始まりの気持ち4
「光ちゃんっ。もぉっなかなか来ないから心配したじゃないっ。」
「京さん。」
腰に手を当ててチッチッチと人差し指を顔の前で降る京に光はこわばっていた表情を少しゆるめた。
以前あの暗黒の海から助け出されて以来京への信頼感はとても増していた。
彼女がいれば大丈夫。
きっと暗い所へいっても引き戻してくれるから。
人と一線ひいてせっする光にしてはあの事件からこっち京に対してかなりの甘えっぷりを見せていた。
自分の内側にいれた人間に関しては光はとても自分というものをさらけだせる。
今その中にいるのは多分家族と兄の親友のヤマト、いろんな面で自分とそっくりなタケル、それに京・・それだけだと思う。
一緒に旅した仲間でさえ、その場所は譲れないのだ。
あの件がなければ京とだってずっと仲良くはなれなかったかもしれない。
彼女の明るさにあの時救われた。
ずっとこういうタイプは苦手だと光自身思っていたからとても意外だったが。
「ごめんなさい。」
「訳は大輔に聞いたわ。あの二匹が迷子ですって?まったくパートナーににて困った子たちよねー。」
あはは。と手を振ってわらう京に足下を歩いていたテイルモンはそっと笑みをつくる。
(京は光に元気をくれる。
どんな暗い時でも。
私には出来ないこと。でも光が元気になれるなら嬉しい。)
「でもチビモンならともかくトコモンまでっていうのがちょっと気になって。」
「そうなのよね。チビモンならともかくあのしっかり者のトコモンだもんね。あと探してないのってどこなの?」
やはり大輔&チビモンコンビは誰から見てもお子様コンビらしく、守ってあげなきゃいけない小さな子・・といったイメージが強いらしい。
対してタケルとトコモンはとくに京にとっては先輩でもあるせいかやはりしっかりしてるお兄さん的存在で特に笑顔をくずさないタケルは穏やかで大人のイメージが出来上がっている。
「それに何か胸騒ぎみたいな感じがして。」
なにかしら?嫌な予感とは違う気がするんだけど。
悪いことが起こるならもっとどうしようもない悪寒みたいなものがする。
何かがあるのは解るけどなにかしら?
解らないから気になる。
お兄ちゃん達に相談するほどの大事なのかしら?
光は首をかしげ自分の気持ちをつかもうとするのだった。
その日結局二匹はみつからなかった。
その晩は大輔とタケル、それに光にとって眠れない夜となった。
「それで?」
「用務員さんが来てもう学校の鍵をしめるから外へ出なさいって言われて追い出されちゃったの。」
怖い表情の太一と反対に眉を垂れた光。
ここは光の部屋。
家に帰ったそうそう帰りが遅いと両親と兄にしかられ先生に手伝わされたとごまかした光。
それは相変わらず小学生に出来ないほどの完璧な演技力だった。
だが、兄は光の瞳に一瞬だけよぎった不安を見抜き問いつめたのだ。
なにかあったんだな?・・と。
ベッドに腰掛けた光と絨毯にあぐらをかく太一。
どちらもうかない顔をしている。
「タケル君も大輔君もこうなったら学校に忍び込むしかないっっとか言ってたから私と京さんで無理矢理連れ帰ったの。」
「まあそれが妥当だろうな。」
タケルにしては冷静さを欠いた判断だ。
だが、もし自分が同じ立場なら同じ風に忍び込んででも探そうとしただろう太一は思う。
どこにも見つからなかったけど、あそこにいるのなら彼らはあの校舎から一歩も出ないという約束を守ってただひたすら暗くて寂しいあの中で泣きながら自分達を探すのだ。
そんな事を考えたら胸がギュッと痛くなる。
きっと今頃あの二人はじぶんを呼ぶパートナーの幻聴を聞き鬱々としているのだろう。
いつも遅刻ギリギリの大輔ですらきっと学校があくまえからやってくるに違いない。
「大丈夫だ光。きっとあいつらは校舎の中にいるよ。ただ見つかりにくい場所にいたんだろ?いまごろ穴場見つけてグースカいびきかいてるかもしんねーぜ?あいつらちっこいからなー。」
ポンポンとなだめるように光の頭に手をおき太一は優しく語りかけるように言葉を告げた。
「お兄ちゃん?」
二人の会話を聞きつつも寝たフリをしていてくれるテイルモンをよいしょっと布団から引きずりだし太一は両手をひっつかみぶらっと持ち上げた。
「こいつちょっと借りるぜ?」
「え?あっやだっ乱暴にしないでよっ。」
「こんくらい愛情表現だっ。」
「テイルモンは女の子なんだからっっ。」
んもーー。
光の声を背後にパタンと戸を閉めると大人しくしているテイルモンとともに自分の部屋へと入った。
ゆっくり自分のベッドにテイルモンをおろした太一は開口一番に聞いた。
「トコモンとチビモンは学校内にいるのか?」
「いない。」
そしてテイルモンも簡潔に答える。
今ここにいるのは二人だけだから。心配で眠れそうにない光には聞かせたくない。
それはきっと目の前の相手も同じ。
「そうか。それあいつらには言ってないんだよな?」
「言ったら光が悲しむ。」
光第一優先のテイルモンらしい言葉に太一は苦笑する。
「どこにいるか解るか?」
「解らない。」
「そっか。」
打つ手なし。とりあえず光子郎あたりに連絡しておくか?
だが光も言ったが太一自身も悪い予感はしない・・・大事にして後で文句いわれるのもあれだよな?
まあ自分の予感が当たるとは思えないが光の予感はかなりの確率のため信用がある。
だが現に二匹のデジモンが消えている。
どう考えても嫌な予感しかしないはずなのだがこう・・焦りとかどうしようもない歯がゆさとかは湧いてこないのだ。
それともまだ実感がわかないだけか?
ま、いっか明日になっても見つからなかったら大事にでもなんにでもしてやる。
その後に愚痴愚痴文句言われたって耐えてやるさ。
明日には見つかってくれよ。
「おはよう」
「ん・・おっす。」
門が開く前から来てしまい肌寒い空気の中二人は仕方なしに門の外で待ちぼうけする事になった。
どちらの顔もひどかった。
くまはできてないものの、なんというか覇気がない。
ただでさえ元気が有り余ったあげく暴走している感じの大輔がこんな表情をするとなにやら痛ましい感じをうける。
「眠れなかったみたいだね。」
「それはお前もだろ。」
今一番気持ちが解るのはお互いだろう。
「寝ようとしてもチビモンの声が聞こえるんだよな。『だいしゅけーっ』て。寝れるわけねーよ。」
唇をギュっとかみしめうつむく大輔は声が震えているせいもありまるで泣いているかのようだった。
「僕もだよ。トコモンの声は聞こえるし・・・ずっとどうしよう・・って考えてた。トコモンがいなくなったら僕が僕でいられるのか・・・。」
歯と歯がカチカチと音を立てるのが聞こえ大輔は目を見張った。震えているのか。タケルが?
どんな時でもタケルはなにか打開策を見つける。
もう駄目だ・・と思ってもなんとか一生懸命考えてただ嘆いているだけの俺を叱りとばしてくれる。
そうだよなタケルも怖いんだ。
同じだよな。
顔を上げて目を会わせた。
「大輔君・・・」
「タケル・・・」
お互いの泣き出しそうな顔を見て心が通じる。
今気持ちは同じなのだから。
「見つかる・・よな?」
「・・・・・うん・・きっと。」
自信ない問答。その時ようやく用務員がやってきて門の鍵をガチャと開ける。
それは昨日もう遅いからと鍵をしめた用務員さんだった。
「おや?昨日の?捜し物のために早くきたのかい?そんなに大切なものなんだね。」
まさかこんなに早くに人がいるとは思わなかったのだろうその人はよいしょっと重い門をがらがらと引きながら二人に笑いかけた。
「「はい」」
それだけは自信がある。
とっても大切なもの。
早く探してやらなきゃ。きっと泣いてるから。
「頑張って探しておいで。」
「ありがとっ用務員さんっ。」
応援してくれた用務員さんにブンッと手をふると二人は勢いよく走り出した。
「みつからない・・みつからないよっっ。」
門が開いてから2時間二人は校内の端から端までしらみつぶしに探した。
ロッカーの中も段ボールの中も、ゴミ箱の中ですら探した。
今はもう7時部活にやってくる生徒達がちらほらと教室の窓から見えた。
とりあえずコンピューター室に来ていた二人はイスに座る元気もなく冷たい地べたに座り込んでいた。
「なんで・・どこにもいないんだよ。」
最初のタケルの悲痛の叫びに対して大輔はボソリとつぶやく。
もう力が沸かなかった。
体育座りした両足を手で抱え込みそこに頭をうめこむ。落ち込んでます雰囲気がただよう大輔。
タケルは窓に手をかけボーっと登校してくる生徒をながめているようだったがその瞳はきっとなにも映していないのだろう。
これ以上どこを探せばいいんだ?そのくらい全て探した。
だからこそわずかにあった希望の灯火が消えてしまったのかもしれない。
もしかするとあそこに隠れていたのかもっっ。
昨日の夜はそんな事を考えてきっと探し損ねていたあの場所に・・・とか思っていた。
それが今はもう―――――
「大輔君。」
ギュッとしがみついてくるタケルを押しのける事はできなかった。
今は自分もそうしたかったから。
「・・・タケル。」
だれかにすがりついていないと自分の立つ場所すら解らなくなりそうなそんな不安。
タケルの首に両手を回して抱きつく。
体温が心地よい。
昨日からずっと探して疲労は溜まっているのに睡眠もとれず、今もついさっきまで必至で駆け回っていた。
多分体力的より精神的に痛手をうけているせいか消耗がはげしい。
背中にあったタケルの手がそっと大輔の身体をなでる。
慈しむように。
「タケル?」
「ごめん・・こんな時じゃないのに・・・。」
「え?あっなっっ・」
ぐっと座っていた体勢から背中を引っ張られ仰向けに転がされてしまった大輔は呆然と上にのしかかるタケルを見つめた。
昨日の続き?
そんな雰囲気が漂うパソコンルーム。
「ごめんね。」
「だから何がごめん――――――――――」
目をあけたままの大輔は多分なにが起こっているのか解らなかったと思う。
タケルの顔が近づいていた。
その少し生気を失った青く印象的な瞳に見とれているうちになにやら唇に温かいものを感じ、驚いて押しのけようとした手をぐっと頭上でぬいとめられた。
「タっ・・――――――――――んんっっ。」
首をふって息を吸おうとするとそれを追いかけてタケルの顔がせまってくる。
「目・・つむって」
何がなんだか解らないうちに言われた通り目を閉じていた。
そのうち深く深く口づけられ歯と歯の間になにかぬるぬるするものが潜り込んできた。
なんだこれは?
それは大輔の口内を縦横無尽に動き、舌をからめとり歯の後を舐めてくる。
こくっと喉が上下する。
唾液が口の中に溢れどうしようもなくて飲み込んでしまったのだ。
まずい・・のか?なんかわからない。
飲み込めなかった二人分の唾液が唇の端から溢れツッと顎へとすべりおちる。
頭の中が真っ白になり真っ赤になり身体から力が抜けていく、抵抗しようと拘束された両手に力を入れてみるがまったく力が入らなかった。
なんだろう背中がむずむずするような・・・。
「ん・・んんっ」
この鼻にかかった声はどこから来てるんだ?俺か?俺の声なのか?
「は・・ああ。」
あまりの息苦しさに眉をよせるとようやくタケルが離れてくれた。
荒い息をくり返し、大輔がそっと目をあけるとタケルの舌と大輔のそれが白い糸のようなもので繋がっていた。
まるでなごりおしむかのように。
っかぁぁぁなっなっあのぬめぬめしたのは舌だったのかぁぁ。
まるでリトマス紙のごとく真っ赤にそまる大輔の頬にそっと口づけるとタケルは困ったような笑みでもう一度つぶやいた。
「ごめんね。」
「あ・・あや・・・謝るくらいなら手・・離せっっ。」
頭上で押さえつけられたままの両手はそのままだった。同じ男として悲しいがどうやら力の差は歴然としている。
「ん・・・。」
怒鳴る大輔もなんのそのタケルは少し微笑むと唇から溢れ出していた唾液をそっと舌ですくった。
くすぐったいっっ。
眉をよせて睨み付ける。
謝ってるけどなんに対して謝ってるのか全然解らない。
こんな事したことを謝ってるならいますぐ手ぇ離してさっさと上からどいて欲しい。
「あのね。僕はずっとこうしたかったんだよ大輔君。」
はぁ?
なんだよそれ。疲れてっからイライラして俺に八つ当たりでもしてたんじゃねーのか?
何故八つ当たりがこんな形なのかも問題だが。
だけどタケルだし、自分じゃ考えもつかないようなことを考えてそうだからこんな八つ当たりもありなのかなぁとか思っていた。
「解らない?」
「さっぱりな。」
ハアっっと大きなため息をつく、まるで出来の悪い生徒を見るようなタケルの態度に大輔はぶち切れそうだった。
だいたい今文句をつけていいのは俺の方だっっ。
てめーは俺にひたすら謝り続けとくべきなんじゃねーのかっ!!!?
「じゃあ言うよ?とてつもなぁぁぁく鈍い君にも解るほどきっぱりさっぱりとね。」
けんか売ってるんだよなこれ?
絶対そうだよな?
今ここで殴り合いのけんかしたらすっきりするかな?
寝不足のこの頭もクリアーになるかもしんねーよな?
あまりに失礼なタケルの言葉に大輔もさすがにキックをくれようかと悩む。
だいたいさっきこの黄金の足で蹴りをいれればなんとかこいつを撃退できた(かもしれない)んだ。
なんで思いつかなかったんだっっ俺のアホッバカっっドジっっ。
「僕は大輔君が好きなんだ。」
あーそーですかーーへーー好きだとこーゆーーことすんだーーへぇぇぇ。
全然信じていない大輔の瞳をうけタケルもまずったかな?とちょっぴり考える。
こういうことは言ってから行動を起こすべきなのだ。
なのに疲れと寝不足のせいで理性が動かず衝動的に大輔に手を出してしまった。
「ただの好きじゃないよ?」
んじゃおいくらよ?
つっこみたいけどムカツクから返事もしたくないらしい大輔の態度に心底タケルは落ち込む。
あー僕のバカっっ。3分前の僕をなぐりつけたいっっ。
「ラブだよ愛。って信じてないね?困ったな・・。どうすれば信じてくれるの?」
ラブ・・愛ぃぃぃ?
あまりに壮大すぎて大輔の頭はお笑いムードだ。
根っからのお笑い体質の為かそーゆーこっぱずかしい言葉を聞くと自然笑ってしまう。
だがその後の言葉が怖かった。
「あっそれじゃあさ。これ以上やればさすがに大輔君も信じないわけにはいかないよね?」
両手がつかえたらきっとポンと手を打っていたのだろうタケルの様子に大輔は青ざめた。
冗談じゃないっこれ以上ってなんだよっっ。
っていうか絶対こいつの事だから冗談じゃねーよな?
待てっ待ちやがれっ。
「わかった信じるっっだから離せっっどけっっ頼むから俺から離れてくれっっ。」
泣き叫ぶような大輔の言葉に楽しそうにクスクス笑いタケルは言った。
「やだなぁ本当にやると思ったの?こんな所ではやらないよ。」
こんな所じゃなかったらやるのか?やるって何を?
とにかく恐ろしかった。目の前の男が。
頼むっっ一生のお願いだから手を離してくれっっ。
「んーんじゃ返事?」
「は?」
「は?じゃないよ。へ・ん・じ」
なんの返事?ちょっと待てその前に手を離してくれればいーじゃねーか。
てめぇの馬鹿力のせいで俺の手は今窒息(手に窒息はないだろうが)寸前なんだぞっっ。
「やだなー。僕さっき告白したんだけど?解ってなかった?」
「いや・・なんとなくは・・」
解っていたから無視したかったんだけどな。
目線を会わせたくなくてそっと明後日の方をむく大輔にタケルはニッコリ微笑みかけると時計を見上げて言った。
「あ、まだ30分以上あるねそれなら大丈夫。」
何が大丈夫なのか聞きたかったけど聞けなかった。
きっと聞いたら後悔する・・そう思ったから。
「悪いけどお前の事は友達としか考えてないから―――――」
「さっきの気持ちよかった?」
断りの文句は即座に遮られた。
「・・・・・。」
「気持ち悪くはなかったよね?すっごく感じてたもん。」
言うな・・言わないでくれ。
俺の一生の不覚。
何で男にキスされて(しかもファーストキス。絶対好きな子としようと思ってたのに。)気持ちよかったんだよ俺っっっ。
バレてる以上嘘つくこともできず(もともと出来ない)大輔はそっぽを向く。
見る見る火照っていく頬を見下ろしタケルは脈有り・・・とほくそ笑んでいた。
「大輔君ちょっと考えてみて。僕以外の男の人とキスしたとしたらどうかな?」
「しない。」
「いや・・だから想像だよ。気持ちよくなると思う?例えば大輔君がとっても尊敬する太一さんとか?」
考えるのも失礼な話だが考えて見た。
・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・。
「気持ち悪いよね?」
どうやら大輔の青ざめた顔を見て察知したらしいタケルは明るい口調で問うた。
なんで・・・・?
男の中で多分一番大好きな人、太一先輩相手ですら気持ちわる・・と思ったのにタケルだとあんなに・・その・・かんじた・っていうのか?なんだろうな。
「それはね僕を好きだからだよ。」
まるで心の質問に答えるかのごとくのタイミングだった。
好き?そうなのか?俺タケルの事・・・。
なにやらどんどん流されているような気がしないでもない。
だけど実際体験してみて気持ち悪くなかったのだから説得力がある気もする。
大輔が思考の波にさらわれたのに気づいたタケルはものすごい力で押さえていた大輔の両手をそっと解放した。
たぶんもう抵抗しないだろうから。
一番怖かったのは逃げられること。
軽蔑の瞳でお前なんか絶交だっっと背中を向けられること。
その危険性は去ったのだと思う。
殴られるくらい全然平気だ。
ののしられるのも、ただ無視されるのはつらい。
大好きだから。
この瞳がもう自分を映してくれないかもなんて思うだけで涙が出そうになるから。
「考える時間はあげる。
でも僕もあんまり気長なほうじゃないからあまりにも遅いと理性が焼け切れて暴走しちゃうかもしれないよ?」
暴走したタケルというのはどんなものだろうか?想像つかないだけになにやら恐ろしい。
きっとあのヤマトですら怯えるのだろう。
「なあタケル・・今さ、俺チビモン達の事考えてたいんだけど・・・。」
「うん。解ってる。僕もトコモンの事はずっと考えてる。でも大輔君の事も同じくらい考えてるんだ。ずっとずっと。」
でも口に出したら少しすっきりしたよ。
晴れやかな表情を見せたタケルに大輔はぶすくれる。
あーそーですかー。てめぇがすっきりした分こっちがモヤモヤしてきたよっっ。
ちくしょーまさか友達っつーかライバルみてーな奴にこんな風に思われてたなんてショックもいーとこだぜ。
んじゃなにか?最初っからこいつは光ちゃんを狙っていねーって事で光ちゃんを挟んで恋のライバルっっっとか言ってたのは俺の独り相撲って事か?っかぁぁ恥ずかしいっ。
あれ?ちょっと待てよ?俺って光ちゃんが好きなんだよな?
んじゃタケルの事は好きじゃない?
んーーーー?
えーーー?
あ?
目をつむりいつの間にか解放されていた腕を無意識にくんで首をかしげる。
百面相をする大輔をタケルはそばで頬杖をつきながらドキドキと見守っていた。
やるだけのことはやった。
後は大輔の中で自分という存在がどんな位置をぶんどれるかって所なのだ。
もう待つしかない。
でも待つのは結構嫌いじゃないんだ。
大輔君とちがって僕は参謀役だからね。
賽は投げた後は転がるだけ・・だ。
青い瞳は大輔だけを見つめる。
沢山悩んでいるのだろう「あー」とか「うー」とかうなりながら真っ赤になり真っ青になり頭を抱えたり手をあわあわ動かしたりぼーっと遠くを見つめたり。
いろんな表情をみせる大輔はとっても魅力的だった。
こんなにコロコロ変わる表情がみれるのはもしかするとこの先もうないかもしれない。
それに、こうしている間だけはトコモン達の心配が少しだけ薄れるから。
心配して探し回ってもうどうしようもない今はただ待つしかできない。
いつもなら待つと言う行為は嫌いじゃないけどこのことに関しては別だった。
それならこうして少しでも自分の精神を回復しておかなきゃね。
何があっても対応できるように。
「好きだよ。」
「解ってるっ。うるせーから少しだまってろっっ。」
恥ずかしいのだろう真っ赤になって背中を向けた大輔にタケルはかわいいなぁと微笑ましく思う。
だが予鈴までもう10分を切ってしまったのだ。
あんまりのんびりもしてられない。
あと10分で答えが出るか?
きっと出ないだろう。
それなら。
「今日の放課後までに考えておいて。」
「・・・わかった。」
これで大輔君の頭には僕の事しかないよね?チビモンのこともちらちらするだろうけどそれはきっと半分もし占めないはず。
一応これでも優しさのつもりなんだけどきっと大輔くんには伝わらないか。
多分チビモンの事を考えて消費する精神的苦痛より僕の事での精神的ストレスのほうが消耗は少ないとふんでいる。
それなら僕の事ばかり考えて帰りまでに体力を少しでも復活させて欲しい。
ああ。でももちろん僕の事考えてくれるっていうのも嬉しいけどね。
けど僕もきっと帰りまでドキドキするんだろうな。
大輔君がどんな結果を出すのか目が離せない気がする。
彼の行動で一喜一憂する自分が情けないと思う反面こんな自分が好きだったりする。
だって好きな人の前でドキドキしない人なんていないよね?
バカな事している自分を見て、ああこんなに僕は大輔君が好きなんだ・・って思うんだ。
生きる喜びだよね。
初めてなんだ・・こんな風に思ったの。
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