始まりの気持ち6


もちろん単なる偶然だったのかも・・と思っていたのだが、その後京からの電話でその考えは払拭された。





『ごめんねーあのバカ突然さそっちゃって。無理矢理じゃなかった?』
あははーとおばさんのように手を振っているだろう京が簡単に想像でき光はクスクス笑う。
「そんな事ないよ?すっきりしちゃった。」
『そう?ならよかった。あいつが光ちゃんなんか元気ないみたいだから皆で遊ぼうっとか昨日突然に言い出してさー絶対あいつ光ちゃんと遊びたかっただけよ?』


「え?」
『そんでね本当なら伊織もタケル君も呼んだんだけど二人とも突然だから用事があってこれなかったのよ残念ねー』


大輔は言ったのだ。
京がどうしても卓球したいとか言いだしたから光ちゃんも一緒に行こうっと。
意外だった。
こんな風に人に気を使わせないように行動できる人だったなんて。


「その元気ないってタケル君たちにも言ったのかな?」

『言ってないでしょ?私も本当は用事があったから内容によっては遊んであげるーとか言ったらそう吐いたから。ま、大した用事じゃなかったけどー。』




だから気にしないでねー。
そういう京のあけすけさは自分にはまねできないけど竹を割るようでスカッとする。


「そうだったんだ。でもなんで二人で遊ぼうと思わなかったのかな?」
『えー光ちゃん大輔と二人で遊んで落ち着くー?絶対ストッパーいるよ?』
「あはは。やだっ京さんったら。でも確かに大輔君なら一人で突っ走りそう。」
『でっしょー。ま、あいつなりに無い知恵働かせたんだろうけどね。このことはあいつには内緒ね?言ったのばれたら怒るからさ』


声をひそめたように京はいう。きっと口止めされていたのだろう。光としては教えてもらえてよかったと思う。

大輔の良いところが一つ見えたのだから。


『あっあとね、私が誰にでもペラペラ喋ってるって思っちゃだめよ。今回は特別っ。今日の大輔えらかったからご褒美のつもりっ。』

そういえば今日の大輔君はあんまり「光ちゃ〜ん」と言った感じがしなかった。場を盛り上げる事に集中していたみたいで、光自身もただ楽しく過ごせたのだから。

「そっか。あれも心遣いだったんだ。全然気付かなかった。」

この自分が気付かなかったってどういうことだろう?あの難解なタケルの事ですら読める自分が単純明快な大輔の気遣いに気付かなかったのは驚きだ。


光は大輔という人物の見直しを見当していた。
タダのバカじゃないみたいね。←ひどい


『ま、大輔のことちょっとは見直したでしょ?あいつバカだけど頭悪くはないよ?それだけは解っててほしかったの。』
「うん。ありがと京さん。」


その後すぐ切るかと思えばいつもの雑談が始まり母に怒られるまで喋り倒していた事は光と京だけの秘密だ。







「意外でしょ?」
「うん。そっかやっぱり格好いいな大輔君は。」
自分なら光が落ち込んでるのに気づいても見ない振りをするか、とりあえず話を聞くかしかできない。
遊びにさそってスカッとさせるなんて大輔君らしい発想だなとタケルは笑う。

「かわいいし?」
「もちろん。」
「あーやだやだ惚気られちゃった。ま、ちゃんとトコモン達の事を忘れてないならいいわ。」
頑張ってねっ。
励ましの意味もかねてポンッと強く肩を叩いてやると光は大輔へと向かっていった。





あー視線が痛かったわ。
タケルファンの女子達と大輔の瞳。
目をあわせてニッコリ微笑むと大輔は奇妙な顔をした。
どんな顔をしていいのかわからなかったのだろう。
前なら真っ赤になったのにね。

ちょっと寂しいわ。


「ね、大輔君昨日の事ねさっきタケル君にも言ったけどお兄ちゃんに話しちゃったのごめんね。」
開口一番に謝る。

相手の気をそらすには先手必勝だ。

「え?太一先輩に?それはいいけど何か言ってた?」
「うーんとりあえず今日は様子みて、今日中に見つからなかったら光子郎さんに聞いてみるって。」
「・・・うん。泉先輩ならなにかわかるかも・・。」

さっきまでの元気もなんのその「朝は死んでた」タケルの言葉を裏付けるような顔色の悪さを見せる大輔。


なるほどねタケル君。こんな顔見てるくらいならさっきの「うがーーっ」とうなりながら悩んでる大輔君のほうがよっぽどいいわよね。



「ごめんね力になれなくて。」
「そっそんな。光ちゃん昨日夜遅くまで探してくれたじゃんっ。それに忍び込もうとした俺達止めてくれたし。」
恥ずかしそうに大輔は笑う。

ちょっと昨日は頭に血が上りすぎてたからあそこで止めてもらえなかったらたぶんものすごい大事になってたと思う。
なにせ二人とも窓ガラスを割る気でいたのだから。

「大変だったよな?」
ごめん、それとありがとう。
はにかむ大輔はそりゃもうかわいかった。


やータケル君にあげるのもったいなくなってきたわ。
あんな暗黒の化身のような奴にやったら大輔君どうなるやら。
せっかくここまで透明に育ってくれたのにタケル君のブラックがうつってしまったら大変。



「ううん。京さんもいたし。ねえ。休み時間は探さなくていいの?」
「え?あっっそうだよな?」
たぶんタケルの事で頭がパンクしててそこまで気が回らなかったようだ。


「朝も二時間くらい探してさ、なんかもう・・探すところなくて・・。」
「大丈夫。見つかるわ。だって嫌な予感はしないもの。」
「ありがと。」
光の綺麗な笑みにも赤くならず一緒に笑う大輔。
これっていいかも・・と光は思う。
気を使わなくていい相手第三弾(二弾は京一弾はタケル)の予感だわっっ。




なーんだやっぱりこの二人くっつけよっと。
ますます応援する気が増す光であった。








放課後。
大輔とタケルの運命が決まるか・・と思われたその時とんでもないことが発覚した。

「光ちゃん。タケル・・・伊織からメールが・・・」
真っ暗な表情と覇気のない声音にさすがにタケルも返事は?なんて聞けずただ続きの言葉を待つのみだった。
見せられたメールは二人の度肝をぬく言葉だった

『ウパモンが昨夜から行方不明なんです。すみませんがそちらに伺ってませんか?』

「「「・・・・」」」
三人の顔が青ざめていた。
何か起きているのだろうか?
それとも偶然?





Back   Next     小説部屋

2002.1.8