Representative
<前編>
「快斗、快斗はもう旅行の準備した?」
学校が終わった帰り道で青子が快斗に尋ねてきた。
「はぁ?旅行?何の話だあ?」
「嫌だ、忘れたの?明日からの3連休、皆で旅行に行こうって言ったじゃない!」
「・・・・忘れたもなにも、そんな話聞いてねぇんだけど?」
「うそぉ!言ってなかったっけ!?快斗が忘れてるんじゃないの!?」
「聞いてねぇよ。この賢い頭の中にそんなことは記憶されてません!」
「あのね、この3連休に皆で泊りがけで遊びに行くことにしたの。快斗にも言ったと思ってたから快斗の分も予約しちゃったの。だから、快斗も行こう?」
「んなこと急に言われてもなぁ・・・・」
「ええ?だめなの?」
青子が悲しげな目で見つめてくる。彼女のそんな顔に弱い快斗は言葉を詰まらせる。
ふと、そういえば、と考えた。この3連休、快斗はなんの予定もなく暇だったので新一の所へ
行こうと思っていた。しかし、新一には3連休とも用事があっていないと言われたのだ。
ま、いっか。どうせ暇だし。
「いいぜ?行ってやるよ。」
「本当?よかった〜!」
笑顔になった幼なじみに快斗も笑った。が、次の言葉で快斗の笑顔は消えた。
「じゃあ早速白馬君に連絡しようっと!」
「!なに?白馬の野郎も来るのか!?」
「そうよ、当たり前じゃない。今回行くのは白馬君の知り合いの別荘なんだし。」
「んなこと聞いてねえぞ!?」
「なあに?今さら行かないなんて言わないよね?」
「うっ・・・・・」
「じゃあ明日8時に迎えに来るからね!逃げたりしたら1ヶ月魚食べさせてやるから!」
そう言って青子は自分の家に駆けていった。快斗はしばらくその場に立ち尽くした。
『ハハハハ・・それでお前、結局行くことにしたのか?』
「笑うなよ!人事だと思って!行かねぇと1ヶ月魚食わせるって言うんだぜ、青子のやつ。
くそぉ〜」
『いいじゃねぇか、行ってやれよ。最近お前あまり一緒にいないだろ?だから寂しかったんだと思うぞ。』
「・・・・まあね、それはわかってるよ。」
最近は休みのたびに新一の家に来て色々と2人で情報を集めたりしていたのだ。
『で?場所は?』
「伊豆の方だってさ。白馬の知り合いの別荘らしい。」
『・・・・・・その別荘の持ち主の名前わかるか?』
「え?いや、聞いてないけど・・・・新一?」
急に黙り込んだ新一に訝しく思って快斗は相手の名前を呼んだ。
「新一、どうかしたのか?」
『え?いや、なんでもねぇよ。それより気をつけていけよ?』
「その台詞、そっくり返すぜ?お前こそ気をつけろよ?敢えて何をするのかは聞かないけどね。」
『・・・ああ、じゃあな。』
電話が切れる。新一の様子に疑問を感じながら、快斗は明日の準備に取り掛かった。
「うわ〜、いいところだねぇ〜!」
「ほんと!緑がたくさんあるし!」
この旅行に参加したのは、快斗、青子、白馬の他に5人の級友たちだった。
皆楽しそうにしている中、快斗は1人だけ不機嫌な顔をしている。
「おや黒羽君、随分と不機嫌そうですね。」
「・・・ああ、おかげさまでな。」
「なによ快斗!もっと楽しそうにしなさいよ!」
「・・・へいへい。」
「もう!」
「まあまあ、ほら、もう見えてきましたよ。」
「え?うわぁ!」
青子たちの前に見えてきたのは別荘というよりお城と言ったほうが当てはまるような大きな屋敷だった。
「素敵!さすが白馬君の知り合いねv」
・・・・けっ
快斗はますます不機嫌になった。
屋敷の前にはたくさんの車が並んでいる。ほとんどが高級車だ。
「僕たちの他にもお客さんがいるようですね。」
「やあ、探君。よく来たね。」
玄関は恰幅のいい50代くらいの男性がニコニコしながら立っていた。後ろには秘書らしき背の高い男も立っている。
「こんにちは、武田さん。突然無理言ってすみませんでした。」
「いやいや、丁度良かったよ。ここは私の家族だけが使うには大きすぎてね、今知り合いに別荘代わりにと使って貰っているのだよ。」
「なるほど、だからこんなに人がいるのですね。」
「こんなところでなんですから、皆さん中にどうぞ。ああ、申し遅れました。私はこの別荘のオーナーの武田といいます。こちらは秘書の峰岸くん。白馬警視総監は私の旧友でね。」
「よろしくお願いします!」
青子が挨拶すると他の皆も続けて挨拶をした。快斗も頭を下げる。
大きな玄関から入るとそこには多くの人たちがいて、高級ホテルのようになっていた。
部屋がたくさんあるということで皆それぞれ1人部屋だった。
快斗は部屋に入ると、これまたでかいベットに横になり大きく伸びをした。
(のんびりするのは久しぶりかもな。白馬の知り合いってのがちょっと気にくわないがま、いっか。)
コンコン
「快斗ぉ〜?」
ノックとともに青子が顔をのぞかせる。
「青子、どうかしたのか?」
「ちょっと早いけどお食事の用意が出来たのでどうですかって峰岸さんが。」
「お〜、食う食う!腹へってさあ。」
「じゃあ行こう!」
食堂に向かって快斗と青子は並んで歩く。
「ねぇ快斗、ここにカジノもあるらしいよ。後から行ってみない?」
「あのなあ、そういうところは正装しないと入れないの!俺、そんな服持ってきてないし。高校生が入っていいわけ?」
「大丈夫よ!そう言ったら、武田さんの奥さんが貸してくれるって言ってたし。賭け事もない、ただ遊ぶためだけのようなところだからって。ねぇ、行ってみようよ!」
「あ〜、わかったよ!」
「やったvv」
食堂はこれまた広く、テーブルからイスから、すべてが高級そうなものばかりだった。
料理もフランス料理のフルコースだ。皆やはり同じようにおなかが減ったのか、席についていた。ただ、白馬の姿だけ見えない。
「あれ?白馬は後で食うのか?」
「白馬様なら、社長に呼ばれて今社長の部屋にいますよ。お話があるそうで。」
快斗の問いに峰岸が答える。
「ふ〜ん・・・」
ま、どうでもいいけどさ。
級友たちとおしゃべりしながら食事を済ませた。その間に白馬は戻ってはこなかった。
武田さんの奥さんに借りた服を着て青子と快斗はカジノへと向かった。
そこは結構広く、多くの人で賑わっていた。ディーラーもいて、遊びというわりには結構本格的だ。
「おや、黒羽君たちも来ていたんですか。」
「あ、白馬君。」
高そうなスーツを着た白馬が現れた。
「白馬君、ご飯食べたの?武田さんのお話って?」
「ああ、いえ、たいしたことじゃないんですよ。食事は武田さんととりましたし。」
「やあ、君たち来ていたのかい?なにかやったかな?」
スーツを着た武田が歩み寄ってきた。
「いえ、まだですよ。」
「快斗カード得意なんでしょ?やってみたら?」
(げっ!?青子余計なことを!!)
「ほぉ、カードですか。丁度いい、今日から新しいディーラーが入ったんですよ。なかなか腕がいいのでどうです?一勝負してみては。」
「それいい!快斗行こう!」
「お、おい青子!俺はまだやるなんて一言も・・・・」
そう言っても青子は強引に快斗を引っ張っていき、気がついたときには快斗は席に座っていた。
「・・・・ったく・・・。」
「紹介しよう、彼がディーラーの速水君だ。」
「速水といいます。どうぞよろしく。」
速水と呼ばれた男は快斗を見てにこっと笑う。
(・・・え・・!?)
速水は髪をオールバックにし、細い銀縁のメガネをかけていた。その奥の瞳は吸い込まれるような蒼だ。
それはまるで・・・・
(し、新一!?なんで!?)
姿もちょっと見ではわからないし、何より声が違うのだから他に気づくものはいないだろう。
だが、快斗にはすぐにわかった。近くで向かい合っているせいもあるが、何よりあの瞳を自分が見間違えるはずはない。
「ゲームはなににいたしますか?」
驚いた顔をしている快斗を見てにやりと笑った速水が言った。快斗もそれを見て普段のポーカーフェイスを取り戻し、笑い返す。
「それじゃあポーカーで。」
「承知しました。」
To Be Continued・・・・
01/11/8
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