手を伸ばせば…  

「ふ〜ん…」

太一は、意味深にタケルを見る。

タケルは太一に笑顔で応えた。

「そっか、そっか。 仲良くなったんだな、ケンカばっかしてるから心配だったけど、そうだよな〜、俺達もケンカして仲良くなったんだよなぁ〜」

と、昔を懐かしむように言った。

「あ! 悪い、俺、急いでたんだ。やべぇ〜また、ヤマトに叱られるよ」

と、慌てて腕時計を見て、太一は大輔たちに《じゃぁな》と、告げるとその場から 走り去って行った。

「相変わらずだね、太一さん…」

「あぁ…」

何となく気まずいまま二人は、タケルの家に向かった。

部屋に入ると、母親は仕事で居ないらしく二人の足音だけが響いた。

「大輔くん、紅茶でいい?」

「あぁ…」

リビングに通され、ランドセルをその辺に無造作に置き、座る。

大輔は何回か来ているのだが、未だにタケルの家は落ち着かない。

近くにあったクッションを胸に抱き、辺りをキョロキョロする。

自分の家と違って静かなのもそうなのだが、生活感があまり感じられないのだ。

母親と二人といっても、ほとんどタケルひとりと言っていいだろう。

淋しくねぇのかな? 

オレだったら耐えられないかも…。

ぺたぺたと、足音がして見上げるとタケルが2つのマグカップを手に戻って来た。

「はい、大輔くん。 熱いから気をつけてね」

「あぁ…」

差し出されたカップを手に取ると、何だか安心した。

温かい…。

「ねぇ、ケーキどれがいい?」

と、箱を大輔の目の前に差し出す。

「どれでもいいのか?」

「うん」

大輔は嬉しそうに、箱の中を覗く。

幾つかあった中から大輔は選びに選び抜き、一つ選んだ。

「あ、オレ、このイチゴのがいい!!」

「ショートケーキだね」

と、タケルは持ってきていたお皿に載せ、大輔に渡す。

早速と、大輔はケーキを食べ始める。

それに続いてタケルも食べ始めた。

もしも、自分が居なかったらコノ箱のケーキはタケルが一人で食べる事に なっていたんだろうか。

一人で食べる…淋しいよな…。

そんな事を考えながらタケルを見ていたら、目が合った。

「なに? 大輔くん?」

「え、あ…なんでもないよ…」

と、大輔はタケルから目を反らす。

大輔はとりあえず、お皿の上のケーキを食べる事だけに専念する事にした。

「ふぃ〜・・うまかった、苦し〜…サンキュ〜な」

と、大輔はお腹を摩りながら言う。

「2個も食べれば、お腹一杯になるよね…」

タケルは呆れながら、空のお皿を台所に運ぶ。

大輔はクッションを抱え、寝転がりながら、台所から戻って来たタケルに 声をかける。

「なぁ〜、タケル」

「なぁに?」

と、横になっている大輔の隣に腰を下す。

「あのさ〜、いつも一人で淋しくないのか?」

「別にぃ、今、始まった事じゃないからね」

そっか…と、大輔は黙り込んでしまった。

「大輔くん?」 タケルは、クッションに顔を埋めたまま黙っている大輔に声をかけた。

イキナリ大輔はガバッと起き上がり、クッションを放り投げ、 向かい合わせに座り、タケルの肩に手を置いた。

「た、タケル」

「な、何?」

タケルは大輔の突然の行動に驚きを隠せなかった。

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