光のかけら4
side K

車で二時間くらい走っただろうか。やっと目的地に到着した。
なかなか道路の舗装もきちんと出来てる山で、夏休みとかには親子連れでにぎわいそうないい場所だった。
「へえ。結構いいとこ見つけたじゃねーか白馬」
「ええ。実はうちの別荘がここの近くにあるんですよ。」
それで知ってたわけか。けっブルジョワ人め。
「すごーい綺麗ーーー。あっ川だーー。」
お子様のごとくはしゃぐ青子。中身も外見もまだまだお子様だな。
「可愛いですね中森さんは。」
にっこり笑い俺に同意を求めてくる白馬。なんかてめーに言われるとむかつくぞ。
「はっあーれのどこが可愛いんだかな。目が腐ってんじゃねーの?」
頭の後ろで腕を組みそっぽをむく。
「そうですか?」
何が楽しいんだかクスクス笑う白馬を置いて青子と紅子のいる川のほうまで歩き出した。
「見てみてーー快斗ーー魚ーーー」
「げっっ。やめろ青子っっ」
手の平に包み込み何かを持ってくる青子に俺は後じさる。
本当に魚か?いや・・・こんなところに魚がいるわけない・・と思う。
そうは思うのだが、だがしかし・・・・いたらどうしよぉぉぉ。
「えいっっ」
俺に向かって手の平の中身をぶちまける青子。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
必死に逃げる俺に飛んできたのは水だった。
「やぁぁいひっかかったぁぁ」
うきゃうきゃ笑う青子。背後から白馬のクスクス笑う声も聞こえる。
水辺では紅子が口元を押さえている。
「くっっっっっっっあーーーおーーーこーーーーーー」
恥かかせやがって。グリグリ攻撃だぁぁぁ。
「痛い痛いってば快斗っっ。」
泣けっ叫べっかっかっかああああ。



side C
コトコト煮立ったカレーはとてつもなくいい匂いを発生し出した。
「腹減ったーーーー」
「ねぇまだあ?」
「もうちょっとですよ。待ちましょう。」
カレーをくるくるかき回しているのはつまみ食いなど絶対しないであろう灰原だ。
「あー腹減ったなー。やっぱ思ったより時間かかったよな。」
せいぜい一時間くらいで出来るだろうと思っていたカレーは予想以上に難航した。
火はなかなかつかないわ。材料を切るのに手をざくざく切るもの続出だわ。
カレーのルウをぶちまけるわ。沸騰したお湯でやけどしかけるわ。
まったく子供ときたらなにをしでかすかわからない。
ちなみにコナンの指は三カ所ほどバンドエイドが巻かれている。
げんたの次に多い数だ。
「カレーってこう・・もっと簡単に出来るイメージがあったのになぁ。」
自分の指をみつつ、愚痴をこぼすコナンに
「実際作ってみんとわからんじゃろ?」
ひげをさわりさわり楽しげに言う博士。
「いつも作ってくれる人に感謝を感じるひとときよね。」
灰原の言葉は的確だ。
確かにカレーですらこんなに大変だったのだ。いつも作っている蘭ってすげぇかもしんねぇ。コナンは少し感謝の心を感じる。

「さあ、出来たわよ。器だして。」
少しおこげの入ったごはんを器にもり、ひとりずつ皿を差し出す。
「俺っっ俺の肉いっっっぱいいれてくれよっ」
「歩美人参少ないのがいいー。」
「わーー美味しそうですねー。あっもう少しじゃがいも入れて下さい。」
思い思いに注文をつける子供達に灰原はめんどくさがらず入れてやる。
(お?今日の灰原はやる気だなぁ)
いつもなら勝手にいれなさいくらい言いそうなものだ。
「たまにはね。」
まるで俺の心を読んだようなタイミングで灰原は答えた。
「な・・」
「顔に書いてあるわよ。」
ふふ。別に大したことではないと言わんばかりの言葉に俺はうそだぁぁと
首を振った。
「大丈夫だよコナン君顔になんにも書いてないよ?」
歩美が首をかしげてコナンの顔を覗いた。
ちーがーうぅぅ(涙)
side K

「なーんか天気悪くなってきたぞ・・」
ジュージュー焼き肉を焼いている時のことだった。
さすがお金持ち白馬が買ってきただけあって肉はとてもうまかった。
っていうか一体いくらの肉買ってきたんだこいつ?
「そうですね。でもせっかくですから焼いた肉は食べてしまいましょう。」
雨を気にしつつ、そろそろお開きにするかなと四人で話し合っていたら
意外に白馬が庶民的な事を言った。
「おや?意外そうですね。食べ物を粗末にしてはいけないというのは常識ですよ。」
へえ。まともな考え方持ってるじゃねーか。てっきり捨ててしまいましょうとか言うような奴だと思ってたぜ。
「そうよねーこーんなにおいしいお肉あつあつのうちに食べないともったいないもんっ。」
もちろん捨てるなんて概念のない庶民派代表青子は言う。こいつ残った肉持って帰る気か?
さすがに一回冷えた肉はまずいと思うが・・。

「そろそろ車が戻ってくると思うんですが・・・。」
白馬が眉をよせ少し遠くを見つめる。車の気配は全くしなかった。一緒に食べればいいのに、
おじゃましてはいけませんので・・とさっそうと消えてしまったのだ。
「さっき携帯で呼んでおいたのですが、どうも道が混んでいるらしいですね。」
山道がかあ?
多分なにかあったんだろう。だがそれを言って不安がらせてはいけないと適当なことを言う白馬。
「どこか雨をしのげる場所はあるのかしら?」
紅子が尋ねる。今現在それが一番重要だろう。
「ええ・・・そうですね。少し歩きますがうちの別荘へ行きましょう。」
バーベキューセットを片づけ、男二人で分散して持つ。
さりげに結構重い。白馬はそれなりに体力をつけているらしく苦しい顔は見せなかった。
(俺怪盗業やってなかったらこんなん持てなかったかもなぁ。)
一般的男子はこの荷物を持ったらたぶん50Mと進まないうちにダウンするであろう。
「大丈夫快斗?」
やれやれ。と自分の体力に感謝しつつ快斗は荷物を持ち上げた。
「ああ。まあなんとかな。お前持ってみるか?」
「あーっといいよっほら女の子が持つ物じゃないしね。」
多分どれだけ重いか想像したのだろう青子に快斗は意地悪気に言ってみたが慌てて断られた。
「そうですよ。レディーファーストは男の義務です。」
二人に聞こえないように快斗にささやいてくる白馬。
(へーへー義務ですかい。)
まったくめんどくせーよなーその考え方ってさ。

大体10分くらい歩いただろうか大荷物の上、山道を上ったせいで軽い息切れをしている白馬。
「やっぱり結構ハードですね。これで山登りというのは・・」
はあはあ、と息を整えながら、隣を歩く快斗に話しかけた。幸いな事に
雨はまだ降っていない。これで降ってきたら山なんか登ってられないだろう。
「まあな。でも後少しだろ?」
まだ息切れすらしていない快斗に白馬はため息が出る。
(なんなんだこの底なしの体力は。怪盗っていうのはやはり体力勝負なのか?)
こうして並んでいると自分の体力のなさが目立って少し落ち込む白馬。
もちろん白馬は一般よりよっっっぽと体力がある。だが比べた相手が悪かったようだ。
「そうですね。あとちょっともう屋根は見えてきていますから。」
平坦な道ならあと20Mくらいなんて事ない。だがこの急な坂が白馬の歩みを遅くしていた。
「ああ、あれか。んじゃもう一踏ん張りっと。」
「元気ですねぇ。」
しみじみとつぶやかれ快斗は「んあ?」と振り返った。
「いえ。ちょっと自分との体力の差にショックを受けているだけです。」
いつもなら言わない愚痴をこぼす。疲れから気弱になってきているのかもしれない。
「体力の差・・・ねえ。」
本当は自分もいっぱいいっぱいの快斗。今だって息切れを見せないように頑張っていた。
怪盗はポーカーフェイスが命だからな。探偵さんに弱みなんかみせられっかっての。
肩をすくめそんな事が言えるはずもない快斗は何を言うこともなくまた前を見て歩きだした。
(でも・・・ここで変になぐさめられでもしたら自分が許せなかったかもしれませんね。)
何も言わなかった快斗に後で感謝をすることになるかもしれないなと思った白馬であった。

    

あとがき

遅くなりました。待っていて下さる方はいるのでしょうか(笑)
光のかけら4登場です。
今回はコナン組と快斗組か出てきます。
ちょっと好きな回かもしれません。

やっぱ白馬君はちょっと好きだなあ。
考え方が共感できるっていうか解りやすいというか。
書きやすいですねー。

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