Step up6

「それでね。この先へ行く道が見つからないんだ」
タケルが口を開いた。
助力を求めるように。円になって話し合う。
これは話あってもどうにもならないだろうと、光も困った顔をみせた。
ハッキリ言って本当の仲間となって最初にやってきた問題である。それもとっても大きな。
聞いても困らせるというタケルの言葉は今回に限り当てはまるだろうと光ですら思ってた。

だがしかし。

「あるぜ」

大輔はこともなげに答えた。

「「え?」」

これにはタケルも光も驚いた顔をみせる。
それに得意げに鼻を掻くと大輔はえへんと胸を張り
「表がダメなら裏からってな」
立てた人差し指を横に振った。



「信じらんない。なんで最初に言ってくれなかったの」
「聞かなかったじゃねーか」
タケルの言葉に大輔はフンッとそっぽを向きながら言った。

確かにその通り。聞けば大輔の事だ、自慢気に教えてくれた筈だ。
(ホント・・・バカだよね僕って。)


またもや自己嫌悪に陥るタケルをよそに大輔はほら此処だとある一点で止まった。
村のはずれ。
小さなボロボロの小屋とおもちゃの様な水車があるそこで。
「おおーーーい俺だっ」
突然に大輔君が小声で当たりを見回しながら叫んだ。

「ダイシュケだいしゅけーー。」
デジモンの子供達がワラワラといろんな所から出てきた。
どうやら子供特有の隠れ家らしい。
そして
「この間の道、今開いてもらえるか?」
「いいよーー」
「いいよーーちょっと待っててねーーー」
「あそぼーーだいしゅけーーぼーーるーーぽんっってーー」

周りを取り囲まれ目を丸くするタケル達をよそに大輔はカラカラと陽気に笑った
「また今度来たときな。今は道が先だ。案内してくれるか?」
「「「はあぁーーい」」」」

何匹いるのだろうと数を数えていた京が動き回る子供達に限界と手をあげ、タケルがあまりのうるささに苦笑いをしていたその時、止まっていた水車がゴトリと動き出した。
そしてその拍子にどこかでゴゴっと重い音がする。

「みちあいたーーいけるよーー」
「サンキュ♪行くぜ」

なにが起こったのかいまいち解らなかった仲間達は大輔に先導され突然小屋の中に開かれた道を見せられた。
隠し扉が開いたのだ。
そしてその奥には外へと繋がる道が一本。

「これって」
「そ。このまま行けば予定の場所へ一直線・・だろ?」
あまりに大がかりすぎて理解するのに時間かかったがタケルは目を輝かせた。
「うんっ凄い凄いよ大輔君っっこんなに興奮したの僕初めてかもしれない」
「なっ俺も初めてみたときすっげーワクワクしたもんなー隠れ家に隠し扉だぜ?サイコーじゃねー」
二人で子供全開で手を振り回す。
大輔もタケルも頬をピンクにそめその一本道を期待に満ちた瞳で見つめた。
当然京も、伊織も光も皆が皆その口元に笑みがうかぶ。

「凄いや本当に。」
僕があんならちのあかない押し問答していた間てっきり遊んでいるだけだと思ってた大輔君がこんな凄い発見してたなんて。
凄い凄い凄いと胸の中がそれで一杯になる。
凄いよ本当にっっっ


「じゃ行こうぜ」
「おーーーーーーー」
「そうね」
「でもこれってかがまないと進めませんよね」
「そうみたいだね。途中まで道がひたすら狭いみたいだ」
「でもなんとか通れるだろ?俺達子供だからな」
そう。
子供だから通ることができる。
選ばれたのが何故子供なのか。
そう考えた事がある。
大人ならもっとスムーズに事は運んだかもしれないし、もっと知恵も回ったかもしれない。
なのに選ばれたのは子供だけ。
しかも小学生ばかり。
これには何か意味があるのだろうか?

大輔君が言ったように子供の無邪気さがこの世界には必要なのかもしれない。
怒る時は怒って笑う時は笑う。いつも心のままに感情を出して、
仲間と力を合わせて進んでいく。
子供だから出来るのかもしれない。

「もー大輔ったらこんな面白い事秘密にするなんてずるいっ」
「なんだよー京にいったらタケルに筒抜けだろ?そんなんじゃー意味ねーじゃん。」
「でも意外です。大輔さんこういう裏技嫌いそうでしたのに」
「そうか?」
「そういえばそうね。俺は表から正々堂々と通過してやるっとか意気込みそうよね」
「あっ光ちゃんまでっ俺を誤解してるな。」
大輔君が頭を抱えショックーっと言ったように体で表す。
本当に正直な人だよね。

「だってさ。別に表だろうが裏だろうがすすめれば良いだろ?そんで被害がすくなければなおさら。」
あ。意外とまともな答えだ。

「あそこで強行突破って手も確かにあるよな?でもさ、その後の事考えると出来ねーよ」
「後?」
ここの住人達が怒って追いかけてくるとかかな?
「俺達を通したことでデジモンカイザーから攻撃うけるかもしんねーだろ?」
「あ。」
「そういえば」
「そうですよね。確かに」
「そこまで考えてなかったなー」
僕も、光ちゃんも伊織君も京さんも、まじまじと大輔君をみた。
そこには真剣な顔ででもちょっと照れくさそうに自分の意見をしっかり述べる一人の人間がいた。
嫌だなーこれじゃあ大輔君の方が大人じゃないか。

「あの意地悪デジモンは俺としてはどーでもいいけどさ。ここに案内してくれたこいつらとか、それを知っていながら見てみない振りをしてくれた奴らとか。そういうデジモン達が被害にあうのってかなり嫌じゃねー?」
見ない振り。
ってもしかしてこっそり来たけど気付かれてた?
「そうよね。私たちがこの世界を救う為に旅をしているのは知っている筈だし、表だって道は教えられないけれど抜け道を子供達が教えるのを見なかった振りなら許容範囲ってことね。」
本当なら手を貸したい。
だが、そんな事をしたら自分だけでなく、この村全員が被害にあうのだ。
これが最大限の譲歩。

「もしかして僕のほうが自分のことしか考えてなかったって・・ことかな」
「別にタケルは自分の事ってよりこの世界の為に動いてるんだし間違ってねーよ。俺だってもしこの道がなければ仕方ないから強行突破を選ぶし」
その後の事を考えると後味悪くて嫌だけどなと付け加えると大輔君は狭い道をフッと見つめた。

この道を教えた事で子供達がデジモンカイザーの配下とかに苛められないといいんだけど。
そう小さく呟いたような気がした。
そうだね。この道だって本当なら教えたらいけなかったはず。
早く平和な世界を取り戻してあげたいね。

「いこ。大輔君」
「ああ。」
差し出した手をぶっきらぼうにはたき落とされたが気にしない。
それが大輔君だしね。

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