのかしらね。」
「なんなの光ちゃんまで」
「タケル君があんまりにも鈍感だからよ」
鈍感なんて言われ慣れない言葉だ。

「それにしても大輔君って意外にちゃんと考えてたのね。驚いたわ。」
何故か大輔君に感心する光ちゃん。
「今のタケル君よりはよっぽど大人かもね」
それにカチンときた
「何なんだよ一体。そう遠回りに言われたって解らないんだからしかたないじゃない」
「あら。怒った。珍しいわね」
「・・・」
気がそがれる。
さすが光ちゃんとか思ってしまう自分が何やら情けない。

「この図・・・上手くできてると思わない?今の私たちの関係を見事に表しているわ」
大輔君の書いた簡単に図をみて、そうだね同意を示した。
「これ。どうして私たちと大輔君達が離れているか解る?前の選ばれし子供は横一列なのに」
「え?」
「この絵は私たちの関係っていうより。タケル君の中の私たちの関係よ」
僕の中?
「タケル君はね、私と二人で大輔君達を先導している気分でいるわよね?」
実際そうじゃないか。
「それが間違っているのよ。そもそも・・・ね。いつか注意しなきゃとは私も思ってたの。でも先に大輔君の方が切れたみたいね」
間違っている?
どこが?
「タケル君。少しでも考えたことある?右か左か迷った時に助言をちょっとでも聞かれないこと。
何かをするときに私とタケル君二人できめて、京さん達はただ決まったことに従ってる。それって違わない?」
・・・・
「私たちは同じ立場なのによ。なんでかしら?」
「でも大輔君達は―――――」
「だから言ったんじゃない。私たちなら気持ちが分かる筈だって大輔君が」
解る?僕達なら?
「前の旅の時、私たちは幼かったわ。とってもね。右に行くか左に行くか。そんな事聞かれても解らないくらいにね。」
「それでも太一さん達はちゃんと聞いてくれた。」
「そうよ。仲間だから」
あ。と口を開いた。

「わかった?」
「うん。」
大輔君は怒ったんじゃない叱ってくれたんだ。
僕のおごりを。
「僕は太一さんのようにって思ってた。」
「お兄ちゃんは全部一人で決めたりしないわよ」
「うん。間違ってたよね。僕」
素直に認めると光ちゃんはニッコリ微笑んでくれた。
「お兄ちゃんも、丈さんもミミさんも空さんもヤマトさんも光子郎さんも皆子供の私たちを尊重していちいち聞いてくれたよね」
「うん。よく考えると皆ちゃんと考えてくれてたんだね。だめだなさりげなさ過ぎて全然気付いてなかったよ」
まだ小学二年生の子供を一人として認めてくれたのだ。
それをどうしてこの世界を全然知らないからって大輔君達をのけ者に出来る?
ここにもし太一さんが居たら「このバカッ」てほっぺた引っ張られただろうな。

自己嫌悪に陥る。
そして全てを解ってた大輔君。

「格好いいね。大輔君。」

自分はのけ者になっても仕方ないって言ってた。せめてあの二人だけでも仲間にいれてくれって。
それってなかなかいえる言葉じゃないよね。
前だけ見てる猪突猛進な猪だと思ってたら高いところから全体を見回しているちゃんとした人間だ。
「かっこわるいな僕・・・」

クスと笑う。
猪は僕だったみたいだ。

きっと大輔君があんなにバカな事ばっかりやってたのは京さんと伊織君の気を引き立てる為。
騒がしいって思ったのは自分に余裕がなかっただけ。
「ホントばかだな僕って」

「謝ってらっしゃい。きっと大輔君は許してくれるから」
「そうかな?」
「そうよ。大輔君だもの」
「そっか。」

そうだね。大輔君だもんね。きっとちょっと拗ねたまま許してくれそうだ。
「言ってくるよ。」
「うん。ここでみてる」
傍で付き添うなんて言葉が出ないあたり自分の罪の深さを思いしらされる。きっと光ちゃんもむかっ腹たってたんだろうな。これが彼女なりの意趣返し・・か。

「行って来るよ一人でさ」



「あーーーースッキリした」
光は呟いた。
ずっとずっとずぅぅぅぅぅっと胸に溜まってたのだ。
タケルは全然気が付かないし、大輔は兎に角、京と伊織を慰めるために騒ぐし、それでまたタケルがイライラしてくるしで悪循環しまくりだったのだ。

そろそろ大輔君の空元気もつきてくるかしらと思っていたらようやく切れてくれたわね。
私が言っても角が立つだけだもんね。

遠くでぺこぺこ頭を下げているタケルが見えた。
京も伊織もきっとすぐに許してくれる。
いやもしかすると謝られた事に恐縮すらしてしまうかもしれない。
そんな二人だ。
今度は少したってから、怒って元来た道を一人で戻ってしまった大輔をタケルが連れ戻してくるのが見えた。
手を引っ張って。
嫌そうな顔でそれでも素直に歩いてくる大輔。
きっと沢山謝ったのだろう。
タケルは憑き物が落ちたように微笑んでいるし、大輔もタケルの手を拒まない。
二人の仲もどうやら少しはマシになりそうだ。

「仲良きことは美しきかなっっってね」

ようやく仲間として活動出来そうね。
微笑むと光も仲間の元へ駆けだした。

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