光のかけら7
sideC

(げっ・・・・)
コナンは大層驚いた。
予想しない出来事・・というよりあって欲しくなかった出来事が目の前にあったからだろう。
驚くというよりうんざりかもしれない。
(なーんで。なぁぁんでぇぇぇこんな所にこんなもんがぁぁぁ。)
雨でぬかるんだ地面に膝をつき頭を抱えて取り乱したい気分だった。

川上へと約5分ほど歩いた時のことだった。川にそって歩いていたコナンはふと、本当っにふと右の木々へと目をやったのだった。
灰原はこちらから向かって川の向こう側にいると言っていたためずっとそっちにしか目を向けていなかったのだ。
だがそれがこんな事になるとは。

(なーんーでー普通なら見落とすはずのものを見つけちまうんだ俺は。)

心底自分の運を恨んでしまう。いや。事件にかかわるのは嫌いではない。
だがさっきまで博士に疑われ、灰原にからかわれたのだ。
さすがにさっきの今ではどう考えても「また」と言われてしまうのが落ちだろう。

発見したのは木々の隙間から見えた人の足。
近づいていくとどうやら男性(しかも結構年だ。)のようだった。
座り込んでいるらしく木に背中を預けてる風だ。
だが、コナンは見た瞬間解った。もう息絶えている。ということが。
目が見開いている事、ピクリとも動かない事、あとは・・そう探偵の感と言ったものかもしれない。

「はーいばらー。わりいけどちょっとこっちに降りてきてもらえねーか?
どうやらお前の言ってたとおりになっちまったみてーなんだ。」

悔しいが頼りになるのは彼女しかいない。それにここに人がいると言うことはもしかすると灰原と一緒にいる人と関わりがあるのかもしれない。

『あらあら。やっぱり。いいわよ。佐久間さん・・彼が足をけがしているから少し時間がかかるかもしれないわよ。』

「ああわかった。」

主語を抜いても通じる会話。楽だなあとコナンは思う。
それからすぐに博士達と連絡をとる。警察に連絡をしてもらうためだ。

(あーあ。またなんか言われるよな。)

やれやれと深いため息をつく博士の姿がありありと思い浮かぶ。
本当に今回ばかりは困った体質だ。

それから約30分。灰原はなかなかやってこなかった。
佐久間さんとやらが足をケガしているから仕方ないとしてもそんなにかかるだろうか?
辺りはどんどん暗くなってくる。雨で暗かったさっきまでとは違い、夜の暗さだ。ここらへんは野犬とかやっぱ出るよな・・きっと・・。
うーわー。まさか死体とふたりっきりで夜を過ごせってか?
はいばらーー早く来てくれよぉぉ。



そのころ灰原は。
とてもせっぱつまっていた。
どうやら追ってがきたらしい。痛む足を引きずりつつ、必至に逃げる佐久間の姿を見て、とてもほっておけないと思った灰原。

「駄目だよ哀ちゃん。君はお友達の所へ向かって。巻き込まれたら危ないから。」

優しく言い聞かせようとするが灰原が考えを変えるはずもなく、

「佐久間さん。その足で逃げ切れると思ってるの?大丈夫私の友達の所へ行けばきっとなんとかなるから。彼とっても頼りになるのよ。」

そんな簡単に行くはずもないが、それでも安心させるようにほほえむ灰原。
このまま見捨てていけば自分は自分が許せなくなる。そんな気がしていた。
たぶん佐久間の今の状況が自分と重なってしまうのも理由の一つだろう。


彼は言った。
「僕たちはお薬を作っていたんだ。そうだなー。よく効く風邪薬とかね。
でもね。最近知ってしまったんだ。それは本当はお薬なんかじゃないって。」

小学生に解るように砕いて内容を教えてくれた。だけど本当は教えたというよりうまく誘導して聞き出したと言ったほうが正解だ。

「それはね。とっても身体に悪い薬なんだ。」

さすがに子供相手に毒薬とかは言えなかったのだろう。
そういうことだ。

知らない間に毒を作らされていた。しかもそれを活用されていて今でもきっとどこかでその毒の被害に遭っている人たちがいるのだろう。
灰原が自分と重ねてしまっても仕方がない事かもしれない。
そして佐久間はその毒に関するデータと販売ルート等を示した書類などをごっそり盗んできたのだ。社長室に忍び込んで。
そりゃ向こうも必至だろう。これが公にされたらまず逮捕間違いなしなのだから。
多分殺してでも書類を奪い返してこいと命令されているはずだ。

そしてもう一つ理由がある。佐久間の足だ。
足をくじいたのは灰原を助けるためだったのだ。
無理な体勢で無理な力で灰原を引き上げたため足を痛めてしまったらしい。
これはもう見捨てていったら人でなしじゃないだろうか?
それこそコナンのあのまっすぐな瞳を見る事すらできないだろう。

よって灰原は川辺のルートをはずれ木々に入って下へと下っていた。途中で川を渡っておいたから降りればきっとコナンに逢えるはずだった。



日暮れが近づきそして佐久間の足にも限界がきた。


「もうここらへんにしておかないとあなたの足もたないわよ。江戸川君になら連絡をいれれば
すむことだからどこか隠れる場所を探しましょ。」
「大丈夫だから。もう少し歩こう。あっちに丁度いい洞窟があるんだ」

そして冒頭に戻る。
「ここなら隠れられそうね。」
洞窟はとっても広かった。
とりあえず見つかったら危険な佐久間を奥に隠し自分は手前で佐久間を隠すように座る。

「ねえ佐久間さん。もう一つ聞いてもいいかしら?」
「ん?なんだい?」

さんざんいろんな話を聞き出したがまだ一番気になっていたことを聞いていなかったのだ。

「なんで、私を助けてくれたの?」
「?普通子供が川でおぼれてたら助けないかな?」

不思議そうに尋ねられ哀は首をふった。

「いえそう言う事じゃなくて、佐久間さんとっても急いでたでしょ?助けてる暇なんてないくらいに。」
「・・・・そうだね。」
「だから不思議でたまらなかったの。」

まっすぐ瞳をみつめられ佐久間はやれやれと肩の力をぬいて壁に背をもたれかけた。

「そうだな・・一番の理由は―――」
思い出すかのように遠い目をする佐久間。

「親友の娘さんと同じくらいの歳だったから・・かな?」
「親友の?」
「そう。僕の妻が他界してから休日のたびにそいつの家におじゃましてたんだ。そいつ・・伊瀬っていうんだけどね。伊瀬の娘さん光ちゃん・・そうだな今はもう5歳くらいかな?その子がとっても僕に懐いてくれてね、凄く可愛がっていたんだ。」

懐かしそうにしゃべりだす佐久間。
哀は少しでも足の痛みを忘れてもらおうと話を振ったのだがどうやらとても成功らしい。
「君を川で見つけた時ね、なんでかな光ちゃんが流されてるって思ったんだ。早く助けなきゃって。そんな筈ないのにね。」

自分のその時の感情に苦笑しつつ佐久間は哀にほほえんだ。
「あっでも光ちゃんだと思わなくてももちろん助けたよ。子供が流されてるのを見逃すほど僕は人間捨ててないつもりだからね。」

ニッと明るく笑いかけられ哀は小さく笑い返した。
あの川の流れでは助けてもらえなくても仕方ないのだ。でもこの人なら見捨てないで追いかけてでも助けてくれるんじゃないか。そう思った。

「ありがとう。佐久間さん。」
「やだなあお礼はもう一杯言ってもらったから十分だよ。それより哀ちゃんお友達には連絡しなくていいの?」
「あっそうだったわ。」


洞穴から這い出るとバッチをポケットから取り出す。これが無事でなかったら自分はどうしようもない事態に陥っていただろう。
感慨深げにバッチを見つめていると空から声が聞こえた。
「おじょうさん。」
「え?」

あとがき。

やっと冒頭まできました。
ちょいこじつけくさい気がする方。
気のせいではありません(笑)

プロローグっていうのをやってみたかったのですが、
失敗ですねー。最初につなげる前に話が少しづつずれていって
どうしようかと思いましたよ。
とりあえず洞窟だせばいっかと・・すみません・・(涙)

でもこれで肩の荷はおりましたー。
ホッと一息・・・。

さて話の内容からして次回はどうやらあの人が登場っって気配がしませんか?
ふふ楽しみにまっていて下さい。
個人的に次回の話は超好きなのです(自分で言ってどうする(笑))

応援メール&カキコお待ちしてます。
書けば書くほどスピードがあがる・・・かもかもかも(笑)

2001.9.22