泊まりに行こうっ No.5 「昔ね、大輔君とまだ出会ったばかりの頃―――――」 そんな大輔の混乱に気付いたのかタケルは穏やかに話始めた。 「大輔君に叱られたんだよね。」 いつの事だ?と混乱した頭で考える。 叱るというより怒る事は今まで何度でもあった。賢の事でだって衝突ばかりだし。 「覚えてないかな。あのころの僕って凄く嫌な奴だったよね。大輔君に諭されてやっと自分の事が見えた。あの時はショックだったな。」 クスクスと思い出し笑いをするかのようなタケルに大輔は眉を寄せる。 思い出せない。いつの事だよっ。 「たぶんあれから大輔君の事が気になったんだ。大輔君って熱血してて口より先に手がでてどうしようもない子供だって最初思ってた。」 むちゃくちゃな言われように大輔はムッとする。反論しようとした言葉は、でも―――――と続ける言葉にさえぎられた。 「でも違うんだ。 格好良かった。他の誰よりもずっと・・ずっっと。」 格好いい?俺が? そんな事言われたの生まれて初めてで大輔は思わず顔がほころんでしまう。 なんと言ってもタケルの口からこの言葉が聞けたのが一番嬉しい。 まさかこんな格好いい奴がそんな事言ってくれるなんて。 「ねえ。大輔君。僕と付き合うの嫌?」 「・・・嫌・・じゃねーけど・・・でもな、・・・・」 「何が問題?」 「いろいろ」 「それじゃあ、ゆっくりその色々を解いて行こうか。と言うことで、」 「ん?」 声が近くから聞こえたような気がして大輔は慌てて布団から顔をあげた。 タケルの顔が目の前に近づいていて驚きの余りにワタワタと床へと逃げる。 「お・・お前何考えて・―――――」 「んー青春が爆発してるんだよね。ちょっとだけ。ねっ?」 そんな事をいいつつノソノソと近づいてくるタケルに大輔は半泣きだ。 嫌だぁぁなにがちょっとだ。なにが青春爆発だっっ。 「はぁなぁぁぁせぇぇぇぇぇぇぇ」 「だ・め」 「ぐぅぅぅぅ。ちびもーーん起きろこらっっ大事な相棒のピンチになに暢気に寝てやがるっ」 この騒ぎにもまったく身じろぎ一つしないチビモンとパタモンに大輔は疑問を感じる。 さっきチビモンをうっかり蹴ってしまった。 なのに起きない。 「お前一服もったとか?」 「・・・大輔君。僕の事そんな風に思ってたの?」 「いやお前ならやるかなぁって」 あははははは。と空笑いで逃げの一手をうつ大輔にタケルは脱力したように大輔の上にのしかかった。 「一服もるなんてめんどくさい事するよりチョコレートで買収の方がよっぽど手っ取り早いよ」 その言葉にさすがの空笑いも引っ込んでしまう。 「・・・・・・したのか?買収」 「さあね?」 ご想像にお任せするよ。 そんなタケルの態度にまさかそこで寝ているのはタヌキ寝入りで、俺はチョコ一つで売られたのかっっっ?と情けない気分に陥る。 「チビモンっっチビモンっっお前は俺を売ったのかぁぁぁたかがチョコでっっ」 「・・・・大輔君。やっぱり僕を誤解してるね。してないよ買収なんて」 はあ・・とやるせないため息をつくと、とことん信用されていないタケルは大輔を押さえつけて、とりあえずお休みのキスくらい〜と顔を近づけた。 大輔万事休す。 覚悟を決めたその瞬間の事だった。 ガタッ 「・・あなた達・・・・」 低いうっそうとした声が聞こえた。 小説部屋 次へ |